いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

書斎に困る!<4>(新築編)<注文住宅は蔵書数の多い書斎が苦手かもしれない>

書斎に困る!<3>(新築編)の続きです。

 

ハウスメーカーの営業さんと話していると、「夢の書斎」みたいなことを言ってくることが多々あった。しかし、彼らから勧められる書斎は、僕が望むような書斎ではなかった。僕が望んでいるのは、もはや「書庫」とでも呼ぶべきものであって、そんな仕事の書類とか、画集とかがオシャレに収納できる書斎などではなく、ぎっちりと、古本屋さんの棚のような本そして本みたいな本棚に囲まれた書斎、いや、書庫だった。キッチンの収納にはこだわるハウスメーカーさんも、書斎の、そして、本の収納にはあまりこだわってくれない。書斎にももう少しこだわったシステム本棚みたいなものを作って欲しいと思うけれど、これもまた、僕が好む本のようにきっと売れないから作りもしない、ということになるのだろう。

 

僕の好みの書斎、いや書庫の部屋はどうすればいいのだろう。古本屋以外のモデルはないものだろうかと、いろいろと調べていた。

 

困ったことがあった。

 

僕が参考にするのは、文豪などの書斎だろうか。これも見てみた。しかし、文豪たちの書斎は、どう考えても作り付けの家具だ。時代が古いというのもあるかもしれないが、立派な棚に、それこそ汗牛充棟のごとく本が詰め込まれている。また、きっと書斎だけでは足りずに書庫もあるのだろう。年配の蔵書家先輩の家に行くと、書斎が2部屋と立派な書庫があった。「田舎だから部屋数だけはあるんだよ」ということだった。羨ましいと思う反面、参考にはならないものでもあった。

 

そうなると、僕のこの中途半端な蔵書をしまう書斎のモデルはどこにあるのだろうか。施工例の本棚はちょっと参考にならないものが多い。階段の横に本棚をつけているのをみると、どうやって本を取り出すのだろうかと思ったり、廊下に本棚があると、子供が小さいときには本がいじられてしまうからいやだと思ったりと、書斎一部屋で満足のいくモデルというのはなかなか見つからなかった。

 

ハウスメーカーなどで書斎を推すのであれば、書斎の規模、つまり冊数や種類などからのアプローチがあった方がいいのではいだろうか。100冊と1000冊では本の取り扱いも違うし、本への執着もまた違う。10000冊ともなれば、もはや病的なものすらある。同じ蔵書家でも、レンタル倉庫などで十分と思っている方ももちろんいるし、人それぞれな本との関係がある。また、本の種類によっても書斎や本棚の種類も変わるものだ。僕のように、文庫本が多いと、特に岩波文庫が多いので、岩波文庫に関しては小さな紀伊國屋書店なら僕の岩波文庫の方がはるかに多いという感じだけれど、文庫本が多いと、サイズの小ささから一段一段の奥行きはそんなにいらない代わりに、棚が必要になるし、スライド式にすれば倍の量が入る。三重スライドを僕は愛用していたけれども、一度、三重スライドを使うともう元には戻れない。しかし、高さ230cm対応の文庫用の三重スライド本棚はなかった。

 

と、細かい条件ばかり挙げるとキリがないのだけれど、こんなことから文庫用のスライド本棚は諦めたり、薄型の本棚にしたりと、妥協と苦悩の中で、僕の書斎ができていった。いつか作り付けの本棚にしようと思いながら、一回、組み立て式の本棚で本まで詰めてしまうと、もう、これでいいかという気持ちにもなり、しかし、ちょっと欲しかった揃いの全集なり、選集を見つけては、いまの本棚には入らないなあ、とため息ひとつ漏らしてしまったりしている。

 

こんな本の収納に困っている僕だけれども、じつは希望もある。子供たちが大きくなったら、これは妻に内緒の計画だけれど、リビングの一角に本棚を設置するというものだ。いまは子供たちの荷物などが置いてあるが、子供たちが成長したら、その一角は本棚にできるはずだ。そしてその本は幼児にいたずらされることもないだろう。

 

しかし、いたずらはないにしても、そういえば、学生時代の友人に、父親の蔵書から稀覯本を盗み出して、古本屋に売っているというやつがいた。学生時代は蔵書家というのでもなかったし、1000冊程度(大学を出る頃でも2000冊程度)しか持っていなかったけれども、バイトで頑張って手に入れた稀覯本とまではいかないにしても、ちょっと高い本も持っていたというのもあって、友人の父親が気の毒で仕方なかった。うちの子供たちがそんな悪さをするかどうかは分からないけれど、リビングなりにおいた僕の蔵書が古本屋に売られてしまったらと想像してしまうこともある。古本屋に売った額の倍以上を支払わないと本は取り戻せないものだ。数万円程度のお金で済む問題であればまだいいが、本自体の価格は数万円だとしても、なかなか見つからない本もある。古本屋に買い取られた後に、すぐにどこかに売れてしまうかもしれない。同好の士というのは、こういうときには敵にすらなる。いや、しかし、父親の蔵書を買ってに売るような子供だったら、そもそも、父親の書斎から勝手に持ち出すだろう。そう考えると、リビングに本棚があっても同じかもしれない。

 

いま、僕の書斎の本棚はちょっと限界に近づいている。読まないだろう、あるいはそうでもないと思った本は、箱に詰めにしたり、友人にあげるか、メルカリなどで売ったりすることもある。いまも本棚にはそんなに必要でもない本があるから、それをコンテナボックスにしまって屋根裏に運べばまた本棚にはゆとりができるかもしれない。そんなことを考えながら、やっぱり作り付け本棚に、前面スライド本棚にすればよかったなあ、とか思ったりしている。そういえば、随分前に気合を入れて読もうと思って新刊で予約までして買った全集みたいなものがあった。僕は全集の類は予約して買っていたものが多いので、その中の一つだった。いまの僕には必要ないけれど、場所を取るなあと思って何気なく、ネットで調べてみると、買った当時の5倍くらいの値段になっていた。欲しい人も多いらしい。フリマサイトで古本屋よりは安い値段で出品したら、数日で売れてしまった。そんなことを繰り返せば、作り付けの本棚の費用はできるかもしれないが、肝心の本棚に入れる本がなくなってしまうかもしれない。悩ましい問題だ。