いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

新環境に困る!<1>(自閉症児篇)<環境の変化は不安なものだ>

「いつもは荒れる新しい環境」(長女6歳6ヶ月、双子4歳5ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

新しい環境というのは、楽しみな部分もあるけれど、どこか不安な面もある。大人でもそんな気持ちを味わうのだから、子供であればなおさらだろう。特に自閉症児であれば、と書いてふと思った。自閉症という診断を受けてはいないが、子供の頃から、そして大人になってもの奇矯な行動が目立つことから自閉症と言われてきた僕の場合は、新しい環境自体にはとくにストレスを感じなかった。新しい環境であっても、いつもと同じ食事やいつもと同じ就寝時間がとれるのであれば、つまり、ルーティンが崩れないのであれば、通う場所が変わっても、一緒にいる人が違っても、そんなに問題ではない。どちらかというと知らない人に会うのは好きだ。

 

新しい環境には二つあるかもしれない。学校や職場が変わるというような新しい環境と、住む場所が変わるという意味の新しい環境。僕の場合は、住む場所が変わるような変化はきつい。考えてみれば、僕の仕事はいろいろなところに行く仕事だ。頻繁に知らない人と一緒に仕事をしたりしていたけれど、そこにストレスを感じたことはない。また、出張などで住む場所といっても長くて一ヶ月くらいであれば、毎日同じものを食べたりすれば落ち着く。どのみち、帰る家があるというのが僕を安心させたのだろう。引っ越しやいつも食べている食事がないことの方がストレスだ。毎日食べているトマトがないだけで、僕は軽くパニくる。普段トマトを食べたない妻が最後の一個のトマトを何かの気まぐれで朝食べてしまっただけで、僕の1日はそわそわしてしまう。前もって分かっていればまだいいけれども、あると思っていた物がないのはつらいことだ。せめて、前日に告知して欲しいと思う。

 

自閉症児の長女の場合はどうだろうか。

 

長女が生まれてから、僕らは何度も引っ越しをしている。長女にとって、新環境は、通う場所と住む場所が変わることになっていた。長女は、新しい保育園や療育の帰りなどに癇癪を起こすことが多かった。発語ができるようになってきて癇癪は減ったけれど、去年引っ越してきて通っていた保育園も、最初の方は登園時に荒れていた。妻曰く、妻がお迎えのときにも荒れていたようだ。そうそう、このときは、双子が別園で、さらに遠い保育園だったということもあり、長女の送迎は妻、双子の送迎は僕となっていた頃だった。双子がお留守番できるように、といっても3歳や4歳だから本来はお留守番をさせるべきではないが、日進市にいくら言っても同一園を頑なに拒絶されたので、双子をお留守番させ、長女を僕が迎えに行くようになってからは、長女も落ち着き始めた。どうやら、妻のお迎えだと遅くなるため長女は荒れたようだった。

 

長女にはどちらがつらいだろうか。新しく通う場所か、それとも住む場所か。あるいはどちらもつらいのだろうか。

 

いまの場所に引っ越す半年以上前から、長女には想像上の友達ができていた。最大で6人ほどに増えていた。ボストンから東京、東京から名古屋と引っ越す中で、長女のストレスはたまっていったのかもしれない。名古屋の保育園の最初の数ヶ月は、加配保育を申請し、加配担当がいるにも関わらず、「加配は園全体のフォローです」という名古屋市の方針とも違う加配運用をする主任と、「子どもはみんな一緒」というこれまた子ども条例の誤った解釈をする園長の元、長女は、トイレにも行けず、一人だけ別の学年のクラスにいたりと、虐待保育とみなされても仕方のない環境にいた。

 

幸いというか、この環境については僕がギャーギャー騒いで、保育園や使い物にならない社会福祉協議会などを超えて、名古屋市厚生労働省、そして保育の専門家などを巻き込みどうにか改善してもらった。長女がオムツをパンパンにし(オムツやトイレのことを長女の聞いても何も言わないからという対応がなされていた)、帰宅時に泣きながらお漏らしすることもなくなった。オムツをしているのにお漏らしとは? と思うかもしれないが、これがオムツパンパンのときに起こることというのは、僕もこの保育園で知ったことだった。オムツがパンパンすぎて長女はトイレを我慢するようになり、帰宅したときに安心からなのか、何か分からないが我慢していたおしっこをしてしまって、それが溢れてお漏らしになる。しかし、保育園の方針が改善されて、「合理的配慮」がなされてからは、トイレに関しても長女の反応だけでなく、時間などを見ながら促してくれたり、オムツも見てくれるようになった。トイレやオムツだけじゃなく、小さなことだけれども少しずつ長女への保育が改善されてからは、保育園の送迎で癇癪を起こすこともなくなった。ちなみに、癇癪を起こした長女と双子の三人を抱えていると、道ゆく人が立ち止まって見ていたが、まるで僕が虐待しているようにも見えたのだろう。

 

新環境に困る!<2>(自閉症児篇)に続きます。

トコジラミに困る!<7>(主夫篇)<やっとトコジラミとの最終決戦>

トコジラミに困る!<6>(主夫篇)の続きになります。

 

この長いトコジラミ日記もやっと最後になる。ネットなどによるトコジラミの生息場所の多くを僕は調査し、その度に、トコジラミを発見して駆除していた。トコジラミの習性は、まず暗所を好むということ、そして暗闇の中で寝る人を襲いやすい場所にいるということだ。そう考えれば、和室の場合は畳の間が良さそうだけれど、僕の場合は畳はあまりいなかった。多かったのは襖の裏と鴨居だった。夜になると、トコジラミたちは上の方から特殊空挺部隊よろしく落下して急襲してくるのかもしれない。そして吸い終わると、ゆっくりと襖を登っていくのかもしれない。軍事作戦のようにも思える。

 

トコジラミがカーテンの上部に住むというのは、合理的なのかどうなのか怪しいとこだ。実際に、カーテン上部にもいるにはいたが、カーテンは開け閉めのときに大きく動いてしまうのだから、トコジラミからすれば巨大地震に襲われる場所に住んでいるということにもなるのかもしれない。そうなると、カーテンの場合は、最も動きが少ない端の方に住んでいるということになる。実際に、端の方や、カーテンレールのこれまた端にいた。長女の好きなすみっコぐらしというやつかもしれない。

 

そんな定石通りのトコジラミ駆除をしていたけれども、僕は刺されてしまった。噂通りの痒さだ。僕のすね毛が捕らえたトコジラミから、僕の寝床の周囲に多くのトコジラミがいることを確信した。最後のトコジラミ殲滅作戦がはじまった。

 

困ったことがあった。

 

その日は、トコジラミ相手に寝たフリをしていた。長女や妻が被害に遭っていないことを考えれば、僕が寝ている窓側から来ていることは間違いない。問題は窓側のどこから来ているのか、ということだ。ちなみに僕が窓側に寝るようになったのはアメリカで窓側から冷気が入って来ることがあり、それ以来、窓側に子供を寝かすわけにはいかないということから、マッチョアピールするために冬場は鼻水を垂らしながらでも窓側に寝ている。マッチョはさておき、問題はトコジラミだ。カーテンもカーテンレールも窓サッシも僕は調べている。となると、畳と床間の奥から出てきているかもしれない。トコジラミ用の殺虫剤を噴霧しているとはいえ、殺虫剤が聞かないスーパートコジラミがいるという話は、当時からネットの情報にあった。もし、畳と床間の間から出て来るようであったら、明日は、畳を全部ひっぺがそう、とか考えながら、僕は畳と床間の間をじっと見ていた。トコジラミに寝たふりがバレないように、そして身動きしない疲れたおっさんが大好きなトコジラミを安心させるように、また、布団から足を出して、どうぞお食べくださいと言わんばかりにして、トコジラミ騙しの罠を仕掛け息を殺して待っていた。

 

黒いモノが動いていた。それは僕が予想した畳と床間から出てきているのではなかった。子供のオムツやお尻拭きを入れている無印良品で買った編みカゴあたりから僕に向かって動いている。まさか、このカゴが巣になっているのか? 寝室に、不用意に、このようなカゴがあるのは、育児をされている方なら分かると思うけれども、長女がいつオムツ関係で泣いて起きるのか分からないからスタンバイしているというのがある。夜中にオムツから漏れ出ることもある。そのために、乳幼児育児の夜中当番の僕の近くにこの育児カゴは置いてある。その育児カゴの中にトコジラミまでいたとは、想像すらしていなかった。

 

僕に向かって蠢くトコジラミを摘んで潰した。血は少ししかでなかった。そして妻と長女を起こさないように、編みカゴからオムツやお尻拭きを出した。オムツにトコジラミがついていないかも確認していた。そして、布団を平らにし、トコジラミが編みカゴから落下したらすぐに分かるようにして、編みカゴを持ってリビングの床においた。ちなみに、トコジラミは掴む力強いのか、この程度の移動では落下しない。

 

電気をつけて編みカゴを見てみると驚いた。丸々と太ったトコジラミが数匹いた。これまででもっとも大量の大人トコジラミの巣だ。このトコジラミを僕が全て育てたと思うと、感慨無量ではあるが、トコジラミにとってのサイコパスである僕は、躊躇いなく潰し続けた。アタリが多かった。深夜でもあったから、本格的な駆除は明日にすることにして、浴槽に持っていって、逃げ場を封じることにした。僕の観察によれば、トコジラミはひっかかりがあるところはそこそこのスピードで動くけれども、ツルツルしたところは苦手なようだ。浴槽を登ることはできないと判断した。

 

翌日、浴槽を見ると、トコジラミが数匹落ちていた。熱湯を用意していたのでかけた。熱湯が効くとか何かで読んだ気もしたからだ。そしてシャワーで編みカゴを何度も洗い。編みカゴにはよくないとは思いながらも、洗濯機にかけて、乾燥もした。これで完璧な駆除になったかどうかは分からないけれど、その後、トコジラミを見かけることはなかった。

 

ふと、トコジラミに会いたくなることもある。いまの家は白い壁紙を基調としている。いろんなところ、とくに、トコジラミが棲家にしそうなところは白くなっている。これは、僕がトコジラミを発見したらすぐに駆除できるようにしているということなのだけれども、もしかしたら、トコジラミにいち早く会えるようにしているということかもしれない。トコジラミに関しては、僕はちょっとやべえやつであることは間違いない。たまに体のどこかが痒いときは、トコジラミがいるのではないか? と思うこともある。トコジラミが発見されることはなかった。痒みとともに僕のすね毛でもがいていたトコジラミが思い起こされるだけだった。