いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

特典に困る!<下>(主夫篇)<特別感と子供騙し>

特典に困る!<中>(主夫篇)の続きです。

 

大人も子供も特別感を求めている。ゴールドカードやプラチナカードを作ってみたり、なにやらかにやらやるのも、特別感で嬉しくなっちゃうからかもしれない。子どもの場合は、空港のラウンジが使えるような特別感やホテルやレストランを予約してくれるような特典はいらない。ただ、そのうちゴミになるような、シールとかファイルとかそんなものをもらうだけで特別な気持ちになれる。しかし、長女が期待した特別感は得られなかった。すみっコぐらしの特典は告知があるにも関わらず、告知は担当者のミスで特典配布の期間が終わっていたということだった。

 

レジの前で長女は呆然としていた。事態を理解することは困難だった。

 

困ったことがあった。

 

次女三女が騒がしくなってきてしまったというのもあるし、その日はあいにくの雨ということもあって、子どもたちの荷物も大変だった。その日は、土曜日で、土曜日だけは長女の保育園に次女も三女も通っているということもあって、一緒のお迎えだった。で、そんな雨の日にわざわざ本屋さんに行ったのも、本屋さんがちょうど帰り道だったし、その日は妻が仕事で遅くなるから、本屋さんで本を買おうということで妻の不在への準備をしていた日でもあった。しかし、あいにくの雨、雨の日には本屋さんに行きたくないものだけれど、子どもたちとの約束は破れない、そんなことから、雨の日に子供たちの荷物や雨具を抱えながら、本屋さんに行っていた。

 

子どもたちの荷物と本を抱えなながら、本屋さんを出た。長女は何も言わない。次女と三女は喜んでいる。お店から出て、雨具を着て家に帰った。

 

「プレゼントなかったねー」

 

長女が泣き出してしまった。久しぶりの癇癪が起こった。特典なんて些細なものだ、きっかけでしかないのはわかっていた。ただ最近の長女は、いい子にしようと頑張っていたのは僕でも気がついていた。次女と三女の世話をするようになってきたし、自分で保育園の準備もするようになってきていた。わがままも減って、ちょっとしたことで泣かないようになっていた。長女は頑張っていたんだと思う。そんな頑張りのご褒美の意味も含めて、その日は本屋さんでなんでも買っていいという話をしていた。そこで出会ったのが、特典付きのすみっコぐらしだった。長女にとって、自分の頑張りが報われる特別な瞬間だったのだろう。

 

しかし、特典はもらえなかった。

 

僕も、店員さんになんて言ったらいいのか分からなかった。返品するのは簡単だったけれど、返品という行為の方が長女は混乱するんじゃないかとか思ったりもした。

 

せっかくの楽しいご褒美の時間が、長女にとっては残念な時間になってしまった。次女と三女は大はしゃぎでキティちゃんのピアノで遊んでいた。

 

その書店は大手の書店で、東京でも何度も利用した書店だった。そんなこともあって、本社にメールしてみた。すると翌日、丁寧な返事があった。

 

返事を要約すると、

「せっかくご来店いただいたのに、がっかりさせてしまいすみませんでした。特典に関しては用意がありましたので、ご住所を教えていただければお届けにあがります」

ということだった。

 

特典はあったのか、というのはさておき、その中には、「特典を見つけることができなかったとしても、そのとき、別のおまけでも差し上げるべきでした。その後、特典の手配ができてから再度、お届けするような配慮ができず、申し訳ありません」みたいなことが書いてあった。

 

お届けしていただくのは、ちょっと申し訳なさすぎるけれども、確かに、そのとき、すみっコぐらしの特典がなくても、その後もなくても構わないが、僕も書店で働いたことがあるから、なんとなく分かるけれど、書店には出版社から送られた販促用のシールとかなんかがたくさんある。特典がない、あるいは見つからないなら、子供騙しかもしれないが、この販促用のシールでもあげれば、子供は満足するものだ。長女の場合はすみっコぐらしの何かがいいかもしれないけれど、きっと、すみっコぐらしじゃなくても、ちいかわでもなんでもよかっただろう。

 

そんなことを返信すると、おっしゃる通り系のお返事だった。そして後日、子どもたちと書店に行くことになった。

 

特典は案の定な感じだった。大人からすればあってもなくても構わないレベルのおまけにすぎない。しかし、長女はとても気に入ったようだった。今でもリビングの棚に飾っているくらい気に入っている。それに、販促用のシールももらって、長女だけじゃなく、次女三女も大喜びだった。本屋さんは楽しいところだとますます思うようになったと思う。

 

特別感は、物の価値とは関係ない部分がある。そのときに特別にしてもらえたことへの喜びみたいなものなんだと思う。そういえば、アメリカで買い物をしたりすると、こういう特別感の演出がうまいと思うことがあった。ベビーカーに乗った長女に、スーパーマーケットのレジの人がペタペタシールを貼って喜ばせていた。こんな些細なことが特別感を与えてくれる。