いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

新築アパートメントに困る!<3>(ボストン篇)<新築アパートメントの諸問題>

新築アパートメントに困る!<2>(ボストン篇)の続きになります。

 

ボストンのとくに僕が住んでいたあたりは学生が多いというのもあるのか、そういう新築アパートメントはほとんどなく、古い建物を改装してお洒落にしていたり、あるいは、うちのように、古いアパートメントがそのままボロいアパートメントになっているか、という感じだった。それに、そこは住宅地でもあるから、戸建てが多い場所で、戸建てを間借りしている人も多かったと思う。学生であれば気楽だけれど、家族がいるとなると、少々不便を感じるところでもあった。

 

ボロいアパートメントに住んでいると、新築のアパートメントが眩しく感じる。新築アパートメントには、庭があって、そこにBBQができるようになっていたり、ジムがある。もちろん、二つの設備も僕は使わないけれど、使わないにしても、なんか、かっこいいなあ、くらいの感想は持つ。

 

困ったことがあった。

 

そんなボストン界隈で、日本から来た家族連れの駐在員は、ボストンに住む学生みたいな環境の人たちからすれば、贅沢なアパートになってしまう。そういえば、学生寮みたいなところにカナダ人の友人家族が住んでいたけれど、我が家と同じような間取りで、設備も同じような感じだった。違いは、我が家にはエレベーターがあるけれど、学生寮にはエレベーターがないからベビーカーの上げ下げが大変だとぼやいていたことくらい。家賃はうちと変わらなかった。

 

話を日本の駐在員御用達の贅沢なアパートメントに戻そう。

 

家賃は、当時、2800ドルから3500ドルくらいだったと思う。部屋数で値段は変わる。子供がいて、日本でいうところの2LDKが欲しいとなると、3000ドルは超えていた。僕らでは手がでない家賃だけれど、企業から派遣される方たちは自腹じゃないから、そんな値段でも見積もりさえ取れば住めるそうだ。ボストンの家賃は高い、という証明ができればそれでいいみたい。その後、コロナなどでもっと家賃が上がったという話を聞いた。場所がいいかというと、ちょっと遠い駅や、駅からちょっと遠い場所だったりした。新築のアパートメントだから、開発や再開発がなされた地域にどーんと建てたのだろう。新築のアパートメントの素敵さは、まず入口にコンシェルジュがいたり、ジムがあったり、ちょっとしたパーティができる有料のスペースがあったりするところだ。もちろん、室内に個人の洗濯機がある。ドラム式の乾燥機能付きだ。

 

いくつかの素敵なアパートメントに遊びに行った。中にはプールまでついているのもあった。そこはきっと、3500ドルでも効かないだろう。そんなところに住む友人に聞いてみると、「日本ではまず住めないようなところですよね」ということだったので、その人たちにとっても、ボストン駐在はまた別ということだったのかもしれない。エイブルさんの紹介する物件が良すぎるものばかりなのだから、こうなるのだろう。それに実際、セキュリティなどのことを考えても、こういう綺麗なアパートメントの方が安心して暮らせるとは思う。僕が住んでいたところは、気のいい人たちが多かったけれども、マリファナの匂いがしてきたり、終日どんちゃん騒ぎがあったり、争いごとなどもあったりして、アパート内の治安がいいとも言えなかった。まあ、楽しかったけれども。

 

素敵なアパートメントに素晴らしい設備。僕も一度はこんなところに住んでみたいと思った。駐在の方たちの多くは、男性が駐在員で、女性が駐在員に帯同しているという感じだった。僕の場合は、妻の仕事で来ていて、僕が帯同者だった。そうすると見えない景色が見えてくる。

 

いわゆる駐在員の妻の中でも、そんな浮かれたような生活に批判的な人たちもいて、浮かれセレブもどきみたいになっていない彼女たちからは、切実な話も聞けた。彼女たちは、うちのボロアパートメントの方が良い、と言ったのだ。それはお世辞とかではなく、もっと実質的な話だった。

 

端的にいうと、シャワーの水圧の問題やエレベーターの故障の問題が新築のアパートメントにはあるということだった。また、我が家の管理人は雑な人ではあるけれども、すぐに駆けつける。しかし、彼女たちのところのメンテナンスはなかなか来ないという問題もあった。駐在員の夫たちは、素敵なアパートメントに大金を自分が支払っているわけでないが、自分も身分によって、素敵なアパートメントに住めているという自負なのかプライドなのか分からないが、要するにちょっと浮かれた状態になっているものだから、そういった、シャワーの水圧や、2台あるエレベーターの一台が数ヶ月止まったままであることなどには目を瞑り、素敵なアパートメントに住んでいる僕、という感じなっている。つまり、ボストン駐在で浮かれている夫には、そんな彼女たちの切実な悩みが通じない。もちろん、駐在員の妻たちにも、浮かれている人もいるから、そんなときは、僕も「素敵ですね」を繰り返していた。

 

新築アパートメントに困る!<4>(ボストン篇)に続きます。