いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

嘘に困る!<2>(自閉症児篇)<三女の嘘と長女の嘘>

嘘に困る!<1>(自閉症児篇)の続きになります。

 

言語認識能力が1歳半遅れていると診断されている長女と、通常よりも少し言語の発達が早い次女と三女は、言語的な発達段階が同じようなところにある。性格的な違いもあるだろうけれども、三女は口達者なため、三姉妹の中でもっとも状況説明などが巧みでもある。そして、口達者がために、嘘もはやくから覚え、よく嘘をついている。

 

困ったことがあった。

 

言語認識能力が高めの三女に、長女はよく言いくるめられていた。三女がついた嘘に翻弄されて泣いている長女というのは、昨年あたりによくあった。三女は自分でやったことを、長女のせいにする嘘をつく。嘘がよく理解できていない長女は、自分のせいにされてしまうということで泣いていた。そういうときには、僕が探偵にみたいになって証拠を集めて、三女の嘘を暴くことで、長女は泣き止んだ。こんなことが繰り返されて、どうやら長女は嘘を覚えたようだった。

 

長女が嘘ついたのは、昨年だったと思う。長女が5歳のときに、三女の嘘を真似していた。そのときは、嘘をついているという自覚があまりないようで、いつも三女に言い負かされている長女が三女の言い方を真似したという状態だった。そのため、僕の中でも、長女が嘘をついているという認識はあまりなく、三女の真似をしているという感じだった。これは次女も同様で、三女の嘘を次女が真似をしていた。一時期、三姉妹の間で、嘘をつくことがトレンドになっていたという感じかもしれない。

 

当時は、三女の嘘が姉妹間でよく問題になり、調停役の僕が三女の嘘を検証して、嘘だとわかると三女を叱っていた。長女も次女も三女の嘘がバレるとホッとして、2人とも「三女ちゃんがまた嘘をついた」というようになっていた。これが反面教師になっていたのか、長女の次女もあまり嘘をつかないのかもしれないと僕は思っていた。しかし、長女も次女も三女の真似をして嘘をつきはじめた。もしかしたら、僕が三女の嘘を見抜けないことがあったのかもしれない。

 

この三女の真似としての嘘を長女がついたとき、僕にすぐバレて、僕が「それは嘘だね」だと対して怒るわけでもなく、叱る口調でもなく、笑いながら指摘したことがあった。すると、長女はびっくりした顔と同時に、激しく泣きじゃくってしまった。僕に怒られると思ったからなのか、それとも、まさか嘘がバレると思いもしなかった、ということなのか、自分が嘘をついてしまったことがショックだったからのか、その理由は定かではなかったが、それ以来、長女は三女の真似としての嘘はつかなくなった。

 

次女は次女で、巧妙な嘘をつきはじめた。三女が嘘つきだと姉妹間で、三女も含めて認識が共有されているという前提に立って、三女を貶めるような嘘をつきはじめた。次女がやったとこでも三女のせいにすることが可能だと思ったのだろう。次女がやったことを三女のせいにして、三女がやっていないと反論すると、それは三女が嘘をついているからであり、三女は嘘つきだから、次女の主張の方が正しい、とする論法だ。この嘘は、3、4歳児が頭を使って編み出したということを考慮すると感心する部分もあるが、悪質さも感じた。三女の嘘を天然の嘘だとしたら、次女の嘘は関係性を踏まえた嘘であり、より高等な嘘でもあった。これを叱るのは難しいけれども、この嘘はきちんと対応しなければならないと感じたので、次女の嘘については時間をかけて複数回にわたって根気強く説明する必要があった。このタイプの嘘はもうつかなくなった。ほどほどの悪事は頭を使う訓練にもなるのかもしれないから、いたずらや嘘を、頭ごなしに叱るのはいけないことであるが、野放しにするのもなんか違うような気もする。

 

長女は、三女の嘘の真似をしなくなった。もともと嘘というものがあまり理解できない長女は、お友達から言われる軽い嘘や冗談も本気になってしまって、動揺することも多かった。保育園ではそんな嘘がらみのトラブルも多かった気もする。「長女ちゃん、きらい」「長女ちゃん、かわいくない」という嘘なども長女は本気になってしまって、泣いていた。嫌いと言いながら、遊ぼう、と言ってくるお友達の気持ちや意味が分からないのだ。次女や三女は、そういうお友達とのやりとりがわかっているようで、2人で「あれは、ほんとうは嫌いなんじゃないんだよ」などと年少組の終わりに話していた。長女は年長組でもそれが分からずに間に受けていた。嘘の意味が分からない長女にとって、僕や妹たちに「嘘」だと思われることは、三女の真似でしかなかった。

 

嘘に困る!<3>(自閉症児篇)に続きます。