システムベッドに困る!<2>(主夫篇)<長女の独寝に向けて>
システムベッドに困る!<1>(主夫篇)の続きになります。
僕らの家は、将来的に子ども一人一人の個室ができるような間取りにしていた。とはいえ、個室が必要になるのは、もう少し後になると思っていた。長女は1人で眠ることに怯えていたし、双子は双子で離れ離れになることを嫌がっている。しかし、そんな親の予想を裏切り、長女の独立心は育まれ、いつの間にか1人で寝たいと言うようになってきた。ずいぶん先の話になるだろうけれど、こんな感じで長女が家を出たいというようになるのかもしれないと、10年以上先のことをふと妄想したら、妻が笑っていた。
長女は、生まれてから、ボストン、東京、そして名古屋でも、僕らと一緒に寝ていた。とくに妻の隣でなければなかなか寝てくれなかった。
困ったことがあった。
家ができて、いざ引っ越してみると、環境が大きく変わったからなのか、長女も双子と同じ寝室で寝ることに抵抗はないようだった。長女が望んだ階段のベッド(二段ベッドのことをそう長女は呼ぶ)だったということもあって、長女は最上段に楽しそうに寝ていた。一年間を通して、長女が僕らを部屋から呼んだことは、数回あるけれど、それも最初の方だけだった。
ちなみに、長女が僕らをどう呼ぶかというと、子どもたちが寝ているベッドは壁に隣接しており、その壁の向こうが僕らの寝室になっているということから、壁を叩けば、僕がランプの精よろしく現れる仕組みになっている。物音に敏感ですぐに起きてしまう妻は、この壁の音には起きない現象をなんと名づければいいのか分からないが、普段は物音ひとつじゃ起きもしない僕が長女が叩く壁の音には敏感に反応して子供部屋に行っていた。これもきっと夜間の乳児の世話は僕が行なっていたという数年間に及び刷り込まれた習慣がまだ残っているということかもしれない。とまあ、そんな感じで、長女の子供部屋生活は順調だった。
しかし、この子供部屋で三姉妹が寝ることにも、不満が出てきた。はじめは次女から、そして長女も文句を言い出した。そう、三女がうるさい、という問題だ。
三女はちょっと厄介な性格をしている。人一倍寂しがりな三女は、朝早く起きてしまうと、1人で起きていることに耐えられない。そのため次女を起こし始める。次女から三女に起こされるということを聞いた僕が、三女に次女を起こしちゃダメというと、今度は、「起きてよー」みたいな感じでは、起こさずに、1人で大声で歌いはじめる。三女としては起こしたわけじゃないという理屈だ。そう、三女は起こそうとしたのではなく、歌を歌っていたら、次女が起きたというだけで、結果的にそうなった、という詐欺師顔負けの小理屈だ。小理屈や屁理屈を尊重したい僕としては三女を注意することができない。立派だなあと思ってしまった。
また、三女は繊細なところもあって、怖い夢を見たときなどは、激しく泣き始めたりする。でっかい虫がいるー! と夜中に叫んで泣き出したときには家族中起こされた。もちろん夢なのだけれど、夢と現実の区別がついていない子供になんと説明すればいいのかも分からない。また、このとき三女だけ僕らの部屋で寝かしてしまうと、妙に賢い三女は、今度もそれを理由に1人だけ僕らの寝室で寝ようとするかもしれない。そうなると、三女だけずるいということになって、三姉妹が僕らの寝室で寝ることになるかもしれない。寝ぼけた三女の対応をするだけで、いろいろと考えさせられる。
虫の夢事件のときには、子供部屋の電気をつけ、布団を全て取り出し、虫がいないことを確認して、三女を寝かせた。そのとき、長女も次女ももちろん起きる。こんなことが何度かあった。
長女と次女は、三女と一緒の寝室が嫌だと言っている。少し可哀想な三女だけれど、長女と次女の気持ちもわからなくもない。夜中に突然起こされ、毎日のように朝早く起こされる。仕事だったらブラックと言われる状態だろうし、ハラスメントのようにも思える。三女に聞いてみると、次女とだけは一緒に寝たいということだった。次女に聞いてみると、しょうがないから一緒に寝てあげるという優しさに微笑ましくもなったけれど、次女には申し訳ない気もした。そんな次女に、僕はたまにお菓子や高い高いのよりすごい版というような身体アトラクションのサービスをしていることは、長女にも三女にも秘密にしている。双子ならではの関係なのかもしれないとか思うこともある。
このような流れもあって、長女が1人の部屋を欲しがった。
システムベッドに困る!<3>(主夫篇)に続きます。