いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

嘘に困る!<1>(自閉症児篇)<長女の嘘について>

「嘘をつくことは、成長の証なのだろうか」(長女6歳6ヶ月、双子4歳5ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

最近、長女が嘘をつくようになった。すぐにバレるような嘘ではあるけれど、嘘をつくようになった。子供の嘘は、それが嘘なのか、それとも事実誤認なのか、事象と言葉が結びついていないだけなのか、ちょっとわかりにくい。また長女のように軽度知的障害であり、言語認識能力が低いと診断されている子供の場合には、何が嘘であるのかは、本人にも分からないようなところがある。これまでにも、事実と違うことを長女が言っていることはあったけれど、それは嘘というより、事実に対する言語認識が未熟だったということが大半だった。

 

長女は嘘をつかない、いや、つけない子供だった。

 

次女と三女は嘘をつく。保育士さんによると、3歳くらいから、子供は嘘を覚えるようになるそうだ。「なになに持っている」というような嘘や、自分がやったことなのに「だれだれがやった」というような嘘、自他の区別が生まれてくることによって、嘘もまた始まるのだろう。この嘘も、子供全員が同じようにやるというのではなく、嘘が多い子もいれば、少ない子もいるということだった。ちなみに、双子でありながらも、うちの場合は、次女は嘘が少なく、三女は嘘が多い。保育士さんからは、毎年クラスに1人か2人くらい口が回り過ぎるが故に、嘘も増える子供というのがいるらしく、三女もそういったクラスに1人か2人のタイプだということだった。

 

三女の嘘は、家でもしばしば問題になることがあり、あまりにも嘘が多いため、ある時期からは、「オオカミ少年」のように、三女が言うことはあまり信憑性がなくなってしまった。この三女の嘘に関しては、長女からも次女からもたびたび指摘がなされている。もちろん、三女は僕にも多くの嘘をつくため、そしてまた嘘のバリエーションがいつも一緒というか、部屋を散らかしたり、汚したり、出しちゃいけない物を出してきたりするときに、三女が「長女ちゃんがやった」「次女ちゃんがやった」などというような嘘なので、だいたいすぐにバレる。長女の部屋を散らかして、散らかされた長女が泣いていたりするときに、三女が「長女ちゃんがやった」と言っても、すぐに嘘だとバレる。

 

三女が嘘をつき始めたのは、3歳になる少し前くらいからだけれど、長女や次女の密告もあるためすぐにバレる。嘘がバレた三女は、僕に対して「嘘じゃない」と以前は、頑なに言い張っていたけれども、最近は、嘘がバレることに気がついていたのか、嘘はつくけれども、嘘を指摘されたときには素直に認めるようになっている。次女が嘘をついたときに、「次女ちゃん、嘘はすぐにバレるよ」と嘘の専門家のように諭していた。三女は、嘘がバレるということを分かった上で嘘をついている。今では、三女が嘘をついたときに「本当?」と聞いただけで「嘘」というようになってきた。また、三女の嘘に対する言い訳が増えた時期もあった。三女は、「嘘」ではなく「間違え」とすることで、「嘘」が「嘘」でなくなり、「間違え」になる、という詐術を知ってしまった。この詐術、言い換えは、弁護士や政治家なども平気でやる手段なのだから、なかなか巧妙だ。しかし、この「嘘」を「間違え」とすることが「嘘」なのではないか、と指摘すると、「嘘」だと認める。この辺は大人の嘘よりもまだマシな気もする。それともう一つ、「嘘」と「空想」の違いについても三女は興味があるようだ。

 

「透明な蟻がいたんだ。それは透明な指じゃないと掴めないから、パパには掴めないんだ」

 

「透明な蟻って何?」

 

「透明な蟻がいたんだよ。次女ちゃんと捕まえたんだよ。透明な指にすれば捕まえられるんだよ」

 

「透明な蟻は夢で見たの?」

 

「夢じゃないよ、ほんとにいたんだよ」

 

「それは、三女ちゃんが考えたということなの?」

 

「そうだよ、考えたんだよ」

 

「考えたのなら、空想だね。本当にいたんじゃなくて、透明な蟻がいるということを考えたということだね」

 

「ねえ、これは嘘なの?」

 

「これは、嘘ではあるけど、空想ということにもなる。お友達や先生に、透明な蟻が本当にいた、と言うと嘘になるけれど、透明な蟻を考えた、といえば空想だから、お友達や先生に話してもいいと思うよ」

 

と、4歳児の質問に答えるのもなかなか大変だ。三女は、嘘と間違えと、空想、それと夢というのを切り分け、かつ混同しながら、事実と事実と異なることを表す言葉について、積極的に取り組んでいる。

 

嘘に困る!<2>(自閉症児篇)に続きます。