いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

オーブンに困る!(ボストン篇)<ボストンのオーブン事情>

「キッチンは汚いのが普通」(長女9ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

アメリカに二年間いました、そして、ましてや日本でも有名なボストンに、なんていうと、素敵なところにいたように思われやすい。

 

実際、いろいろと素敵なところもあるし、良いと思ったところもたくさんある。ただ、なんて言いますか、アメリカ暮らしをする前に、素敵な写真とかを見てしまって、実際はどうなのかというのを考えてなかったというのがある。

 

例えば、ボストンの素敵なお家みたいな写真を見てしまうと、ボストンに住んだらこんな素敵なお家に住めるのか、と思ってしまったりもする。

 

写真で紹介されているのは、素敵なお家だけだ。

 

住宅展示場のモデルハウスを見て、家を立てたら素敵なお家になるに違いないと思ってしまうのと似ている。モデルハウスはオプションモリモリの贅沢仕様だ。

 

ボストンには素敵なお家がたくさんある。アパートメントもジムがついていたり、庭でBBQができるようなところもある。僕が遊びにいった企業から派遣されていた人や、総務省とかその辺の人が何年間は役所をやめられないという交換条件でボストンに研修?みたいな感じで来ている人のアパートもだいたい素敵だった。

 

素敵なところに住んでいる人が多かった。

 

そして素敵なところは、家賃が高い。ほんと高い。2022年の今ならもっと高いだろう。円安でもなかった当時でも、日本円で30万円くらいの家賃のところに、そういう人たちは住んでいた。

 

家賃30万円なら、そりゃ素敵なお部屋になる。日本でいうところの1LDKみたいな部屋でも素敵なアパートメントは30万円くらいのお家賃だ。東京ならタワマンだ。

 

そんなお家賃のところが、素敵なボストン暮らしなどでは紹介されている。

 

僕らが住んでいたのは、家賃20万円くらいのところ。これだって高い。高いけれども、2LDKくらいの広さだった。家賃30万円の人たちからも、「広いですねー」と言われていた。家賃20万円で広めの2LDKなら、タワマンまで行かなくても、東京のそこそこいい立地ならそのくらいする。ちなみに、ボストンに行く前には、家賃12万円の狭めの2DKに住んでいた。家賃が高いとぼやいていたけれど、妊婦だった妻の職場まで歩いて5分の立地ということで、そこに住んでいた。僕の地元だったら、同じ広さでも家賃7万円くらいだっただろう。

 

ボストンで広めの2LDKで家賃20万円というのは破格だ。破格ゆえに、外観だけでなく、いろいろとボロボロだった。家賃30万円の1LDKのお部屋は外観も豪華、コンシェルジュがいたり、エレベーターはピカピカで、風呂トイレのユニットバスが異様に広かったりする。なんのためにこんなに広いのか分からないくらい広い。風呂にビニールプールでも設置するのかというくらい広い。それにキッチンもピカピカだ。

 

キッチン。まさにキッチン。

 

ボロいアパートはキッチンがボロい。日本人でボロいアパートに住んでいる友人は一人しかいなかったけれど、アメリカの友人たちはボロいアパートに住んでいる人が多かった。アメリカの友人たちは、キッチンの汚さは当たり前だと思っていたようだ。

 

ちなみに、家賃30万円なら全部が全部綺麗なアパートというわけでもない。日本人が集まるなんとかって地域はボロいアパートでも結構な値段だった。そこはセントラルヒーティングみたいなやつも故障して、それぞれの部屋で暖房器具を使わないといけないらしかった。私費でハーバードあたりのなんかの学位をロンダするために来ている日本人のお医者さんなんかも、友人の住んでいたボロいアパートに住んでいたらしいけれど、そこは家賃が高い地域だった。日本人が多くて有名な場所だ。ボストンでボロアパートだったという場合は、だいたいそこだ。

 

そんなことより、キッチンだ。

 

引っ越してきたときに、部屋が汚いのは予想していたけれど、キッチンの中、オーブンがとても汚かったことには驚いた。

 

引っ越してきたらオーブンを綺麗にするというのが、ボストンあるあるらしい。よくもまあ、ここまで汚い状態にしたなあと感心すらする。

 

オーブンの中を見たときに、オーブン料理を諦めた。

 

嫉妬の一種なのでたびたび出すけれども、家賃30万円の綺麗なアパートに住んでいる人とボストン生活について話していて噛み合わないのがここだった。

 

「ボストンに住んでからオーブン料理が増えましたね。面倒な時は冷凍ピザばかりでしたよ」

 

という一見、贅沢でないような話。冷凍ピザなのだから、高価でもない。アメリカの冷凍ピザはデカくて安い。冷凍ピザが贅沢品という話でもない。

 

つまり、オーブンを使えるということは、自分でピカピカに磨き上げた猛者はおいとくとして、綺麗なアパートメントに住んでいる人ということだ。

 

うちの家賃が20万円、綺麗なアパートは30万円。綺麗なアパートにはいろいろと特典があるかもしれないけど、きっとそのうち3000円くらいは綺麗なオーブンの料金だ。5000円くらいかもしれない。年間6万円、二年で12万円が綺麗なオーブンのためのお金だ。12万円が冷凍ピザを二年間食べ続けるためにピザ代意外に使われている値段だ。

 

汚いオーブンを自分で綺麗にしたという人たちももちろんいるし、そのまま一度も使ったことがないという人もいる。綺麗にして冷凍ピザを食べている人はまあ、その質素な話でもある。質素とはいえわざわざ物価の高いボストンに住んでいるんだから、質素と言っても、なんだか微妙な話ではある。オーブンに戻ると、汚いオーブンを綺麗にしたといっても、元の汚さが尋常じゃない。

 

妻がオーブンを使いたいと言って、掃除した。いくら掃除しても綺麗にならない。頑張って掃除して、数回は使った。でも、やっぱり汚さが気になってしまって、あまり使う気になれなかった。それにオーブンを使うと異臭がした。

 

アメリカか何かの料理番組でオーブン料理を素敵に作ったりする場面を見るけれども、誰もができることじゃない。潔癖気味の人は家賃30万円を覚悟した方がいい。僕らはオーブン料理を諦めることにして、二年間12万円(思い込みです)を節約することにした。