いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

凸凹発達に困る!<1>(自閉症児篇)<グレーゾーンの手前らしい>

「1歳半遅れをキープする長女」(長女5歳11ヶ月、双子3歳10ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

長女は、1歳半のときに、ボストンで自閉症と診断された。帰国後も自閉症と軽度知的障害ということで障害者手帳が交付されている。自閉症や軽度知的障害は、ぱっと見には障害者だということが分からない。長女の場合は、軽度ということもあって、言い方が難しいけれども、「よくいるよ」とか「うちの子もそうだよ」と言われてしまうことも多くあった。僕は心の中で、「生活しないと分からないこともあるんだけどなあ」とか、「あなたの子供も検査を受けた方がいいのでは?」などと思ったりしながら、人に何と言われようとも、長女に対して適切なケアができればいいと思っている。

 

長女の発達の遅れに気がついたのは、1歳になったあたりだった。育児書などの指針に従って、あれができるようになった、これができないみたいにしていると、どうにも様子がおかしい。はじめての育児ということもあって、僕らも「こどもの成長はそれぞれだから」みたいに思うこともあった。とはいえ、長時間泣き続けたり、癇癪などの多さも含めて、健常児における成長とは違うような気もしていた。

 

そんなとき、ボストンの友人たちから、子供の発達の相談に乗ってくれるところがあると言われて見てもらうことになった。何度も書いているけれども、アーリーインターベーションという早期介入プログラムがボストンにはあって、育児や子供の発達に対して自治体などが介入するというものだ。愛知県のどこぞの市のように、育児は保護者に第一義的な責任があるので、政府方針や通知にいくら記載があったとしても、行いません! と強気にでるような自治体とは違う。育児に関しては自治体による格差があると思う。国の指針以上のことを市町村の裁量権としてしようとする自治体と、国の指針以下の支援しかしないことを裁量権だとして主張する自治体という大きな違いだ。僕らが住んでいるのは後者の自治体で、簡単に言えば、気持ち悪い自治体だ。それでいて少子化社会対策とか計画で出しているのだから、論理破綻をしている。会社などにいる意味不明な使えない上司という感じだ。

 

話を戻すと、ボストンの自治体では、アーリーインターベーションの専門家が3人ほど来て、長女の様子や検査を行ってくれた。すぐに自閉症の疑いがあることが指摘され、家族にも自閉症がいるかどうか聞かれたり、保護者が困っていることはないかなどと聞かれた。そして、長女の聴覚の検査のために病院を予約したり、自閉症の診断のために病院も予約した。聴覚の検査を最初にするのは、そもそもの問題が聴覚にあるのなら、自閉症とはまた別のケアが必要になるから、というものだった。

 

アーリーインターベーションの専門家たちからは、長女は、とくに言語認識能力が低いと言われた。その代わり、視覚的な認識能力が高く、とくに色彩感覚に優れているということだった。無理に言語認識ばかりやるよりも、視覚的な認識を成長させることがいいかもしれないということもあって、手話のようなベイビーサインや、お絵かきを中心にやるようになった。もちろん、言葉を使わないということではなく、視覚と言語による認識を同時に行えるようにするというものだった。このときの長女の発達支援の指針はいまでも変わらない。

 

しかし、長女の言葉は出ないまま、ベイビーサインはいくつか覚えたけれども、言葉はないまま帰国することになった。正確には、「ジス」とたまに言っていた。専門家が言うには、これは「This」のことじゃないかということだった。そうそう、「ダダダ」とも言っていたので、これは僕のことだと言って、「ママ」といつまでも言われない妻にドヤ顔をしていた。悪いことをした。ダダダは別に僕のことではなく、ダダダと言うだけだったのは、妻も知っていた。

 

帰国してからも、自閉症と診断され、療育に通うことになった。長女の通っていた保育園は療育に対して批判的で、当初は療育に通う必要はないと言われた。その後、園長含めて話し合ったところ、今度は、急に「われわれの認識が間違っていたかもしれません」みたいになって、療育に見学しにいってくれたりして、その後は療育とも連携してくれるようになった。どうやら、その園長の中で、療育は規律訓練をさせるところだと思い込んでいたらしい。今考えれば、多少揉めたとしても、こうして話し合い一回で解決するのだから東京は楽だった。多様性を考えることが当然になっているからかもしれない。田舎的な文化が強い地域では、こういうこともこじれるだけだ。イレギュラーなことは認めないというのが田舎的な反応だと思う。

 

凸凹発達に困る!<1>(自閉症児篇)に続きます。