いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

親心に困る!<上>(障害児篇)<まずは障害を認めることからかもしれない>

「障害を認めた方がいいのか、それとも障害を認めない方がいいのか」(長女4歳11ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

発達障害自閉症、軽度知的障害などの障害は、小さいうちには、それが障害かどうかなかなか分からない。はじめての育児などの場合は、兄弟姉妹と比べることもできないので、「こういうものか」と思ってしまうようなこともある。

 

健診で分かることもある。ただ日本の場合は、発達が遅れていても「様子見」と言われることが多い。3歳をすぎたあたりで「障害」が言われたりするらしい。

 

らしい、と言ってしまうのは、長女の場合は、生後半年で渡米したというのもあって、アメリカ、それも教育などには先端的な考えを持っている人も多いボストンに行ったということもあって、子供の発達がちょっとでも通常ではないようなときには、すぐに専門家が関与するという仕組みがあった。

 

長女はずっと泣いている子供だった。日本だったら、「子供はそんなもの」ということでスルーされてしまうだろう。ただ「ずっと泣いている」というのが、通常の「ずっと泣いている」よりもひどかったわけなんだけれども、1人目の育児ということもあって、僕らには判断ができないものだった。僕らの育て方が悪いとか、僕らの忍耐力がないとか、そういう僕らの問題として日本だと扱われていただろう。

 

妻のママ友の1人が育児に悩んでいた。彼女の場合は2人目の子供ということもあって、お姉ちゃんと比べて明らかに身体と言語が遅れているということだった。もう1人のママ友は、別の問題で悩んでいた。2歳で3ヶ国語以上を操る子供だった。それぞれ別の悩みだった。発達しすぎているなら悩む必要がないと思う人もいるかもしれないけれど、俗に言われるギフテッドの子供に対して素直に喜べないというのもあるらしい。彼女がいうには、ギフテッドを何人も見てきたけれども、不幸になりやすいということだった。そういう彼女はハーバード大の医学部に所属していた。

 

ギフテッドのTちゃんは、なぜか長女のことが好きで、僕らが帰国してからも絵を書いて送ってきてくれたり、プレゼントを送ってきてくれたり、長女の誕生日には必ずメッセージをくれる。長女しか友達ができないらしい。発達しすぎたからなのか、その後のコロナ騒ぎで人との交流が減ったからのかは分からないけれども、親としては心配なようだ。

 

ギフテッドという発達に恵まれた人でも、人とは違うということで困るのだから、発達が遅れている場合ももちろん困る。子供の個性と思うにも限界があるものだ。

 

ボストンでは健診などを受けたときに、「親が困っているか」ということを重視する。そして困っているとなると、専門家が出てくる。僕らのようにアメリカに不慣れな親はそれがどういうことか分からなかったので、ママ友に相談したりした。ママ友たちはとても協力的で、いろいろと教えてくれた。僕らは育児に困っていると言っていいことが分かった。

 

そして専門家が毎週うちに訪ねてくるようになって、病院にも付き添ってくれた。長女の場合は、1歳半で自閉症と診断された。そしてアメリカの療育みたいなものを受けてきた。

 

帰国してからも療育に通うために日本の病院に行って診断をしてもらおうとしたら、まだ小さいから自閉症かどうか分からないみたいな感じだった。ボストンでの診断書を持参していたので見せると、なんとかかんとか言いながら、自閉症と診断された。そして療育に行くことになって、障害者手帳も交付された。

 

僕の義妹は保育士だ。そして甥は発達障害だ。甥が3歳くらいのときに、弟から甥の発達について相談を受けた。僕は専門家でもなんでもないからよく分からないけれども、僕自身が子供の時に人と違うということで嫌な目にあうことも多かったし、診断こそされていないけれども、知的障害や自閉症と揶揄されることが多かったということもあって、甥は僕のようにちょっとおかしいということに気がついた。

 

当時、弟と義妹に、甥は発達障害や知的障害があるかもしれないから、病院に行った方がいいとすすめた。しかし、彼らは行かなかった。健診などでは「様子見」と言われたかららしい。

 

義妹は、そのときの判断をずっと悔いている。「義兄さんに言われたように、ちゃんと診断を受けに行けばよかった」と、療育に通う長女を見ながら言っていた。甥は、小学校に上がるときに、支援級への進学をすすめられた。そのとき、弟と義妹はショックを受けたということだった。

 

そんなことがあったからなのか、保育士である義妹は、いわゆる難しい子、グレーゾーン、発達障害などの疑いがある園児を見ると、保護者に健診のことや、加配申請などのことを話すらしい。いい顔をする保護者はほとんどいないらしく、義妹としてもやりたくないことではあるらしいけれど、自分と同じような後悔をしてほしくないという気持ちが大きいようだ。

 

発達障害や軽度知的障害、自閉症などの障害を認めたくない親は意外と多い。自閉症児について書かれた漫画を読むと、だいたい最初はそれだ。親が子の障害を認めたくないということに、一巻分くらい使われている。

親心に困る!<中>(障害児篇)に続きます。