いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

迷子に困る!<四>(自閉症児篇)<発見された長女はニコニコしていた>

迷子に困る!<三>(自閉症児篇)の続きになります。

 

長女が行方不明になってしまったことは、いくつかの要因がある。名古屋にいたときには起きなかったことなのは、長女のやれることも少なかったというのもあるし、保育園が近かったというのもある。それに荷物もできるだけ少ない量にしてもらえていたから、長女の行動に対応もできていた。子供の成長に親はなかなか気がつけないもので、ついつい、大丈夫だろう、などと思ってしまうこともある。そんなとき、周囲の配慮によって助けてもらっていたりするのだろう。僕らは多くの人に、そして行政に助けてもらって、どうにか育児をしている。

 

困ったことがった。

 

僕らの落ち度もある。

 

長女が軽度知的障害で、自閉症だということは、少なくとも僕らは知っているし、そのために各所に配慮をお願いしてきたし、僕らにできることは精一杯しているつもりだった。しかし、これは親の欲目みたいなものか、日々成長する長女を見ながら、「もう健常児と同じくらいとまではいかないにしても、障害があるようには思えないかもしれない」と、障害児の親が日々思うような妙な希望的観測のようなものがあって、そういったちょっぴり切ない思いが僕らの目を曇らせてしまったのだろう。

 

心配しすぎな僕と、多少豪快な妻の認識の相違もある。

 

心配しすぎな僕は、長女から「分かってる」「ちゃんとやってる」「できる」と言われてしまう。長女が成長してきたということを、僕が理解できていない場面が増えている。妻の場合は、長女の成長を信じて、できるだけ自分でできるように促している。僕と妻でも意見の衝突があるため、たまに長女の成長に対する話し合いをしている。その中で、僕が少し心配しすぎかもしれない、というのが話し合いの結果だった。我が家の長女への方針は、もう少し長女の自発性を重んじようということになっていた。そのタイミングで、長女の行方不明が起きてしまった。

 

妻はとても落ち込んでいた。妻からすれば、僕がお迎えのときには起きないこと、というのがあった。僕へ心配しすぎだと言ったことを、申し訳ないと言っていた。これはとても難しい問題だと思った。

 

妻は、自閉症児が突然いなくなってしまうことは典型的な行動であることを知っていたにも関わらず、つい、長女は大丈夫と思うようになってしまったと言っていた。僕の場合は、家の庭ですら、長女から目を離さないけれど、妻はそのくらい大丈夫だと思うようになっていた。それくらい、長女の成長は、これまでの療育や保育園でのフォローもあって順調だったというのもある。しかし、実際には、突然いなくなってしまった。このことがショックだった。その日から、妻と長女の関係は少しぎこちない。妻は長女とどう接していいのか、ちょっと分からなくなってしまったのかもしれない。

 

長女に、その日のことを何度か聞いてみた。

 

引っ越してきたときに、子供たちにプレゼントを買った。次女と三女はレミンちゃんを買って、長女は、それよりも高額なベイビーアライブを買った。「レミンちゃんにしなくてもいいの?」と長女に聞くと、「喋る赤ちゃんが欲しい」ということで、引越し記念でレミンちゃんの3倍の値段のベイビーアライブを買った。しかし、それは三姉妹で遊んでいると、長女だけレミンちゃんがないという事態を招く。長女はレミンちゃんが欲しくなった。そんな理由から、1人でおもちゃ屋さんにレミンちゃんを見に行ったらしい。

 

「1人で行っても買えないよね」

 

「でも欲しかったの」

 

「パパかママも一緒にいないと買えないよね」

 

「一緒に行っても買ってもらえない」

 

確かにそうだった。ベイビーアライブを買ったため、長女からレミンちゃんが欲しいと言われても、「ベイビーアライブ買ったでしょ」と言って、長女にレミンちゃんは買わなかったことがあった。長女は市役所よりも論理的だった。

 

「どうやってお店まで行ったの? お友達がいたの?」

 

「1人で行けれるよ(長女は行けると言えない)。信号が青になったから、ピッ(手を挙げること)したよ」

 

「車はちゃんと停まってたの?」

 

「停まってくれてありがとうした」

 

エスカレーターは1人で登ったの?」

 

「階段(エスカレーターのこと)、1人で行けれるよ」

 

「1人で怖くなかったの?」

 

この質問に長女は答えず、「パパ好きー」と言って誤魔化していた。

 

長女の迷子は、いくつかの要素が絡んでいる。一つ一つは小さい問題なのだけれども、その一つ一つに対策をとる必要があるのかもしれない。レミンちゃんを買えばいいということでもない。長女は来年、小学生になる。小学生になると1人で行動することも増える。ランドセルを注文したときにGPSのキーホルダーも同時に注文していた。GPSのキーホルダーだけじゃなく、他にも地域の人に覚えてもらうとか、そういうことが必要なのかもしれない。市役所があてにならないのだから、自分たちでどうにかするしかない。