いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

迷子に困る!<一>(自閉症児篇)<軽度知的障害の難しさ>

自閉症児が迷子になりやすいのは知っていたはずなのに」(長女5歳9ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

軽度知的障害の自閉症児を育てていると、「うちの子、もう普通の子とあまり変わらないんじゃないの?」と思うことがある。そして、その後の検査などで、やはり知的な遅れや自閉症の症状などが指摘される。

 

こんなことの繰り返しだ。

 

長女は、1歳過ぎからアメリカで早期介入という発達障害自閉症児へのプログラムを受けていた。言語認識能力が低くても、それに変わる認識能力を伸ばそうとしてくれたり、親だけでは難しい偏食のトレーニングや、育児の悩みを相談したり、病院にも付き添ってくれる、そんな福祉サービスだった。

 

帰国してからも、療育に通っていた。療育には長女より症状の重い子もたくさんいるので、療育の中では、長女の軽度知的障害や自閉症はあまり目立たない。保護者同伴の療育にいると、長女はもしかしたら障害児じゃないのかも? と思うこともある。

 

しかし、療育の先生からすれば、長女も立派な、というのも変だけれども、長女は、健常児でもなければ、発達障害でもなく、軽度知的障害で自閉症児であることに疑いはない。

 

長女はおとなしい性格だ。1人でお絵描きをしているのが大好きだ。たまに友達と走り回ったりもしているけれど、鬼ごっこのルールすらよく分からない。前にいた保育園では、鬼ごっこや色鬼とか、そんな遊びをお友達と仲良くしているかと思ったら、お友達の多くは、長女にはルールが理解できていないことを責めることもなく、ルール無用の長女を、昔でいうお豆とかお味噌として扱っていた。

 

このような扱いが自然に行われていたのは、長女が通っていた保育園の担任の先生が、長女の障害を理解し、お友達と衝突しないようにしてくれていたからだと思う。以前に書いたけれど、そんなふうに大切に扱っていただいても、子供同士のちょっとしたイザコザは起こる。しかし、僕が子供の頃のことを思い出せば、鬼ごっこのルールすら理解できない同級生とは遊びたくないと思っていたのだから、今の子供たちは多様性の社会に対して僕らの世代より、よっぽど理解力があるのかもしれない。

 

お友達と比べてみると、言葉などの言語的な知的能力には差が生まれているが、トイレに行くことや、お着替えなどは、同じようにできるようになってきた。また、長女は子供部屋で妹たちと寝ていることなどは、他のお友達からも尊敬されているようで、お母さんと一緒に寝ていないことを自慢しているらしい。それに絵や工作は上手なので、ここだけは一丁前に、他の子の絵のどんな部分が上手いのか、他の子の工作物の面白かった部分などを批評家のように教えてくれることもある。

 

言語認識能力を除けば、感情面は多少、多感なところはあるけれども、それ以外はいたって普通のように見える。人見知りすることもなく挨拶もする。ただこの挨拶は、人だけじゃなく、草花や虫にもしていることは、僕と妻くらいしかしらない。草花に挨拶する長女の真似を妹たちがたまにしていたけれど、先日、次女が「なんで、お花にこんにちはするんだろうね」と言っていた。長女が少しおかしいことに妹たちも気がつきはじめた。

 

長女は一度覚えたルールはキチンやる。道路の点字ブロックのことを聞かれたので、「目の見えない人が、ここを歩いて道に迷わないようにしているんだよ」と教えると、長女は、目の見えない人しか点字ブロックの上に立ってはいけないと学習してしまった。そのため、僕や妹たちが点字ブロックの上に立つと、長女に指摘される。

 

他にも信号を守ることを教えたら、信号無視する人に注意するようになってしまった。これはこれで、いいことなんだけれども、何て言えばいいのか分からなくなる。巣鴨の交差点にあった横断幕を思い出す。孫がじいじかばあばの手を引いて信号無視を止める横断幕だ。僕が子供の頃は、大人たちがよく信号無視をしていたと思う。そんな大人たちは、もうじいさんばあさんになっている。僕が人通りや車通りのない道でも信号を守るようになったのはいつぐらいだろうか。信号無視してまで急ぐこともないと思うようになったというのもあるけれど、自分に気がつかないところで何かあったら、と思うようになったからかもしれない。

 

長女は慎重なところもあって、点字ブロック一つとっても不安になり、僕にいろいろと聞いてくるくらいなのだから、どこかのお店に入るにしても、少しびびってしまうことがある。ほんの二ヶ月くらい前には、エスカレーターを何度も利用しているにも関わらず、次女三女の手を握るために、僕の手が少し離れてしまったため、長女だけエスカレーターに乗ることができずに立ち止まってしまったということもあった。慌てて、次女と三女を抱っこして、長女の手をとりにエスカレーターを逆走した。

 

迷子に困る!<二>(自閉症児篇)に続きます。