いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

カニカマに困る!(ボストン篇)<長女のニューヨークグルメ>

ヘルズキッチンで何食べる?」(長女1歳4ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

僕はアメリカに行ったことがなかった。アメリカに用事もなかったからなんだけれども、アメリカに用事があって行く人もそんなにいないかもしれない。旅行が苦手だから仕事でもないと国内旅行ですら行きたくなかった。

 

いわゆる出不精というやつ。

 

そんな僕でも仕事柄、いろんなところに行った。日本では北海道から九州まで、四国も行ったし、北陸も行った。都道府県全てには行けてないし、沖縄は少し憧れている。慣れない土地は行けば行ったで面白く、いつも満喫していた。日本だと高知が気に入った。高知の人からは珍しがられた。高知は住みたいと思ったくらい。

 

アメリカに住んでいるのだから、旅行などにも行きたいと思っていた。妻の仕事でペンシルバニア州フィラデルフィアに行って、フィラデルフィアが気に入った。ボストンよりも感じがいい。「ボストンは差別的だろ?」とウーバーの兄ちゃんに言われたりもした。

 

次はニューヨークに行ってみたいと思った。

 

小学2年生か3年生の頃、授業で色々な国の首都を当てるというのがあった。僕は地球儀とそれに付属していた本を良く読んでいたし、なるほどザ・ワールドが好きだったということもあり、世界各国の首都や人口、広さに詳しかった。「研究」と書いたノートを作って書いていたくらい。

 

アメリカの首都はどこですか?」という先生の質問に、「ニューヨーク!」と元気に答える同級生。それを尻目に「ワシントンです」と僕は答えた。先生は「ブブー」と不正解を示し、正解は「ワシントンD.C.」ですと言った。博士キャラに転身しようとしていた僕はすっかりしょげてしまって、元の問題児のままだった。

 

今からすれば、先生のジャッジは少し意地悪だと思う。アメリカにしても、「D.C.」か「ワシントン」で大体通じるし、そもそもの質問もその形式で言うならば、「アメリカ合衆国」と言わなければ、北米も南米も合わせたアメリカ大陸になってしまうだろう。昭和の小学校の先生はこういういやな感じの教師がたまにいた。

 

そんな思い出があったからというわけでもないけど、ニューヨークに行きたいと思った。ニューヨーク市と言わなければ不正解にされてしまうかもしれない。僕はほんとしつこい。

 

仕事仲間がニューヨークに来るということもあって、日にちを合わせて僕たちもニューヨークに行くことにした。娘のために持ち運びができるベビーチェアを買った。ベビーチェアはオムツやお尻拭きも入れることができる優れもので、1歳児の旅行には便利だった。レストランはもとより電車の中でも使える。レストランのベビーチェアがとても汚いことがあるのは、前回のフィラデルフィアで学習したことだった。

 

宿泊先はニューヨークのマンハッタン島の中にあるヘルズキッチンという場所で、昔は治安が悪いところで有名だったらしいけど、今ではレストランも多く並ぶ少しオシャレな感じのところだった。ニューヨークに住んでいる人からは「いいところに泊まりましたね」と言われた。

 

妻と子供を友人たちに紹介したり、アメリカの友人から紹介されていた人に会ったりしていた。今回の旅は僕が主役みたいな感じになってしまったので、妻に子供を任せることが多かった。

 

ニューヨークの夜は毎日、友人などと過ごしてしまったけれど、朝から午後までは妻と子供と一緒だった。セントラルパークにも行った。

 

長女はもう離乳食の段階から少し進んで柔らかいものであれば結構食べられるようになっていた。アレルギーのチェックもあれこれとやっていたので、旅先でも口に入れていいものは増えていた。

 

しかし、アレルギーがないから食べられるというわけではない。次には好き嫌いというのもある。長女は離乳食の段階が進んでも、パウチタイプの離乳食が好きだった。ドラッグストアに行けば売っているので、これはこれで楽ではあるんだけど、普段はほとんど行かないレストランの食べ物も食べて欲しいとか思ってしまった。

 

長女はうどんなら比較的食べる。ヘルズキッチンの日本料理のお店に入ってみた。考えてみたら、ボストンで日本料理のレストランに入ったことはなかった。そこでうどんがあったので、うどんを注文した。他には妻の好きな海鮮系のものを頼んで、僕はとんかつか何かを食べたような気がする。

 

海鮮の何かにカニカマがついてきた。長女がカニカマに興味を示して、手にとって口に入れた。気に入ったようだ。カニカマを食べ尽くして、もっと欲しいとアッピールしている。短く切ったうどんを手にとって投げ捨てていた。

 

店の人に相談してみた。

 

カニカマだけって注文できますか?」

 

「メニューにはありません」

 

「子供がカニカマを気に入ってしまったようで、カニカマだけ食べたいみたいなんです」

 

こういうときはアメリカだ。子供に優しい。OKという感じでカニカマだけのお皿を持ってきてくれた。なんだか綺麗にカットされている。

 

長女はカニカマをすごい勢いで食べた。下にこぼしたりもしたけれど、すぐに食べ終わった。もっと欲しいということでおかわりをお願いした。2皿目も食べてしまった。

 

店員さんの方をチラリと見るとテーブルに近寄ってきた。「もうカニカマはありません」と笑いながら言っていた。そうだろうと思った。長女もさすがに満足した感じだった。お会計をしてみると、カニカマは一皿で10ドル以上だった。カニカマに10ドル以上、日本円で1000円を超える。しかし、ここはヘルズキッチン、日本の居酒屋チェーンではない。床にこぼしたカニカマだけでも2ドル分くらいにはなりそうな気がした。

 

「ボストンに戻ったら、カニカマを買おう」

 

ボストンの韓国系スーパーマーケットでカニカマを見つけた。長女にあげると一口も食べなかった。ヘルズキッチンカニカマは何かが違っていたのか、または旅が長女を変なテンションにしてたのか、それは分からない。