いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

嘘に困る!<4>(自閉症児篇)<音読が苦手な長女の小さな嘘>

嘘に困る!<3>(自閉症児篇)の続きになります。

 

嘘がつけない長女が、嘘が得意な三女の真似をして嘘をつくようになった。それ自体は、長女の言語的な成長であるとも思えたけれども、どこか、嘘という能力と本人の成長がチグハグなような印象があった。長女は自分のための嘘をついているというより、嘘の真似をしているという感じだったからかもしれない。

 

そんな長女が、自分の状況から逃れるためについた嘘がある。それを僕は、長女のオリジナルの嘘だと思った。その嘘には、嘘とただ叱るのではなく、なぜ、長女がそのような嘘をついたのか、と探る必要があるようにも思った。長女がついた嘘は、音読の宿題から逃れるための嘘だった。

 

困ったことがあった。

 

長女は絵本が読めない子供だった。保育園では貸し出しの絵本というのが毎週あったけれども、同じ絵本ばかり借りてきて、そして一度も開かないで返却するということが繰り返されていた。絵本という物には興味があるようだけれども、開いて読むということはあまり好きではないようだった。物語が嫌いというより、これも言語認識能力の低さが原因だと思うけれど、運動が苦手な子が周囲の子と比べて運動ができないことから運動を嫌がるように、言語認識能力の低い長女にとって、絵本がすらすら読めないことが絵本に対する苦手意識みたいになったのかもしれない。絵本自体が嫌いではないのは、僕や妻が読み聞かせみたいにすると喜んで聞いて、質問もしてくるのだから、絵本というよりも、自分で字を読むということに抵抗があるようにも思える。僕自身、絵本を読まない子だったし、字を知らずに小学校に入ったということもあって、本をすすんで読むようになったのは、小学校高学年になってからで、それまでは本を読むことが嫌だったという記憶がある。それは結局、本をすらすら読む子と比較されることが嫌だったというだけかもしれない。

 

音読が苦手なら、なおさら練習して読めばいい、と思う人も多いと思う。僕もそうは思っている。だから、長女が宿題の音読をするときには一緒に机に座って、長女の音読を聞いている。しかしそれが嫌だったのか、長女は、「今日は自分お部屋で宿題をする」と言って、計算プリントをやって、音読をせずに、「宿題は終わった。音読もしたよ」という嘘をついてしまった。この嘘は何回か繰り返された。

 

さて困った。

 

宿題に熱心に取り組んでいる長女の姿を僕は知っている。学校も楽しんでいる長女の姿も知っている。勉強が嫌いなわけでもない。が、音読はいやみたいだ。音読をする長女を見ていると、ひとつひとつの文字を指で指して、一言一言をバラバラに読んでいる。そのような読み方は正確かもしれないが、文章としての意味を把握することは難しい。長女が音読を嫌うのは、意味が把握できない作業を繰り返しやらされているからだとも思う。しかし、意味がわかるように文章で読もうとすると、違う言葉になっていたりする。隣の文章が途中で混入することもある。文章を読むということが苦手なのだろう。

 

長女が音読の宿題は今日ない、という嘘をついて、計算プリントのみが宿題だとして、プリントを終えて、宿題が終わったと言った。その日は、宿題が終わったら、長女のお友達がうちに遊びにくることになっていた。友達を待つ間に、長女の連絡帳を見ると、長女の字で「しゅくだい ぷりんと おんどく」と書いてあった。長女にそのことを指摘して、音読をしはじめたときに、お友達が遊びにきてしまった。玄関で僕が長女のお友達を招き入れていると、長女の音読が聞こえてきた。お友達が長女の近くに行っても、長女は律儀に音読をやめなかった。すると、お友達が、「私、音読上手いんだよ。まだここやってるの? これならもう全部覚えちゃったよ」と言った。長女はキョトンとしていた。そう、実は、長女も、その箇所は暗唱ならできるのだ。ただ、音読になるとたどたどしくなるというだけなのだ。しかし、そのお友達の態度を見ていると、長女が音読を嫌がる理由も分からなくもなかった。

 

その子は、長女のお友達ではあるけれども、いわゆるマウント癖がある子だった。長女はそういうマウント癖のある子に好かれるところがある。大人でもマウント癖がある人は嫌われるというか友達が少ないことが多い。それは保育園児でもそうだ。引っ越しが多かった長女は転園で保育園に入ることが多く、そうすると、長女と仲良くなる子は、その保育園のクラスで孤立している子だったりする。なぜ孤立している子だったか僕がわかるかというと、あとになって、孤立していた子の保護者さんから「長女ちゃんと会うまで保育園に仲の良いお友達ができなかったんですよ」と言われることが毎回のように言われるからだ。そのため僕は僕で長女の仲の良いお友達の傾向を考えることになったというのがある。その傾向は、マウント癖のある子だった。実は、これは長女に限った話ではなく、僕も人から、マウント癖のある人とよく友人でいられるね、と言われることが多々ある。その理由は、僕も長女もマウントというのがよく分からず、マウントとられているのに、「すごいねー」とか「そうなんだー」と素直に感心して聞いてしまうことがあるからだろう。

 

嘘に困る!<5>(自閉症児篇)に続きます。