いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

妊活に困る!(東京篇)<僕らの妊活はすぐだった>

「僕らの家族計画」(妻妊娠)

 

困ったことがあった。

 

僕は日本にいるのが嫌だった。妻と結婚する前に身辺がゴタゴタして顔面にチックが現れたり、睡眠障害がひどくなり1日3時間も眠れなくなっていた。どこか遠くに行きたいと思っていた頃に、妻と結婚した。

 

結婚後も身辺のゴタゴタは続き、仕事関係でも不信感が募ってしまって、本業を辞めようかとも思った。当時、いくつか副業もあった。その中の一つだったコールセンターに本腰を入れるつもりで、面接に行って採用された。給料もそこそこ良かったし、心身疲弊している状態のときに、会ったこともない人の声を聞くのは、お客さんとはいえ、僕には癒しになっていた。僕は知らない人と話すと元気なるところがある。

 

コールセンターの職場には渡米のことも話していた。渡米ギリギリまで働く予定になっていた。帰国後も働いて欲しいとも言われていたこともあって、職場はそれなりに気に入っていた。

 

コールセンターの仕事は深夜勤務もあるし、土日、祝日もある。人手がいないときには駆り出される。超過勤務もざらだけれども、超過分の給料はおいしいというのもあって、独り身だったらガンガンと働いていたかもしれない。若い頃は、超過勤務や休日出勤のある仕事を選んだものだった。

 

しかし、もう若くなかった。人と話すのは気が晴れて楽しいとはいえ、仕事は仕事で疲弊していた。職場の人間関係はそこまで深くはなかったけれども、僕が知らないところでうごめいている人間関係の糸も見えてきたりして、少し居づらい気持ちもしてきた。

 

僕がその職場に雇われたのは、両親の介護と自身の病気で休んでいる人の代わりだったみたいだ。後釜だ。その人は職場に復帰したいようなしたくないようなところがあって、職場にもちょくちょく電話がかかってくるらしい。僕に与えられた机にはその人の持ち物が少し残っていて、どうしたらいいのか分からないまま放置されていた。そして僕の持ち物が置けなくなる。

 

職場の人たちと仲良くなると、その病欠の人を同情する人と、批判する人がいて、どうやら僕の存在が、その問題を浮上させてしまったようだ。やりにくくなってきた。僕が採用されたのは、渡米する予定があったからかもしれない。病気で休んでいる人が復活するまでの繋ぎ役としてちょうど良かったみたいだ。

 

なんとなく事情が分かってきた。そして、その仕事のおかげで、僕は元気になってきた。「仕事に打ち込んで元気になるなんて羨ましいです」と、働く気力がなくなってちょくちょく仕事をやめてしまう友人から言われた。

 

元気になった。だけど仕事は辞めた。病院に通っていたわけでもないのにおかしな話だ。仕事をやめたのは、職場での僕の居場所の微妙さとやりにくさ、一部の人からの風当たりの強さもあったけど、それだけじゃない。元気になったことから、妻との生活や将来のことを積極的に考えることになったというのがある。

 

コールセンターの仕事は深夜勤務もあるし、土日祝日も働くことになる。平日の9-17の仕事をしている妻とはすれ違いにもなる。夫婦にとってあまり好ましいことでもない。そして、妻からは日本にいる間に子供を産みたいと言われた。

 

妊活のために仕事をやめることにした。本業をやめて、本腰を入れようと思っていた仕事だけれども、やはり副業の気楽さというか、その仕事のために10年、20年と積み上げてきたものがあるわけでもない。であれば、いっときの人間関係でやめようとしていた本業を捨てずに、収入は減ったとしても本業一本でやる方がいいし、その方が妊娠から出産を考えたとき、僕の動ける時間も増える。

 

妊活については、僕も妻も何年も妊活している友人がいるから、その困難さも分かっているつもりだった。子供ができなかったら、無理をしないようにしようと話し合って、妊活の基本を調べながら2人で行った。

 

幸いにも、妊活をはじめて3ヶ月くらいで妻は妊娠した。5年の妊活で子供を授かった友人に話すと、「ラッキーだ!」と喜んでくれた。少し申し訳ない気もした。

 

妻の妊娠中に僕がいろいろとできたのは、副業をやめていたからだと思う。渡米ギリギリまでコールセンターで働いていたら、お金の心配はなかったかもしれないけど、妻の妊娠生活は孤独だったかもしれないし、その後の育児で2人とも疲弊しきってしまったかもしれない。

 

生活や計画は何が正解か分からない。収入は激減したけど、妊活はうまくいった。本業の仕事は少なかったけれど、妻の負担も少ない妊娠生活が送れた。渡米も僕にとっては希望でしかなかった。公私共にいやになってしまった人間関係を断ち切ることができる。

 

アメリカに行ったら行ったで、また落ち込むことになるけど、それは育児と糖尿病治療を頑張りすぎたことが原因だった。

 

逃げたり、辞めたりすることは、ときには必要なことかもしれない。妊娠や出産は、ネガティブに思えわれがちな行為をポジティブな行為に変えてくれる。