いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

嘘に困る!<5>(自閉症児篇)<マウントと嘘>

嘘に困る!<4>(自閉症児篇)の続きになります。

 

長女の嘘は、音読の宿題がしたくない、という理由があった。では、なぜ音読の宿題がやりたくないかといえば、音読が苦手だからだ、ということになる。言語認識能力が低い長女は、保育園でも小学校でも、他の同級生と比べて、音読の能力が低い。話すことは多少は以前に比べれば、お友達ともそれなりにできているけれども、音読なると難しいようだ。字を目で追って、それを正確に発語する。この二つを同時にやろうとすると、一文のまとまりで読み上げることができない。また、語彙理解も低いため、単語の意味を理解するのが少し遅い。そんな長女の音読は、たどたどしく、意味を理解している読み方にはなっていない。

 

長女は一生懸命、音読に取り組んでいたり、何度も読むことで、暗唱ができるようにはなっている。「おおきなかぶ」などの定番は、学校から帰ってきて、僕に暗唱を聞かせてくれることもある。長女は、「孫」と「ねずみ」が好きなようだった。小さいモノが何かをしていることに興味があるのだろう。

 

そんな長女のゆっくりした発達に対して、自分はもっとできるとアッピールするお友達も出てくる。普段は、お友達のマウントに対して、その場でも、家に帰ってからも、「〇〇ちゃん、すごいんだよ」と言う長女も、苦手な音読に関しては、そのような素直な感心ができないようだ。きっと、お友達のマウントが嫌だ、というよりも、音読自体が嫌だ、という気持ちが勝っているのだろう。それが、長女の嘘を生んだような気もする。

 

困ったことがあった。

 

マウントに鈍感とはいえ、自分が嫌なことや、やりたくないことなどでマウントを取られると、「すごいねー」という感想の前に、「やりたくない」という気持ちが先行してしまう。自分がやりたいことで、よりすごい人をみると、素直に尊敬できるけれど、自分がやりたくないことで、マウント?みたいなことをされると、「じゃあ、やって」と言いたくなってしまう。遊びであればそれもできるけれど、宿題はそうはいかない。ただただ、そのやらなければならないことがやりたくなくなってしまう、ということになる。長女が音読もそうだけれども、文章を読むことを嫌がるのは、言語認識能力だけでなく、そういったことが何度かあったのかもしれない。

 

そう考えると、長女の嘘にも理由があるようにも思える。もちろん、これらは僕が考えすぎているだけで、なんでもない、よくある、サボるための嘘でしかない、ということもあるだろう。ただ、長女の周辺環境や、障害特性などから僕が想像しているだけにすぎない。そんな長女の背景を想像すると、この嘘は、ある意味で自己防衛的な嘘でもある。嘘にもいくつか種類があると思うけれど、自己防衛的な嘘に関して、僕は寛容というか、必要な嘘もあると思うことがある。そのような嘘をつかせてしまう環境や状況の方に問題があると思っている。とはいえ、この自己防衛的な嘘もなかなか厄介だ。

 

子供たちの嘘を見ていると、自分が被害者、あるいは被害者になるかもしれないと想定する故の嘘、というのがある。簡単に言えば、「怒られるから嘘をついた」というものだ。いたずらしたから怒られるわけだけれども、怒られるときには本人は被害者のような状態になる。怒られるということに対して自己防衛的な嘘をつく、ということになる。まあ、これは子供だけでなくても、大人たちにもよく見られる嘘のタイプだ。このような嘘は、もう歯止めが効かない。どんなときにでも、責められることに対して、防衛するために嘘をつく。どれだけ悪いことをしても、責められる方が被害者だ、というような論理のすり替えを自分の中で行う。子供であれば、それがわかりやすいし、子供のうちに、そういうすり替えは、よくない結果を招くということを伝えておきたいと僕は思っている。

 

長女の自己防衛的な嘘に関しても、必要な、妥当な自己防衛的嘘と、責任や義務を伴うことから逃げるための嘘を区別しなければならないと思っている。

 

さて、長女の嘘に対して、僕はどうすればいいのだろうか。三女の嘘に関しては、「嘘をついたこと」の方が怒られるという方針を立てた。しかし、長女の場合は、自分を守るための嘘かもしれない。言語的発達が遅れ、軽度知的障害でもある長女がお友達だけでなく、社会から身を守るためについた嘘は、ひとつの成長の段階とも思える。

 

嘘に困る!<6>(自閉症児篇)に続きます。