いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

代理店に困る!<2>(ボストン篇)<服は必要だから着るだけなのだろうか?>

代理店に困る!<1>(ボストン篇)の続きになります。

 

突然、服の話をしはじめてしまった。読書くらいしか趣味がなった僕なのに、アメリカで育児をして帰国すると突然、服好きになってしまったものだから、帰国して知り合いに会うと不思議がられたものだ。わけを話すとちょっと複雑な顔をされる。友人に複雑な顔をされてしまうような僕と服との関係をちょっと書いてみようと思ったら思いの外長くなってしまった。

 

困ったことがあった。

 

渡米前に、糖尿病であることがわかった。アメリカでは徹底的な食事療法をやってみた。すると、体重が30キロ近く落ちてしまって、それまでの服、とくにズボンがブカブカになってしまった。服を買いに行くことにした。近所といっても歩けば1時間近くかかるところに、アウトレットモールみたいなところがあった。アッセンブリローという駅で、たしかオレンジラインだ。ブルックスブラザーズやババナリパブリック、ラルフローレンなど僕でも聞いたことがあるブランドのアウトレットが集まっている。ナイキやアディダスもあった。アウトレットだからなのか、服も靴もとても安かった。30キロ近く体重が落ちたことはあまり喜べることでもなかった。ちょっと落としすぎてしまった。急に痩せすぎたからなのか、単に栄養不足になっていたのか分からないが、30キロ減量した当時、起きると疲れていた。これはまずいと思って、少し体重を増やす予定でもあった。

 

激しい減量でウエストが細くなってしまったから、それまで履いていたズボンはベルトでめいっぱい絞めないとずり落ちてしまう。ちょうどいいサイズのズボンを買おうとは思うけれども、それはそれで体重を少し戻したときには履けなくなるかもしれないし、もしかしたら、体重は戻らないかもしれない。服は買いたいけれども、自分の体重がどうなるのか分からない。ベストだと言われている体重にするには、あと10キロは増やす必要があった。となると、痩せきった僕のウエストでズボンを買うと、ベスト体重になったときに今度は履けなくなる。インチ表記にすると、痩せた僕に適切なサイズは、ズボンも個体差があるので、28から30インチだった。しかし、ベスト体重になると、ウエストは32インチから34インチとなる。ちなみに、身長は180センチだ。痩せた状態でズボンを買うと、ベストな体重になったときに履けないのは分かっていた。しかし、そんな痩せた状態は今度もないだろうから、痩せた状態の思い出ということも含めて、痩せた状態のズボンを買ってみるのもいいんじゃないか? などと思った。

 

アウトレットのバナリパで、70%だか80%オフだかのズボンを2本ほど買った。そうそう、このアッセンブリローのアウトレットには子供服のアウトレットもあって、長女の服もそこそこ買った。妻は僕と一緒で、服に興味がない青春を過ごしてしまったというのもあるのか、ほとんど買っていなかった。いまの円安を考えると、当時は1ドル100円程度だったから気にせずに、安いと思って買えたのかもしれない。

 

では、このアウトレット体験から、服が好きになったのかというと、そうでもない。ただ必要だから買っただけで、何が好きとかそんなものはとくになく、必要だったから、そして安かったから買ったというものだった。

 

服が好きになるのはまた別のきっかけがある。

 

アメリカに来てやっていたのは、糖尿病治療だけでなく、メインは育児だった。毎日、乳児の世話をしていた。妻はボストンにも居場所があるけれど、帯同者である僕には所属先もなければ友人もいなかった。異国の地で家事と乳児の育児に追われていると、どんどん塞ぎ込んでいってしまう僕がいた。きっと、糖尿病治療で、甘いものを食べなくなっていたというのもあるだろう。僕は甘い物が大好きだったけれど、食事制限で甘い物はほとんど食べなくなっていた。米やうどんも好きだったのに、これも食べなくなっていた。家事と育児と食事制限で、僕はなんだか追い詰められた。

 

きっと、育児ノイローゼというやつだったのだろう。深夜に泣き止まない乳児を抱っこしながら、ずっと遠くの景色を眺めていた。ボストンの郊外は高い建物があまりない。そのため、僕らが住んでいた4階くらいになると、結構、遠くまでの景色が見える。そして遠くをずっと見ても、山らしい山もなく、ずっと続いていくようなボストンから西の景色に僕はだんだん憧れを持つようになっていった。いつか、遠くに行きたいとか思うようになっていた。

 

代理店に困る!<3>(ボストン篇)に続きます。