いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

お泊まり客に困る!<1>(ボストン篇)<乳幼児の育児をしている家庭に泊まってはいけない>

「助け合いは必要だと思うし、助けたいけれども」(長女1歳7ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

僕は昔から人が自分の家に泊まることに抵抗がない方だ。多少神経質でもあるので、汚くされたりするのはイヤだけれども、人が泊まれば多少は汚くなることは承知の上というのもあるのか、友人などが泊まっているときには、多少の汚れや散らかりは気にならない。1日や2日程度であればいつも通りにできないということで少しはストレスに感じることがあったとしても、お客がいる楽しさの方が優るものだ。

 

俗に「孫は来て嬉しい帰って嬉しい」というらしい。まだ孫のいる年ではないけれども、目に入れても痛くないと思えるような孫であってもそうなのだから、いわんや孫でもない友人や知人の場合だと、帰って嬉しいというのがあるかもしれない。ましてや長逗留のお客となれば、これまた「客と魚は3日目には臭う」というらしいが、ちゃんと客間がある家であればまだしも、家族だけでぎゅーぎゅーの家だったり、在宅ワークがメインだったり、乳児がいる家だったりすると、3日はさすがに限界だな、という気もする。

 

ボストンにいるとき、何度か「泊まりたい」ということを言われた。乳児育児中というのもあって宿泊はお断りしていた。妻の友人で事情があって10日くらい泊まっていた人もいたけれど、この人はちょっと例外としておこう。例外といっても、「臭う」「臭わない」の例外でなく、仕方なく止めざるを得なかったという意味で例外だった。

 

話がちょっと逸れてしまうけれど、ボストンだけでなく、これはきっとアメリカに根付いている考えなのかもしれないけれど、とても困っている人に対して親身であるというのがある。日本にいると、困っている人は自己責任みたいな感じで思われることが多いように思う。この自己責任にしてもずいぶん昔に言われたもので、そのときは、自己責任はアメリカ流という感じだった気もする。実際にアメリカに住んでみると、日本での自己責任とアメリカの自己責任は少し違うような気がした。アメリカでは保険なども含めて自己責任が多い。しかし、自己責任であるが故にどうにもならなくなって誰かの助けを必要とするくらい困ってしまう人も結構いる。そのため自己責任的な世の中で躓いてしまった人に対して、明日は我が身じゃないけど、自分も昔困ったことがあって助けてもらったことがある、みたいな感じで手を差し伸べる人が多いようにも思うし、行政などによる福祉サービスをする人たちからも、そんな言葉をかけられる。「私も昔、困ったことがあるから気持ちは分かる」みたいなことが普通のやりとりとなっている。困ったことというのは、保険料を払えなくて治療が受けられないとか、家賃が払えなくてホームレスになったとか、仕事がなくて食料が買えないとか、そんなことだ。日本でも「私も昔、」という感じで助けてくれる人もいるかもしれないけれど、アメリカの場合は、そういう助け方が目立っていたように思う。自己責任の国だからこそ、自己責任の結果、うまくいかなかった人に対して寛容なのかもしれない。

 

長逗留した妻の友人も、そういう意味で困窮した状態にあった。あまりアメリカ的な考えを持っていない僕からすると、自己責任とまでは言わないにしても、ボストンで制度を都合よく使って実力に不釣り合いなステップアップを無理矢理やって、一つでも踏み外せば何もなくなってしまうような綱渡りにしか思えない形で出世を望む妻の友人のやり方に批判的だったというのもあって、実際に妻の友人が躓き困窮したときには、ざまあみろ、とまでは思わないにしても、やっぱりなあ、という気持ちになった。同情はするし、助けようとは思うが、なんというのか、不正が発覚した人を見るような気持ちでもあった。ボストンにはそういう意味で世界中から実力不足なのにあの手この手をつかってステップアップを目論んでいる人が集まる。僕が詳しいジャンルの場合は、その人たちの実力不足っぷりが分かることもある。所属しているところが世界的に名を知られている大学であっても、初歩もいいところだな、実力不足だなという感じの人もいる。その人を擁護するわけではないが、実際そういう人は、自分の専門などを辞めてキャリアアップしやすい、入りやすい専門を選んでいたりする。それでうまいことモグリこんで、綱渡りとコネでいいポジションを手に入れている人もたくさんいる。しかし、一歩踏み外すとそこはもう自己責任の世界だ。またそういう人は誰かが座るべき席に無理矢理お尻をねじ込んでいることも多いので、助けてくれる人も少ない。僕はその方と争うようなポジションにいたわけでもないから、助けようと思うくらいはするけれども、ライバルたちからすれば、ざまあみろ、という感じすらあるだろう。シャーデンフロイデというやつだ。

 

お泊まり客に困る!<2>(ボストン篇)に続きます。