いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

問題の共有に困る!<1>(自閉症児篇)<自閉症児の物のトラブル>

「長女のスカートをお友達が履いている」(長女6歳2ヶ月、双子4歳1ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

以前から、長女の周辺では物に対するトラブルがときどき起こっていた。このトラブルは姉妹間で起こっている分には、僕らが介入できるからいいとしても、長女のお友達と物の貸し借りや譲渡等の取引が行われているときには、事実関係の確認なども困難であることから介入が難しい。

 

長女が3歳くらいの頃は、保育園の物を持ってきてしまうことや、友達からもらったシールを持ってくることがあった。当時は、長女も発語できないということもあって、保育園に確認していた。誰からもらってきたのか聞いても長女は名前を言えないので、まずは仲良さそうにしているお友達とその保護者に聞いたりしていた。と言っても、長女が勝手に何かを持ってくることなどはほとんどなかった。保育園のオモチャを持ってきたのは一度だけだった。

 

長女は、物に対する執着がそんなに強いわけではない。服はいまでも同じ服ばかり着たがるし、お気に入りのヘアピンもあるし、オモチャも気に入っている物もあるが、そんなお気に入りの物であっても、三女から着たいと言われればお気に入りの服もあげてしまうし、ヘアピンにしても4歳のときにお友達に欲しいと言われてあげてしまった。オモチャも姉妹たちから欲しいと言われるとあげてしまう。

 

長女が分かっていないことがある。

 

いくら姉妹といえども、人にあげてしまったら、返してもらえない、ということがまだ理解できていない。長女は、人にあげるということと貸すことの区別がついていない。しかし、2歳年下の姉妹でも賃借と譲渡の違いは分かるものだから、この辺で揉め事が起こる。次女三女からすれば、長女から譲渡された物は、自分の物になり、自分の物であれば長女に貸すことを拒むことができるという理屈だ。もちろん、この理屈は、一般的な社会であれば正しい、正しいけれども、なんだか世知辛いなあ、という気持ちにさせる。

 

双子と言ってもそれぞれに違いがある。双子たちも4歳となり、だんだんと長女がどんな感じなのか分かるようになってきた。つまり、次女と三女が長女の物を欲しいといえば、長女は大体なんでもくれる、ということを知ってしまった。そしてその後、長女は、自分があげたものを返して欲しい、あるいは貸して欲しいと言ったときにも拒絶すれば長女が諦めて、1人でしくしく泣くか、気にしなくなることも知ってしまった。また、長女はこの賃借だか譲渡だかの取引内容を僕や妻に説明ができないことも、双子は知っている。

 

これには僕らもちょっと困ってしまった。次女三女が「長女がくれたから自分の物だ」という正当な主張に対して、さて、どうしたものか、ということになる。双子にはわかりきっている区別が長女には分からないということどう説明したらいいのだろうか。賃借と譲渡の区別がついてきた4歳児に、6歳児の長女は理解できていないことをどう説明したらいいのだろうか。

 

「長女ちゃんがあげると言っても、返してって言ってきたら、すぐに返すんだよ」

 

と、悩みながら次女三女に説明した。2人とも分かったような分からないような反応だった。しばらく様子を見てみると、どうやら、次女は、長女が言う「あげる」はシェアに近いことだということが分かったようだ。長女と次女ではトラブルは減り、互いのオモチャや服を交換している光景が何度も見掛けられて平和な世界がそこにはあった。おもちゃの部屋には、そんな長女の考え方を示すように、「共有の場」というのを作った。それと、今までよりも、明確に「それぞれの棚」というのも作った。この「それぞれの棚」は本人の許可なく触ってはいけないということになっている。

 

問題は長女と三女だった。三女は三女で理解はしているようだった。理解はしているけれども、やはり「もらったら自分の物」という気持ちが抑えられないようで、次女のようにはできない。それにこれは三女の問題でもあるけれども、三女は三女で欲しいという衝動が抑えられないタイプで、姉妹間での物のトラブルが絶えないのも三女だった。次女のオモチャやシールを黙ってとってしまって双子同士で揉めていることもある。次女が「貸してって言ってくれればいいんだよ」とこれまた正当な主張をしているのを何度も聞いた。三女はちょっとジャイアン気質で、「俺の物は俺の物、お前の物は俺の物」という感じがある。長女の「俺のお前の物、お前の物は俺の物」という自他の区別がつかない状態とはまた違った意味で自他の区別が難しいようだ。長女の棚を好き勝手にいじるのは三女だ。

 

そんな2人のトラブルが、最近、それぞれの形で出てしまった。次女だけが何事もない。

 

問題の共有に困る!<2>(自閉症児篇)に続きます。