いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

移住先に困る!<3>(自閉症児篇)<障害児や多胎児育児は市町村でかなり変わる>

移住先に困る!<2>(自閉症児篇)の続きです。

 

僕は移住先選びに失敗してしまった。失敗と言えるのは、何度も引越しをし、いくつもの市町村で障害児や多胎児に対する市町村の対応を味わってきたから言えることなんだと思う。いま住んでいる愛知県日進市における市役所の対応は、障害児や多胎児に対して厳しいものだった。市の総合計画や条例、要領なども読んで調べていたのに、結果的に、障害児や多胎児を育てにくい市に移住してしまった。失敗を嘆いても仕方ないが、他の方には失敗して欲しくないということもあって、この件に関して長々と書いている。参考までに、他の市区町村ではどうだったのか思い出してみよう。

 

困ったことがあった。

 

東京で結婚を機に引っ越したときには、夫婦2人だけということもあり、妻の職場や僕の仕事に都合の良さそうなところに引っ越した。僕ら夫婦は障害を持っているわけでもなく、お互いに仕事をしていたということもあって、区役所が行なっている出産や育児に対する施策などを調べもしなかった。どこどこの区は出産のときにいくら一時金が出る、出産祝いはなになにだとか、そんな程度でしか調べていなかった。もちろん、そのときの引っ越しでは、渡米することが決まっていたということもあって、それまでの腰掛けだったというのもある。帰国後にも友人などが比較的多いこの区に戻りたい気持ちはあるにはあったけれど、すでにそのときには、帰国後は名古屋に住むことがきまっていたということもあって、その区で子育てもしないから、保育園のことすら調べないまま渡米した。ちなみに、この区は子育てに人気がある区らしく、とくに教育熱心な家庭は妊娠や出産を契機に、この区に移住することもあるらしい。僕も比較的長くこの区とは関係があったけれども、理屈が通りやすい区なので税金の納入方法などでイレギュラーなことが起こっても話し合いですぐに解決した。そういえば知り合いもここ区役所に勤めていた。

 

ボストンでは、最初の市は2ヶ月で引っ越す予定だったということもあり、最初の市での行政サービスは無料の英会話くらいしか利用しなかった。そのあとに引っ越したサマービル市は長女の発達や様子がおかしいと友人に指摘され、友人の子どももケアを受けている市のサービスに申し込んだ。自閉症と医師に診断される前から、手厚いケアが無料でなされた。子どもへの支援はもちろんだけれど、僕ら保護者に対するケアも重視しているため、僕らも自閉症児というのもあるけれど、はじめての子どもかつ異国での育児に追い詰められていたのでとても助かった。

 

帰国して、東京郊外の市に引っ越してきた。この市は東京でもちょっと田舎というか、田舎を売りにして有名になったような市でもあったので、ボストンで受けたような行政からの自閉症児や多胎児への支援は期待していなかった。市が行なっている障害児や多胎児への施策というのも、どこの市でもやっているようなもので、となんか不満そうに書いてしまったけれど、ボストンのような手厚い地域と比べてしまうから、もう少し支援して欲しいと思ったというくらいのことであって、療育にしても、多胎児の交流会にしても当時はとても助かった。しかし、最も助かったのは、障害児用、多胎児用の支援ではなく、市役所の職員さんたちによる対応だった。保育園利用という障害児用、多胎児用の施策ではない者に対して、困難にならないように配慮してくださったことだった。保育園を利用する場合は、利用年度が始まる前年10月や11月に申し込み期間がある。この申し込みは海外からはできないということもあり、また、双子が生まれる直前ということもあって、僕だけでも一時帰国することも難しく、申し込みはできなかった。そんなことから、僕らは、海外からでも申し込みを受け入れてくれた認可外保育園を利用しながら、転園希望を出そうということにしていた。双子に関しては乳児クラスがないということもあって受け入れてもらえないため、帰国後はしばらく自宅育児となった。

 

なかなかややこしい状態になっていた。東京郊外の市役所に、僕らの状況や希望を相談したところ、親身になって相談に乗ってくれていた。「長女が認可保育園に転園希望、双子も乳児クラス希望、子ども3人が保育園に入れるまでは保護者が在宅ワークをしながら、双子の自宅育児をする」ちょうどコロナが騒がれ出した頃だった。市の職員さんは、僕らが大変な状態だということはすぐに理解してくれて、できるだけ早急に保育園に入れるようにしますと言ってくれた。そして、2ヶ月くらいで長女の転園先が決まり、双子も長女とは別園になるけれども保育園に入ることができた。このとき、双子が入れる保育園は空きが一つしかなかったらしいけれど、「双子ちゃんを別々にするわけにはいかないので、定員調整しました」と市の職員さんが言ってくれた。電話口だったけれど、抱きつきたくなった。いまでもあの職員さんと、その市には感謝している。

 

移住先に困る!<4>(自閉症児篇)に続きます。