いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

移住先に困る!<5>(自閉症児篇)<名古屋における障害児の育児を取り巻く環境>

移住先に困る!<4>(自閉症児篇)の続きです。

 

名古屋での障害児、多胎児の育児に関しては、名古屋市や区役所ではそれなりの配慮や支援がある。名古屋市になると、東京、大阪に並ぶ都市という矜持もあるからか、都市が抱える多様性のために障害児や発達障害に対する支援や施策をより充実させようとしている感じでもあった。一つの目安となる保育園の利用申し込みの利用調整においても、多胎児や障害児に対しては、政府通知や方針に従っているようだった。市役所としては国の基準を満たしたいというのがあるのだろう。とはいえ、豊田市などのように独自路線でさらに考えた配慮を行うというところまではやっていない印象がある。

 

困ったことがあった。

 

名古屋での育児問題は、市行政というより、現場レベルでこじれているようにも思った。園長の権限によって保護者のお迎え時間を従わせようとするというのも一例だけれど、他にも明文化されていないルールの強要などもあった。また、僕らが利用していた保育園では、園長よりも主任の意見が強くて、後から考えれば、虚言とまでは言い過ぎかもしれないけれども、独自の解釈を押し付ける主任によっておかしなことはいくつもあった。長女に対する対応は、当時あまり言われていなかったけれど、もしかすると虐待保育の疑いもあった、というか、ニュースなどで見る虐待保育の例からすれば虐待保育と言えるなあと、僕らの問題が解決したあとに思った。この主に関しては、最初は園長に訴え、園長は「まさかそんなこと」みたいに主任を庇うので、次に社会福祉協議会に言うと「園長と話し合ってください」となり、市役所に言うと「調査します」といって1ヶ月放置された。市役所の聞き取り調査では、園長も主任も「適切に保育をしている」ということで、「なにもない」ということになっていた。ちゃんと調査をしているのか、と再度聞くと、現場での調査になり、この調査も抜き打ちではなく、園長と日程を調整し、しかもお盆近くの利用者が少ない、保育園全体で1クラスか2クラスの合同保育になる日を指定された中での現状調査になった。調査担当者から「お盆も近いので合同保育でしたが、長女さんへの対応もキチンとされていました」という報告に、思わず、「いやいや、合同保育の日に現場を調査する意味ってあるんですか?」と指摘したら、「そう言われればそうですね。でも園長から指定された日に調査したので」ということで調査は終わった。なかなか痛快な思いをした。これを隠蔽体質というのだろう。

 

その後、他の専門家などを呼んで、名古屋市の職員立会の元で話し合いを行うことになり、専門家からの厳しい指摘が名古屋市になされ、市職員もやっと事態に気がついたようだった。「まさかそんな」ということが起こっていたことが分かったらしい。主任のことを園長が信じて、園長のことを市職員(僕の担当はあるときからずっと課長になっていた)が信じていたが、専門家からの指摘によって、僕はクレーマーではなく、専門家から見ても妥当な要求をしている存在とされ、そしてその妥当な、つまりとても些細な要求を行わなかった園長に要求されているいくつかの配慮を即刻するように、と指示を出した。このときまで、課長は僕の要望のことが分かっていなかったらしい。この時点で、主任も園長も報告を誤魔化していた可能性があった。とはいえ、僕の長女の保育に関する要求は時間がかかったけれども解決し、課長からも口頭で謝罪があった。園長はその後、手紙での謝罪があった。主任はその後、ほとんど見かけなくなって、年度末に異動したようだった。新しく保育園に来た主任と長女の担任は障害児に対してしっかりした考えを持っている方だったので、市役所にお礼のメールをしたら、市役所の課長も異動していたようで、新しい課長から「選りすぐりの保育士を派遣したので今後はご安心ください」というような内容のメールがあった。まさに、その言葉の通りで、主任や担任だけじゃなく、他の保育士さんも素晴らしい方が多く、保育園全体が明るい印象に変わった。

 

主任の大きな問題は、統合保育や加配、その他の政府の通知などに対して独自の解釈をして、自分たちの業務を少しでも減らすために利用するということだった。保育士の待遇向上や負担軽減には僕も賛成だし、チラシ配布を手伝い、署名もしたけれど、本来ある制度などを捻じ曲げて利用者に負担させるのは、待遇改善や負担軽減とはならないと思った。

 

名古屋の場合は、制度や施策というよりも、自立心旺盛な、そして独自な人がたまにいて、そういうクセの強すぎる人が強い力を持ってしまうとややこしくなることだった。こういう自立心旺盛な人が、障害児や多胎児に対して配慮をしようとすればやりすぎるのかもしれないし、排他的になると、それはもう、法律だろうが、条例だろうが関係なくなってしまうのだろう。そういえば、僕らが名古屋を引っ越すあたりで、愛知県か名古屋市の公立高校における「明文化されていないルール」が問題になっていた。名古屋にも変化が訪れているのかもしれない。

 

移住先に困る!<6>(自閉症児篇)に続きます。