いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

枯葉に困る!<1>(新築篇)<庭に草木を植えるのは大変だ>

「庭に草木を植えるのと、ペットを飼うことはあまり変わらないかもしれない」

 

困ったことがあった。

 

戸建てを建てるときには、建物だけじゃなく外構も考える必要がある。庭や塀はもちろんだけれど、自分たちだけの問題じゃなくなるのは、お隣さんとの境界あたりをどうするかということだ。家を建てるときには、隣接する土地のことを考えた方が、のちのちのためにはいいと思う。

 

一度目に家を建てるときに購入した土地は、平家と大きめの庭があった。土地を購入するとき、そこに住んでいる人がいた。確か、土地はお隣の地主の名義になっていて、住んでいる方は、借地権か何かを持っているとかだった気がする。住んでいる方の権利のことは、すでに地主と話し合いが済んでいるということもあって特にトラブルはなかった。10年以上も前のことなので記憶が曖昧になってきているけれど、その土地を購入するときに、地主と住んでいる方(兄弟で住まれていた)の双方にお金を支払うみたいな流れだった。

 

土地購入と借地権?の購入に時差があったと思う。まず、借地権?のような、つまり、その建物や住む権利のようなモノを買い取る契約があって、そのあとに、土地を買うというものだった。この辺がなんだか複雑だったけれど、不動産屋さんと地主で話がついていて、借地権?を僕が買ったら、そのあとは、すでにある上物である平屋は僕の物ということになるけれども、新しく家を建てるということであれば、地主側が費用を出して更地にするという契約になっていた。つまり、平屋のままでよければそのままそこに住めるということになっているらしく、平屋に住んでいる住民さんから、平屋の鍵をもらった。

 

その平屋は壊す予定の平屋なのだから、わざわざ中を見る必要もない。鍵の受け渡しのときに、住んでいるご兄弟に会うと、なんだか明るい感じの人たちで、中に入って見てみてよ、みたいなことを言われた。中は引越しもすでに終えていたのだろうけれども、地主との話し合いで取り壊し予定ということもあるからか、たぶん廃棄予定の物が詰まった段ボールがいくつかあった。外から見てもわかっていたけれど、中に入ると年季が入った平屋は趣があるというレベルを超えていた。畳はブヨブヨで、床は抜けそうなっていた。古民家をリフォームする人って大変だと思った。

 

「この家、もうボロボロで、床なんて斜めなんですよ。この間の地震で崩れるかと思いました」

 

と言って明るく笑っていた。そう、とてもボロボロだった。お邪魔するときに、スリッパを持ってこなかったことを後悔するくらいに、ボロボロで、そして汚かった。よく住んでいたなあと思うとともに、そうか、もう住むことを諦めていたんだ、とも思った。

 

その家の庭に面する部屋は、窓の下に穴が開いていて、段ボールで塞がれていた。これはボロ屋にしてもボロボロすぎるだろうと思っていたら、その段ボールは内と外に開閉するようになっていて、猫が自由に出入りできるようになっていたらしい。猫は三匹ほど飼っているようで、猫にしたらとても住みやすい場所だったのだろう。二人のご兄弟ともなんだか楽しそうにここに住んでいたようでもあった。

 

「子供の頃から住んでいたので思い出もありますけど、もう私たちも年なので、それぞれ別にマンションに住もうと思うんです。ペット可のマンションも見つかりましたし、ここは隙間風もひどくて」

 

と言って、猫ドアをパカパカとやっていた。笑っていいのか分からない状況だった。

 

「このまま住んでもらってもいいんですよ」

 

冗談だとは思うけれども、寂しさもあるのかもしれない。うまい返事が思い浮かばないまま、趣がありますよね、とか言って、庭の話をした。

 

更地になる前に見ておいてよかったのが、庭の状態だった。その家の住民が何に困っていたのかもよく分かる。庭には古くなった絨毯が何枚もあり、割れた瀬戸物が埋めてあった。草木もたくさんあって、鬱蒼としていた。それに大きく平らな石もたくさんあった。

 

「古い絨毯がなぜ何枚も敷いてあるんですか?」

 

「ああ、これね。ここは水ハケが悪くて、雨が降るとすぐにぬかるんじゃうんだ。だから、古くなった絨毯を敷いて、雨の日にも歩けるようにしてたんだよ」

 

「瀬戸物を埋めているのも、そういう意味ですか?」

 

「母は昔の人だったから、瀬戸物は土だからっていうことで庭に捨てたんだよ」

 

「あの平べったい大きな石は、なんですか?」

 

「あれは、この辺は昔、路面電車が走っていたんだけど、廃止になったときに、水ハケの悪い庭に敷くためにもらってきたんだよ。この辺の人たちはみんなもらいに行ったらしいね」

 

更地になると分からない歴史があるもんだと思ってなんだか楽しかった。水ハケが悪いというのは大事な情報だと思ったというのもあるので、そのあと家を建てるときに、水ハケ対策をするように施工業者にはお願いしたけれど、実際には、そんなに水ハケが良くはならなかった。そもそもの土地がもっている性質というのはちょっとやそっとじゃ変わらないらしい。

 

枯葉に困る!<2>(新築篇)に続きます。