いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

枯葉に困る!<2>(新築篇)<庭の木が裏のお宅の迷惑になっていた>

枯葉に困る!<1>(新築篇)の続きです。

 

家を建てるときには近隣への配慮も少なからず必要になる。建物に関してはさまざまな法律もあるので、今時は迷惑な建物を建てるのは難しいくらいだけれども、庭の場合は、注意をしないと迷惑をかけてしまうことがある。木などを植えたら、その枯葉などがどこに散るのか、ということも考えた方がいい。

 

困ったことがあった。

 

庭にたくさんある草木はどうしたらいいんだろうと思った。ご兄弟にはそれぞれ思い出もあるのかもしれないし、その後、地主に聞くと、植物の好きなお母さんだったらしく、生前は毎日お世話をしていたということだった。お母さんが亡くなられてからは、草木の世話をすることもなくなったのだろう、人が通れるくらいにはなっているけれども、なかなかの繁茂振りだった。丹精とはよく言ったもので、庭も手入れをする人がいなければ、すぐに荒れ果てる。

 

庭の草木がいくら繁茂していようと、更地にする費用は地主が出すことになっている。大きな木の根もあったけれども、これはそのままになるらしい。どうやら、この木の根は、地主が経営しているアパートの下の方にも行っているらしく、この木の根を取るとなると、大変なことになるようだ。そんなこともあるからか、この土地は相場よりも安かった。このことは特約みたいな感じで契約書にも記載することになったと思う。まあ、端っこの木の根ということもあって、新しく建てる家には影響しない。しかし、そんな感じで木の根が残るということになると、他にも草木を残した方がいいじゃないかと、今では前妻になった方が言い出した。

 

僕は、草木の手入れをしたくないし、できるとも思っていなかったから、仕方のない木の根以外は全部、処分してしまいたかった。できることなら、コンクリートの庭にしたいくらいだった。実際には、その逆で、平屋を解体したあと、いくつかの伐採はあったけれど、三分の一くらいの植物が残ってしまった。

 

この庭が僕の不満のタネになった。

 

前妻は大きな庭のある家に住んでいた。草木が鬱蒼としていながら、ガーデニングを楽しむ母親がいて、小まめに手入れをしている。イギリスとかのテレビ番組を見て、素敵なガーデニングを趣味にしたいと思っている感じのお庭だ。僕は団地育ち、庭を知らない。庭はどのくらい手入れが必要で、どんな草がやばいのか、どんな木に手間がかかるのかも知らない。

 

最初の家ができて、どうしていいか分からないながらも、雑草を抜いたり、伸びた枝を剪定したりといわゆる庭の手入れをしていると、地主の奥さんがよく話しかけてくれた。地主はもともと植物の売買を行っていた家らしく、奥さんも植物に詳しい。

 

ドクダミなんか放置しちゃたらダメよ、根が至る所に生えちゃうんだから」

 

その通りだった。言い訳したかった。僕が生やしたかったんじゃないと。僕はドクダミの臭いが苦手だった。

 

「椿は、蛾が集まるのよね。」

 

その通りだった。言い訳したかった。僕も切りたいと思っていたと。もちろん、蛾も好きじゃないし、椿の木にまとわりつく毛虫を集めて処分することにも、なんだか殺生の罪悪感みたいなものすら感じていた。ただ処分だけが目的になる殺生というのは害虫であっても気持ちがいいものではない。

 

僕はドクダミと戦い、毛虫を処分し、椿を切った。他にもすぐに伸びる草木を切っては捨てる日々が続いた。なんで、こんな目に遭わなきゃいけないんだろうと思っていた。コンクリートで埋め尽くしてしまえば、夏は照り返しで暑さを感じるにしても、庭仕事で流す汗よりも汗の量は少ないに違いない。庭仕事をしていたある日、裏側に住む人から声をかけられた。

 

「そちらの枯葉が、うちに入ってきちゃうんで、どうにかなりませんか?」

 

庭初心者の僕は思いもしていなかった。そう、見てみると、裏のおうちに、うちの木の枝が侵入している。困ったものだった。

 

「すみません、そちらの枯葉も掃除しにいきます。この枝も切ります」

 

「枯葉はこっちで片付けますから、枝だけお願いしますね」

 

何度も謝った。なんの木か忘れてしまったけれど、問題の木の枝を切った。そしてその隣に生えていた柳がうちの外壁を汚しているのも見つけた。風が吹くと何かが当たる音がしていたのは、柳だったのだ。この柳の葉も裏のお宅に落ちている。柳って、もう、なんでこれ切り倒さなかったんだろう。柳に対してとくに思い入れはないが、小学生のときに団地の狭い家に招待した数少ない団地以外の友人であった人がいた。団地の友達たちは互いの家の狭さをバカにすることはあまりないし、それを言いふらすこともしないけれど、中学に上がったときに、僕と直接の面識のない同級生から、「おまえの家、すごい狭くて、着替える場所もないんだって? 風呂のときとか、親に裸を見られてるの?」と言ってきた人がいたけれども、そいつと仲良くしていたのが、小学生時代にうちに遊びにきた戸建ての家の子供の柳君だった、ということくらいだ。つまり、僕は柳に少なからず嫌な連想がある。うちの子供たちには、柳くんやその同級生のようになってほしくないと思う。

 

枯葉に困る!<3>(新築篇)に続きます。