いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

小便器に困る!<五>(新築篇)<憧れを、かたちに。>

小便器に困る!<四>(新築篇)の続きになります。

 

我が家には小便器がある。5人家族で男は僕1人だ。それなのに小便器がある。小便器があることの言い訳をずっと探していたけれども、これだ!という言い訳は見つからなかった。立ちションにも座りションもどちらでも掃除をすればいいと思っている僕には、小便器を設置する正当な理由もない。我が家は公共施設でも商業施設でもない。それなのになぜ小便器が必要なのか。僕にも分からなくなったときに、妻が「小便器をつけてください」と言ってくれた。

 

困ったことがあった。

 

小便器が必要だとする理由が僕にはもうなかった。しかし、妻がたった一つの僕の要望という理由を取り上げてくれて、そしてそれこそが、三井ホームの掲げる「憧れを、かたちに。」というものじゃないか、と笑いながら言ってくれた。憧れが小便器というのはなんとも滑稽な話だけれども、突き詰めてみると、僕の憧れはこんなものかもしれない。

 

そんな妻の度量に、配管を気にする設計士さんも心を打たれ(?)、インテリアコーディネーターさんからは「こだわりは大事です」とお墨付きをもらい、小便器廃止論を唱える人はいなくなった。営業さんはずっとニコニコしていた。そう、営業のSさんは、僕がはじめて会ったときから小便器のことを言っていたのを知っていた。「小便器のことは最初から言っていましたもんね。小便器に憧れている男性は結構いますよ!」と僕の罪悪感のようなものを緩和してくれた。

 

配管の図面と睨めっこをして、設計士さんと話し合った。設計士さんからは、小便器のトイレを狭くして少し場所を動かす提案があった。そうすると配管もうまくいくらしい。僕は狭いトイレにしたかったというのもあって、狭小トイレにすることにそもそも反対意見などはない。イメージとしてはガード下などの飲屋街の路地で立ち小便するような感じとインテリアコーディネーターさんにも話した。そして、狭小トイレの図面ができた。壁紙もそこだけは悪ノリでレンガ模様。トイレ掃除用の棚をつけたかったけれども、頭をぶつける可能性があるということで、棚はなしになった。窓はもちろんない。狭小空間だと普通のドアはつけられないというのがあったけれど、ドアがはまる部分の壁を斜めにすることでドアもつけることができるし、小便器トイレによる玄関近くの混雑も緩和されるという提案があった。なんだか憧れがかたちになった。

 

あと、うちはリクシルさんの未来発電というのを取り入れている。未来発電は太陽光発電が無料で取り付けられる代わりに、トイレや窓サッシや玄関ドアはリクシルさんにしなければならないという縛りもある。しかし、リクシルさんは小便器がないからなのかよく分からないけれど、小便器はTOTOさんになった。TOTOがあるとトイレ感が増すとかこれまた意味不明なことを思ってしまった。

 

我が家には小便器がある。僕の憧れがこの小便器だ。うちに訪れる人から「どこが一番気に入っていますか?」と聞かれると、僕は「小便器です」と答えている。小便器こそが僕の憧れだし、それがかたちになったのだから、僕からすれば当然の答えだ。だけど、僕のそんな答えを聞くと妻は微妙な顔をしている。妻こそが一番の理解者だと思っていたけれど、妻としては、2階リビングの勾配天井や、キッチンハウスのキッチンや、スカイラナイ(バルコニー)などを一番気に入っているものとして挙げてほしいようだった。

 

憧れもかたちもいろいろだ。

 

憧れに理由はいらない。とカッコよく締めてみようと思ったけれども、その憧れが小便器だと思うと、それはそれでなんか違うような気がしています。