いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

建材に困る!<上>(新築編)<注文住宅に向いていないのかもしれない>

「屋根の一部を見たところで、よくわからない」

 

困ったことがあった。

 

家を建てるために何度も打ち合わせを重ねていた。間取りはどうする? 洗面台は? 窓の位置やサッシはどうするとか、ドアはどうする? トイレは? なんて調子で、次々に検討して決めていく。それはそれで楽しいし、打ち合わせごとに具体的になっていく家のことを妻と話し合っていた。

 

そんな楽しい打ち合わせにも関わらず、妻が仕事の予定と調整してくれなくなってきた。忙しい時期になってきたというのもあるけれど、それだけが理由でもなさそうだった。

 

不穏な空気が漂ったわけでもない。いざとなったら家を建てたくなくなったわけでもない。もちろん、僕と妻が不仲になったわけでもない。

 

妻は打ち合わせに飽きてしまった。

 

妻が飽きてしまったのは、間取りも決まり、洗面台やキッチンも決まってきた頃、そう、ダクトの位置や配管についての打ち合わせのときだった。明らかに退屈している妻。まるで興味がないという目をしている妻。マスクで分からないけれど、きっと何度もあくびをしているのだろう。

 

ダクトや配線の打ち合わせから、妻はインテリア関係以外の打ち合わせにはは出席しないと言い出した。

 

「ダクトの打ち合わせのとき、楽しそうに設計士さんと話してたよね?」

 

「楽しいっていうか、どこにどういう配管や配線があるか決めておけば、将来、減築するかもしれないし、そのときに使いやすくしておきたいと思ったから」

 

「ダクトの話とか興味ないから、インテリアコーディネーターさんがいる打ち合わせだけ出るよ」

 

そんなあ、と思った。思ったけれども、退屈そうにしている人が横にいるのも、なんだか気まずい。それに、ダクトや配線の話を長引かせているのは主に僕で、ここをこうしたらとかいろいろと提案もしていた。設計士さんもダクトや配線が好きみたいで、僕と設計士さんの2人で配線図を見ながら盛り上がっていた。配線図やダクト図を見ながら盛り上がれない妻からしたら仲間はずれにされた気がしたのかもしれない。

 

そんなことで、それからの打ち合わせは僕が1人でいくことが増えた。

 

配線、配管、ダクトの話はまだいい。図面で全体が見ることができるし、それはそれで分かりやすい。僕が困るのは、全体がよく分からないことを決めなきゃいけないということだった。

 

床材、屋根材、壁材、玄関やポーチのタイルなど、決めることが多いし、僕にはちょっと難しかった。

 

僕らは三井ホームのLucas(ルーカス)という商品を買ったことになっている。だから、Lucasでやってくれればそれでいいと思っていた。Lucasの外観は一種類だと思っていた。そんなことなかった。外観や間取りの大きな仕様はLucasだけれど、一つ一つの材料は施主が選ぶことになっていた。

 

こだわったらキリない世界だった。もともと子供がいなければ引っ越ししやすい賃貸マンションがいいと思っていたし、子供の1人や2人なら買うにしてもマンションか、分譲住宅の決められた間取りで十分だと思っていたような人間に、注文住宅の自由さはたまにつらい。

 

もちろん、予算にはキリがあるので、夢みがちにあれもこれもというわけにはいかない。基本は三井ホームのLucasで標準設備になっているものから選ぶことになる。それだって結構、選択肢があって困ってしまう。

 

「壁材はどうしましょう?」

 

「Lucasっぽくしてください」

 

「Lucasだと、これとこれとこれがよく使われています。そしてサイディングをこれにした場合は、吹き付けはこっちの方が合います」

 

設計士さんが一つ一つの材料を手に取って教えてくれる。組み合わせも考えると大変だ。それに、壁の一部分だけ見たところで、全体が分かるほど僕の想像力は豊かじゃない。僕が戸惑いながら壁材を見ているのに、設計士さんはとても嬉しそうに一つ一つの壁材を手に取って、丁寧に説明してくれる。光のあたり方や汚れの付き方、組み合わせの見え方なんかも嬉しそうに話している。きっと、どれも大事なことなんだろうけれども、僕はぼんやりしてきて、酸素が足りないからなのか、マスクで見えないことをいいことに小さいあくびをくり返していた。

 

きっと妻もこんな気持ちだったのだろう。

 

建材に困る!<下>(新築編)に続きます。