いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

接遇に困る!<中>(自閉症児篇)<担当者ガチャもある>

接遇に困る!<上>(自閉症児篇)の続きです。

 

障害児や多胎児の育児をしていると、どうにも誰かに頼らないと育児自体が難しいと思うことがたびたびある。そんなときに最初に頼るのは、行政だったりする。しかし、そんな行政も、最初にどんな対応されるのかは運次第という感じがする。素敵な職員さんにあえば、問題は解決に向かう。そうでない職員さんに出会ってしまうと、こじれにこじれて、心が折れそうになる。

 

困ったことがあった。

 

いい職員の特徴は、話を聞いてくれるし、どんなことができるか一緒に考えてくれる。条例や法律に詳しくない市民の相談に対して、どんな根拠があるのか調べてくれたり、サポートできるようなサービスを教えてくれたりもする。特に、はじめて障害児を育てることになった人や、多胎児などといった、少しイレギュラーな子育てをする場合は、すぐに行政と繋がっておくと、意外と困っていたことが解決することもある。

 

一方で、嫌な人というのもある。嫌な人といっても、生まれながらに嫌な人というのはそんなにいないだろうから、何かのきっかけでやる気がなくなったのか、面倒になったのか、仕事なんてやってらんねえと思ってしまったとか、まあ、よくあることで、僕にしたって、いろんな仕事をする中で、いやだなあと思ったこともあるし、いやだと思う仕事に対して、自分からあれこれを提案したいなんて思えなかったなんて経験は山ほどある。お客さんを見ても、はやく帰ってくれないかなあ、と思ってしまうことも、この電話早く終わらないかな、とかそんな態度で仕事をすることだってあった。よくあることなんだけれど、そのよくあることだから、ときどき目にするんだと思う。

 

市役所の場合の嫌な人は、話を聞いてくれない、相談を頭から馬鹿にしている、何を話してもできません、ルールなんでということでとにかく拒絶する。

 

しかし、市役所。個人事業ならそんな接客でもどうにかなるというか、いまもあるか分からないけど、そういうこだわりのラーメン屋みたいに「うちが気に食わないなら他に行け」みたいな感じでも、店は潰れるかもしれないが、客に論破されることはない。市役所の場合だと、こういうこだわりのラーメン店主みたいな対応はよくないというか、市役所のルールに反していたりする。

 

苛立った市職員に、「いま答えられないなら、調べたあとに連絡ください」とお願いした。すると、「折り返しの電話はしないことになっています」という対応だった。つまり、ルールだ。その頃の、僕はただ市役所を頼るばかりじゃなくて、市役所とは戦わなければならないということが分かっていたというのもあるし、市役所にはいい人と嫌な奴がいるということが骨身にしみていたこともあって、「職員ハンドブック」なるものを手に入れて、熟読していた。職員ハンドブックを読むと分かるのだけれども、職員ハンドブックの職員さんはいい人ということで設定されている。というか、市職員はいい人であれ、と書いている感じすらある。

 

で、問題の「折り返しの電話はルール違反かどうか」ということを調べてみると、「接遇」の部分に、折り返しの電話をする、ということが書いてある。このハンドブックの問題は、メールの折り返しが書いていないことでもあるけれど、電話ですら折り返すのだから、メールも返信するのは、ハンドブックが目指す良い職員からすれば目指すべきところなのかもしれない。

 

「職員ハンドブックには、折り返しの電話をしてはならないというルールはありませんね。接遇の箇所を読むと、折り返しの電話をするように書かれていますが、まあ、あくまで、職員ハンドブックは規則ではなく、職員が目指すべきところであるので、あなたが規則にないからということで折り返しの電話を拒絶することはかまいませんし、この職員ハンドブックに対して異論があり、ハンドブックのような職員にはなりたくないということであれば、それはまた別の部署に相談することになると思いますが、私は尊重します。しかし、折り返しの電話をしてはならないという規則も同時にないわけです。すると、あなたは、私に対して、虚偽の説明を行ったということになりますが、いかがお考えでしょうか?」

 

という面倒臭い市民として応答することになってしまった。該当ページを聞かれて、ページを教えると、職員ハンドブックを開いて確認したのか、「たしかにありました。私の間違いでした。申し訳ありませんでした」ということになった。

 

ここで畳み掛けるようにして、「誰にも間違いはあるので気にしませんが、あなたが接遇において間違えてしまったように、他の職員も、障害児に対する対応で間違えている可能性があるためご相談させていただいているのです。ですから、障害児に対する対応において、そちらの市で配慮できる範囲とできない範囲があると思うので、そこの判断基準を聞きたいわけなんです。そして、配慮できないのであれば、配慮しない法的な根拠や合理的な理由を述べてくださいとお願いしているのです」

 

そんなこんなの対応を数人繰り返して、発語ができない長女の排便があったかどうかだけでも毎日教えるということをやっていただけることになった。これだけで半年かかった。

 

担当がどんな人になるのか、それだけで結構変わるものだ。

 

東京にいたとき、双子が通う保育園の園長から、「予防接種の翌日は保育園は登園してはならないことになっています」と言われた。「発熱したらお休みということですか?」と聞いたら、「発熱しなくても、予防接種の翌日は休みというように決まっているんです」と言われた。保育園のしおりや、市役所の案内にもそんなことは書いていなかった。市役所に電話で聞いてみた。休みなら休みで仕方ないけれど、まずは確認だ。

 

「そんな規則はありません。園長には市役所から訂正するように言っておきます。発熱がなければ、そのまま登園してください」

 

頼もしい職員だった。東京郊外の市役所の担当者は、いつでもハキハキしていて、園児と保護者を守ってくれる感じだった。障害児と多胎児であることも分かってくれているため、社会福祉協議会の人と一緒になって、ずいぶん気にかけていただいていた。

 

接遇に困る!<下>(自閉症児篇)に続きます。