いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

特典に困る!<上>(主夫篇)<初回限定とか特典とか、なんで嬉しいんだろう>

「子どもも大人も特別な何かが好き」

 

困ったことがあった。

 

育児をしていると、自分の子供の頃の思い出が蘇ることがある。だいたいが些細なことで、人に話すことでもないようなことばかりだ。

 

子供の頃、とくに小さい頃は、父親がよくおもちゃを買ってきてくれた。うちの景気もよかったというもあって、4歳くらいまでの写真を見ると弟と幸せそうに仮面ライダーのベルトを巻いて、ポーズはなぜかウルトラマンスペシウム光線を出すような感じで写真に映っている。その後、我が家は貧しくなり、住んでいた借家を出て、団地に引っ越すことになる。

 

団地に引っ越してからは、あまりおもちゃを買ってもらった記憶がない。それまでに買ってもらったおもちゃ、おもにブロック類だけれど、小学生の間はそれで遊んだ気がする。数年に及ぶブロック遊びの結果、僕のブロック捌きは熟練の域に達していた。それと、レーシングサーキットみたいなセットもあった。これは4歳の子供には早すぎたのか、小学校に上がる頃には壊れていた。このおもちゃのことを先日母親から言われて、40年ぶりくらいに思い出した。邪魔なのになかなか捨てられなかったおもちゃだったから母親は覚えていたのかもしれない。

 

憧れのおもちゃはたくさんあった。レゴが欲しかったし、ゾイドも欲しかった、ラジコンも欲しかったし、顕微鏡や望遠鏡も欲しかった。でもそれは買ってもらえなかった。キン消しビックリマンシール、メンコ、ミニ四駆ガンプラはお小遣いを貯めたり、新聞配達の手伝いなどをしてお小遣いをもらって手に入れていた。誕生日やクリスマスになるとおもちゃや漫画は買ってもらえたけれど、1000円以下、いや500円以下という決まりがあったような気もする。

 

あの頃の憧れというか、欲しかった気持ちを思い出して、ついつい子供たちにはおもちゃや絵本を気軽に買い与えるようになってしまった。弟に聞くと、弟も同じらしい。どうにも子供に甘くなる。子供に甘いのか、あのときおもちゃ屋さんで消費できなかった気持ちを、今になって晴らしているだけなのか、それはよく分からない。

 

貧乏だったけれども、全くおもちゃを買えなかったわけじゃない。ガンプラも高いものは買えなかったとしても安いガンプラは買えたし、憧れのゾイドにしても比較的安価なものもあったと思う。ミニ四駆などはラジコンの代替物のようにも思えたし、安くても遊ぶだけなら、何でもいいといえばなんでもよかった。スケボーやローラースケートなども安物しか持っていないことが、最初はいやだったとしても、安物のローラースケートで高級なローラースケートの友達を華麗に抜き去るのは自分の力を確認するような気もしてちょっと気持ちよかった。スケボーはまったく上手くならなかった。

 

しかし、高いものには特別感というものがあった。実際に遊んでしまえば壊したり失くしてしまうにしても、買ったとき、包装を解く時の特別感ほど幸せなものはない。いまでも子どもたちが最も喜ぶのはレジまで運ぶときだし、家に帰って包装を解くときだ。数日後には飽きてその辺に転がっているおもちゃもたくさんある。数ヶ月経って、突然奪い合いが起こるほどのブームになることもある。

 

特別感のある物。それはなんだろう。僕が子供の頃にいいなあと思ったのは、ビックリマンシール専用のバインダーや、初回限定かどうか分からないけれど、付属品ともいえない程度のおまけがついているものに対して特別感を感じたものだった。パチモノゾイドやガンプなどのシリーズでも最も安い物(いまならスターターキットとかそういう言い方なのかもしれない)には初回限定や予約特典みたいな物はついていない。どんなつまらないものであっても、特典は特典で、特別感があった。

 

子ども時代のこういう憧れが後を引くのか、僕はいまでも初回限定や特典みたいなものに弱い。本やCD、DVDなんかも愛蔵版とか限定品を買ったこともある。だいたい売ってしまったけれども。いまは服などを買うときについつい限定受注生産みたいなものに興味を持ってしまったりする。

 

この初回限定とか特別受注生産って一体なんだろう。言葉の意味が分からないわけじゃないけれど、冷静になると、だからなんだ、って気もする。本なんかの場合、僕が買うような本はそもそも初版くらいしか刷られていないことが多い。先日も、10年以上前に買っていたあるシリーズものの本があって、引っ越しのときに、もう読むとこもなさそうだし、友人にあげようかと思って、試しに検索してみたら、値段が高騰していてびっくりした。友人にあげるつもりだったのに、フリマアプリに出品したら10万円以上で売れた。そんな高値でも売っても、相場よりは安かったらしくて感謝された。この本なんか、初回限定でも特別受注生産でもなく、当時は大型書店にポツンと売っていたものだった。人気のない本はそもそも初回限定なのかもしれない。

 

と、スレた気持ちで初回限定や特典みたいなものを見てしまうと、子供心に覚えた憧れの気持ちをなくしてしまうから、ここは何も考えずに、特別感を演出してくれてありがとうくらいに思うことにしよう。

 

特典に困る!<中>(主夫篇)に続きます。