いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

消失に困る!<中>(自閉症児篇)<2年間一緒だった見えないお友達>

消失に困る!<上>(自閉症児篇)の続きになります。

 

長女には想像のお友達のティアラちゃんという子がいた。彼女はいつも長女と一緒にいた。最初は同級生だったけれども、あるときからは二つ年上になった。ひとつ年上になったのは、長女が年少さんだった頃、同じ保育園で長女のことを可愛がってくれていていた年長さんの女の子が卒園してからだった。年長さんのお友達が小学校に入ることを、長女がどうにか理解しようとして、想像上のお友達も小学校に行くことにしたのだろうと思う。困ったことでもないのだけれども、

 

困ったことがあった。

 

そんなティアラちゃんとの関係も2年が過ぎようとしていた。途中でアラニちゃんや、他に発音しにくいお友達が増えたり減ったりしていく中で、ティアラちゃんが消えることはなかった。

 

自閉症は環境の変化が苦手だというのは何度も書いた。運動会やら発表会の練習がはじまると夜驚もはじまる。保育園のイベント程度の変化でも長女は少しおかしくなってしまう。そんな長女に突然の変化で過度なストレスを与えないように、運動会の練習がはじまるときなども前もって何度も何度も説明をする。運動会でも大変なのに、今度は引っ越しと転園だ。長女を取り囲む環境は大きく変わる。療育も変わるし、行きつけのコンビニも変わる。引っ越しの数ヶ月前から、長女には何度も変化を教え、コンビニのお兄さんともいつ頃、さようならなのかなどと話していった。

 

幸いなことに長女はずいぶん言語での理解ができるようになってきていた。療育の先生やコンビニのお兄さんにさようならすることも理解できていたし、保育園が変わることも分かっていた。さよならの準備として、先生やお兄さんに手紙を書いたりしていた。手紙といってもひらがなのようなものを書いて、絵を付け加えたようなものだ。

 

そんな変化の準備期間のときに、想像上のお友達が急増した。ティアラちゃんやアラニちゃんのレギュラーメンバーは頻繁に現れ、他にも5,6人のお友達が現れた。もうとてもじゃないが把握できない。それにメンバーの入れ替えも激しい。名前もよく変わる。前の日のお友達の名前を覚えても次の日には変わってしまう。

 

想像上のお友達はストレスなどを感じているときに出現するという話もある。引っ越しを控えた長女がストレスを感じているのはよく分かるし、想像上のお友達を作ることで気持ちが落ち着くのならそれでいいようにも思う。

 

引っ越しが近づいてくると、僕は僕で忙しくなってしまって、長女の想像上のお友達のことをあまり考えなくなっていた。

 

そして引っ越したら、長女の想像上のお友達は1人も登場しなくなった。2年以上共にいたティアラちゃんですら、引っ越し後は名前を聞いたことがない。

 

そういえば、引っ越しの前に、長女が僕にいろいろと言っていた。ティアラちゃんが引っ越すとか、ティアラちゃんの小学校が長女の引っ越し先の小学校になったとか、アラニちゃんは中学生になったとか、他にもそれぞれのお友達の進路が決まったらしくて、長女なりに別れの季節になっていたらしい。

 

いまは誰もいない。

 

消失に困る!<下>(自閉症児篇)に続きます。