いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

新環境に困る!<下>(自閉症児篇)<自閉症と環境の変化>

新環境に困る!<上>(自閉症児篇)の続きになります。

 

自閉症児の長女のことを書こうと思っていたら、僕の話ばかり書いてしまった。自閉症は遺伝すると言われるけれども、長女を見ていると僕の子供の頃を思い出してしまうことがある。僕も何か変化があるとその度に、パニックを起こして、癇癪なり夢遊病なり、お漏らしなどをしていた。

 

長女を見ることを自分を見ていることにもなるような気がしている。

 

困ったことがあった。

 

そして長女だ。

 

彼女は1歳半で自閉症と診断されている。環境の変化には敏感だ。にもかかわらず、彼女は生後半年くらいで日本からアメリカに行き、その後も一度引っ越し、2歳半くらいで帰国し、そして一年で今度は名古屋に引っ越した。環境の変化が目まぐるしい。

 

彼女は発語が遅れていた。ようやく喋るようになったのは4歳を過ぎてからになる。喋るといってももちろんたどたどしいもので、同世代と比べると要領を得ないことばかりだった。いま3歳になった双子たちを見ていると、3歳というのはずいぶん立派に話すものだなあと思わされる。

 

発語がなかった長女から環境の変化に対する拒絶を見極めるのはなかなか困難だった。保育園や幼稚園に通う自閉症児あるあるとして、運動会の練習がはじまると夜驚が起こるというのがあるようだ。3歳の長女ももちろん、運動会の練習の時期に夜驚が起こった。そんな感じで保育園がいつもと違うことをやると、癇癪や夜驚などが起こった。これもなかなか困るので、担任の保育士さんには、いつもと違うことをやるときには教えて欲しいとお願いするようになった。前もって長女に説明する。そのときは言葉が伝わらなかったので、写真や絵を書いて、長女にわかってもらえるように冊子のようにして毎日、説明した。

 

4歳になると言葉がある程度分かるようになってきた。そんな中で、長女が僕に言った言葉は「東京の保育園に行きたい」というものだった。

 

環境の変化に対する拒絶がやっと言葉になったんだと思う。それを聞いて申し訳ない気持ちになった。妻の仕事で名古屋に来たというのもあって、妻はよりつらそうにしていた。

 

名古屋の保育園や名古屋市とはいろいろとあったけれど、今では長女のこともよく理解してくれるし、些細なことも相談してくれるようになったというのもあって、長女も楽しく過ごしているようだ。「東京の保育園に行きたい」と言わなくなった。長女も環境に慣れたんだと思う。

 

やっと環境になれたのに、また僕らの都合で引っ越すことなった。申し訳ないことだ。長女に言葉でも説明し、絵や写真で新しい保育園を見せたり、見学にも連れていった。新しい保育園はトイレが綺麗だったということもあって、長女は気に入っているようだった。「新しいスリッパを買いました」と今の保育園のトイレのことも教えてくれるが、今の保育園のトイレが古いので、新しい保育園のトイレに行きたいという気持ちが強いみたいだ。引っ越しの話をするたびに、新しい保育園のトイレのことを長女は話し始める。

 

最近、長女の夜驚が起こっている。これは考えてみると、妻が退院してから起こるようになっていて、引っ越しの話と妻の入院を同じような時期に説明してしまったというのもあって、長女の中では混ざってしまったようだった。それとともに、今の保育園の友達とは違う保育園、そして小学校になるということを察してきたのか、最初は嬉しそうにしていたのに、今は、お友達も一緒に新しい保育園に行くと考えているらしい。説明は何度もしているけれども、受け入れがたいのか、最近では、想像上のお友達がたくさん増えてしまった。そのたくさんの想像のお友達は長女が通うことになる保育園にすでに通っているという設定らしい。長女の引っ越し準備はなかなか複雑だ。

 

そんな長女を見かねて、長女が好きなプリキュアショーに連れて行こうということになった。当日、長女は熱を出した。そしてプリキュアショーには行かないと言っていた。次の週に行くことにした。次の週も、長女は微熱だった。プリキュアショーには行きたくないということだった。そして今度は、新しいプリキュアがはじまるということを知ったらしく、新しいプリキュアショーに行きたいそうだ。先日、新しいプリキュアははじまったのだから、まだショーはやっていないし、きっと、新しいプリキュアショーも当日に長女は熱を出すのだろう。

 

環境の変化というのは難しい。自閉症にとっては、わかりやすい拒絶反応みたいなものがでてしまう。長女もそうだけれども、僕もそうだ。引っ越しの準備でバタバタしているというのもあるけれども、どこか落ち着かない。落ち着かないものだから、へんなミスばかりしている。

 

先日は、カードケースをなくしてしまった。駅で使って家に帰ってきたのだから、駅や途中の道で落としていなければ家にあるはずだ。元々電車はあまり乗らないものだから、Suicaとかmanacaとかのカードはあまり使わないとはいえ、使うときにはいつも同じ場所に入れていた。その日は、新築中の家で設計図との違いが出た箇所があるというので確認しに行くというものだった。いつもなら自転車で行くけれども、その日は雨だった。雨というのもあって、予定していたカバンではないカバンに、予定していなかったパンツ、上着、そしてブーツも雨用の物になっていた。家を出るときからパニックだった。で、どうにか確認を終えて、駅でmanacaを使ったのは覚えているが、さて、そのあとどこにしまったのか全く思い出せない、いつものカバンであれば、カードケースの入れる場所が決まっているし、そうじゃないカバンにしても、または上着にしてもだいたい入れる場所はある。ただそのときは傘もあった。そんなこんなの中で、カードケースが見つからなくなってしまった。カードケースを探しながら、カビ除去のスプレーを棚から落としてしまって、スプレーが壊れてしまった。

 

きっと、こんなことはよくあることなのだろう。はやく落ち着きたいものだ。長女の夜驚とは別に僕も最近は不眠が続いている。引っ越しが終わって、そして新居で、子供たちが保育園なり幼稚園なり通うようになって、僕の本棚に綺麗に本が並ぶようになって、きっとそのときになって、僕はやっと眠れるようになるのかもしれない。そのときには、同じ朝食に同じ食器、置く位置も確立され、家の周囲の道も決まりきったコースができるだろう。3ヶ月くらいかかると思うけれども、僕も長女と一緒に新しい環境に慣れるまでのパニックを乗り越えていきたいと思う。