いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

あげるに困る!<中>(自閉症児篇)<知的障害はカモられる?>

あげるに困る!<上>(自閉症児篇)の続きです。

 

長女は物をあげてしまう。なぜあげてしまうのか、ただ優しいだけなのか、それとも何かがつらいのか、そんな自分の気持ちは、大人でも分からないかもしれない。何が起こっているのか、周囲が考えるしかないのかもしれない。

 

困ったことがあった。

 

長女のお友達は、同じクラスの子と比べてみても、言語的な発達が早い方だった。お迎えのときなどに会うと僕によく話しかけてくるし、長女が直接僕に伝えることができないような長女の保育園での振る舞いを教えてくれることもあって、とても感謝している。賢い子だなあとよく思わされる。そんな賢い子だからなのか、長女にヘアピンが返却されたこともよく分かっているようで、僕に説明していた。

 

「長女ちゃんが、保育園に持ってきちゃいけないヘアピンを持ってきてたんだよ」

 

そのときは、そうだね、持ってきちゃダメだね、みたいに返答していた。そのことを妻に言うと妻の顔色が少し変わった。長女が3歳の頃、僕と2人で洋服を買いに行って、長女が気に入って試着までして買ったズボンがあった。そのズボンを長女が保育園に履いて行ったけれど、お迎えに行ったときには別のズボンに着替えていたということがあった。まだ発語ができなかった長女に訳を聞いても言えるわけもなく、保育士の方に聞いても、ズボンを脱いで嫌がるから代えのズボンにしたということしか分からなかった。その後も、そのズボンを長女は履かず、僕と長女の楽しいショッピングの思い出はなんだか寂しい思い出になった。

 

その日のことを妻は思い出したらしい。その日の保育園の送りは妻だった。妻が長女と次女三女を連れて保育園に行った。長女を年少組に入れて、その後は、次女三女を乳児クラスに連れて行って、体温の記入やらオムツやら手拭きタオルやらの準備をして、帰りがけに長女のいるクラスを覗いたら、長女が数人の園児に囲まれて何やら言われていたらしい。

 

さくらんぼは、何何ちゃんのだよ」と、ズボンに入っているさくらんぼの絵が、他の友達の荷物などの置き場を示すマークと一緒であると責められていたということだった。妻はその場は介入せずに仕事に行ったらしい。僕だったらすかさず介入していたかもしれない。妻としては、まさかその後、長女が拒否反応によるパニックを起こしてしまうとは分からず、ただの園児同士のコミュニケーションだろうくらいに思っていたということだった。そして、そのときに、長女を責めていたのが、その後、長女と仲良くなる賢いお友達だった。

 

そのお友達は、いつも長女の世話をしてくれるし、一緒に遊んでくれるいいお友達だ。そして、仲が良いからなんだろうけど、よく衝突もする。保育士さんの話を聞くと、長女が他の友達と仲良くすると、その長女が仲良くなった友達を長女から引き離そうとして、揉めてしまうということだった。保育士さんたちもよくあることと思っているし、僕もそう思っていた。

 

しかし、これはよくあることとして済ましていいのだろうか。

 

ふと、僕の友人に、その賢い子みたいな人が数人いることに気がついた。彼らは衝動が抑えられないのか、いい歳になっても、なんのかんのと理由をつけて、僕の物を欲しがることがあった。あまりにしつこいので根負けしてあげてしまったものもある。今でも彼らにあげてしまった僕の大事な物を思い出すことがある。そして、彼らにとっては僕のあげた物はたいして大事でもない。数年経って返してくれることもある。僕の物だったから欲しかったということだった。また、彼らは僕が他の友人と仲良くしていると、その友人と仲良くなって僕を孤立させようともしてきた。そんな友人が過去に4人ほどいた。今も定期的に連絡をとっているのはそのうちの1人だけど、若い時には魅力的だった彼らも、30歳を超え、40歳を超え、徐々に孤独になっているようだ。友達ができない、友達が去ってしまうらしい。そんな友人が、40歳を超えて、自分に何か問題があるのではないかと思って病院に行ってみると、ADHDだと診断された。

 

もしかしたら、長女のお友達もADHDなのではないだろうか。長女のクラスを見てみると、長女はもちろんだけれど、情緒が安定していない子が2、3人いる。そのお友達は賢いけれど、泣き叫びながら帰っていくのを何回も見ていた。一緒に遊んでいても、突然、癇癪を起こしてしまうこともあって、長女もつられて泣いてしまうことも多々あった。他の子たちはびっくりして、長女とそのお友達を見ていた。

 

長女とそのお友達を見ていると、僕とADHDの友人たちの関係を見ているような気がした。僕も長女と同じだった。何か言われてしまうと物をあげてしまうし、少しくらいいやなことをされても、そのまま友人関係を継続させてしまう。

 

子供の友人関係に親がどこまで口を出していいのか分からないし、口を出すべきじゃないとも思っている。しかし、対策くらいは考えてもいいような気もした。まずは、保育士さんなどの周囲にいる大人たちに、「よくあること」ということではなく、どういう状況で「あげる」というのが起こってしまうかというのを観察してもらうことだと思った。でもこういうのってなかなか言い出しにくい。まるで、お友達を悪者扱いしているようで申し訳ない気持ちがある。そのお友達によって長女は助けてもらっていることもたくさんあるし、楽しい思い出もたくさんある。長女の言語能力が発達してきたのも、そのお友達の影響は大きいはずだ。僕らは、そのお友達にとても感謝しているし、ヘアピンでもおもちゃでもプレゼントしたいと思っている。

 

あげるに困る!<下>(自閉症児篇)に続きます。