いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

落とし物に困る!<下>(ボストン篇)<Fワードは治安が悪い?>

ベビーカーで寝ている長女を見ながら、妻と優雅にテラス席でコーヒーを飲んでいた。そこまでは良かったのだかけども、帰り道に違和感を感じた。

 

困ったことがあった。

 

アメリカでは、カードを使うことが多いし、紙幣も日本の紙幣と比べると少し小さい。そのため、日本で使っていた財布の代わりにアメリカ用にカードケースにマネークリップがついたような財布を買って使っていた。小さいカードケースということもあって、ズボンの前のポケットにいれてもかさばらない。そんなことから、僕は右のポケットに財布を入れていた。歩くと少し太ももに擦れる感覚がある。その感覚がなかった。

 

つまり、財布を落としたということ。

 

これはまずい、現金は対して入っていないけれども、カードは大変だ。カードをすぐに止めるにしても、カード生活のアメリカでカードが止まるというのはちょっときつい。うわーっと思って、来た道を戻った。そういうときに限って、最短ルートで帰宅しておらず、ちょっと道に迷いながら帰っていたものだから、どこにどう財布を落としたのかも分からない。妻と二手に分かれて、迷った道とお店までの最短ルートの道を探すことになった。

 

お店のテラス席の下に財布はあった。席取りをしていたわけでもないのに、僕らがいたテラス席だけが空いていた。人気のテラス席なのに、ポツンとそこだけ誰も座っていなかった。もしかして、僕の財布が席取りをしてしまっていたのか、とか思っていた。

 

財布が見つかってよかった。

 

そのことをアメリカの友人に話した。

 

「セントラル駅あたりのテラス席に財布を落として見つかったなんて!」

 

「なんかおかしい?」

 

アメリカ人はオポチュニストが多いから、財布を落としたら戻ってくることなんてあまりないよ」

 

オポチュニストという言葉は、なかなか難しい。機会主義とか日和見主義とか訳されるけれど、アメリカ人だけじゃなく、日本人だって、オポチュニストばかりじゃないか、と思った。

 

「日本人はルールや法律を守るから、オポチュニストは少ないと思う」

 

そういうことか、と思った。日本でオポチュニストというと、そのときどきで意見や態度が変わる人で、寄らば大樹の陰というか、長きものに撒かれろというか、権威主義的な人とか、そういうのを考えがちだ。アメリカのオポチュニストというのは、落とし物をネコババするとか、法律やルールをその場その場で無視するということらしい。規則や原則を曲げて困っている人を助けるというようないいことになることもあるけれども、悪いことでも原則や法律を無視する。それがアメリカでのオポチュニストらしい。僕が思っていた日本のオポチュニストは、ただの権威主義とか、弱い物いじめとかそんなことだったのかもしれない。

 

「セントラルはとくに治安が悪いから、財布なんて落としたらまず戻ってこないよ」

 

「そんなに治安悪いかな?」

 

「この間、スタバに行ったら、Fワードを言っている人がいてびっくりした」

 

そう言って、その夫婦は深刻そうに頷き合っていた。Fワードとは、Fがつく言葉で、つまり、日本でも有名な英単語の一つで、怒ったりしたときにアメリカ人が言っている言葉だ。で、日本人からすれば、その程度の言葉で、治安が悪いということになってしまうのか、と新鮮な気持ちにもなった。

 

その夫婦は、とてもお育ちがいいというか、お二人ともハーバード卒のお坊ちゃんお嬢さんだった。Fワードなんて!って感じなんだろう。日本だとこれに該当する言葉はなんだろう。「まあ、治安が悪い」と思われる言葉が思い浮かばないのは、僕が治安の悪い場所で生まれ育ったからかもしれない。UワードとかKワードしか浮かばないけれども。

 

そんな治安の悪いセントラルで財布を落としても無事だった。このことを思い出したのは、数ヶ月前、名古屋でカードケースを落としてしまったということあったからだった。警察に届けて、3ヶ月。カードケースが見つかったと連絡があった。名古屋の悪口ばかり言っていたけれど、名古屋でも落とし物が見つかった。カードケースは道路に落ちていたらしい、もしかしたら気が付かれないまま数ヶ月放置されていたのかもしれない。革のカードケースにあまり傷はなかったけれども、革が少し伸びているような気がした。

 

そういえば、名古屋はオポチュニストが少ないのか、それとも、ただ気が付かないだけだったのか、その辺は、セントラル駅周辺のテラス席と同じようなことかもしれない。

 

しかし、子供ができてから、物をなくしたり、落としたりすることが増えたような気がする。移動や何かのときに、子供のことを優先して、自分のことにあまり注意をはらえていないからだろう。もう少し気をつけなくちゃと思った。