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家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

荷物紛失に困る!(ボストン篇)<ボストン界隈での引越。口コミサイトは強い>

今週のお題「引っ越し」

 

「調味料を入れたバッグの行方は?」(長女8ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

ボストンに来て二ヶ月ほど経ち、移転先も決まった。心配していた船便も無事に着いたので、問題なく引越しすることができる。

 

新居探しや契約のすったもんだや、移転先の汚さについては既に書いたと思うけれども、アメリカの洗礼はこれだけで終わらなかった。

 

ボストン界隈では、近距離の移転などは、荷運び用のトラックなどを借りて自分で運ぶのが普通のようだ。僕らが住んでいたモールデンにもそういったレンタカーのお店はあった。国際免許しか持っていなかったからそれが使えるのか分からないと思って、ネットや知り合いに相談した。

 

この手のことは、意外と解決しない。ネットの情報は古いこともあったりして、そのときのマサチューセッツ州の法律とは違っていることもある。また友人となると、英語ができる日本人は簡単に「免許取りにいけば1日だよ」と言ったり、現地の人はそもそも免許がある。国際免許でどうこうできるのかな? という疑問は解決しないままだった。

 

日本人で気軽に免許を取りに行っているのは、もともと英語が得意で、英語力があるためにボストンに来ているような人だったりする。僕レベルの英語力の人は、英語に興味もなくただ家族の都合で連いてきた人くらいだろう。英語ができない上に、不慣れな運転で免許を取るなんて、僕には無理だ、いっそのこと、リアカーで荷物を運んでやる! と思ったけれども、道に詳しくないならリアカー引越の難易度は意外と高いような気もする。

 

ボストンでよくやられているレンタカーでの持ち運びという簡単なお引越しの方法は諦めた。

 

そうなると運送業者しかない。この頃はまだボストンにある日通やヤマト運輸のことを考えてもいなかった。日通についてはその後も分からないままだけれど、ヤマト運輸は帰国のときにお世話になって担当の方がとても親切丁寧で感動すら覚えたが、まだ、このときは知らない。ネットで評判のいい運送会社にお願いすることにした。

 

引越しの当日。時間通りに来た。アメリカのことだから、15分や30分くらいは遅れて来るだろうと思っていたのに、時間通りだった。それだけで好印象だ。運んでくれる人も感じがいい。

 

日本でも運送会社はいくつか利用したことがある。レンタルルームに運ぶときなども活用し、運送業のおっちゃんやお兄さんたちの気持ちの良さは万国共通なのかもしれないとか思っていた。赤帽さんでいやな人に会ったことがない。

 

ボストンの二人の兄ちゃんたちもいい感じだった。僕には英語で、彼らの間ではスペイン語で話していた。運送会社は基本的に荷物だけを運ぶ。僕を現地に運んではくれない。僕は荷物じゃないからという理屈。20年以上前は運送屋さんが助手席に乗せてくれたものだけれども、最近はこういうことがどこも厳しくなっているんだろう。

 

荷物の中には、ボストンに来て二ヶ月弱で買い集めた調味料があった。使いかけではあるけれど、ちまちま買い集めていた。醤油や味噌、それに近くの中華系スーパーマーケットで集めた二つの醬(ジャン)。

 

中華系スーパーマーケットのピータンの棚についてはもう書いた。そこにはまだびっくりするものがあった。その一つが醬(ジャン)の棚だ。15mくらいさまざまな醬が並んでいる。これが中華料理の歴史というものか、と改めて中華のすごさを感じた。

 

僕はなんだか分からない醬にはまだ挑戦できなかった。豆板醤と甜麺醤くらいしか醬は使っていない。帰国前には他の醬も試してみようと思った。

 

醬や食用オイル、塩や胡椒、そんなものを防水バッグに入れた。このバッグは僕が警備員の仕事をしているときに濡れたら困るものを入れるために釣具屋さんで買ったものだ。スエーデンだかどこかのバッグで、5000円くらいで買ったのを覚えている。

 

調味料などが入った防水バッグを、兄ちゃんに渡した。割れ物が入っていることを伝えると、兄ちゃんは助手席に置いた。そして、兄ちゃんたちを見送って、僕は電車で新居に向かった。あとから思えば、ウーバーでも読んでおいて一緒に行けばよかったのかもしれない。まだアメリカ生活に慣れていなかった。

 

新居には妻が長女と待機していた。乳児を抱えているので作業を手伝うことができないことは伝えてある。荷物を置く場所は、部屋のキッチン前という指定は予約のときにもしているし、当日の打ち合わせでもしていた。

 

新居の最寄駅から歩いているときに、兄ちゃんたちが荷物を置いて、最終確認をして帰ったと妻から電話があった。

 

新居に僕が確認をすると、防水バッグがなかった。

 

助手席に置いていたから、出し忘れたのだろうと、運送会社に電話すると、確認して折り返すということだった。

 

「荷物を確認しましたが、ありませんでした。最終確認もしていただいているので、これ以上は何もできません」

 

そんな対応だった。どうにもならなそうだ。

 

アメリカにはYelp!(イェルプ)という口コミサイトがある。そこに、妻が書き込みをした。

 

「時間通りにきちんと訪問し、迅速に搬入搬出をした。彼らは素晴らしい。しかし、彼らは荷物を一つ紛失した。紛失荷物に関して問い合わせても、荷物は最初からない、という対応だったのは残念だ。作業は素晴らしかったが、荷物を紛失し、対応もひどかった」

 

とか書いた。運送会社から連絡があった。補償するからYelp!の書き込みを削除して欲しいということだった。

 

「書き込みは削除しないけど、補償してくれたなら、後日補償があった、という追記はする」

 

という話になった。そして書類が送られてきた。書類は以前使ったものが使い回しなのが分かるくらいデータの消し残しがあり、書類の内容も「二度と利用しないし、当社を訴えることはしない」みたいなことが書いてあった。

 

「これじゃ、この運送会社と事故を起こしても訴えられなくなる」と妻が電話で交渉した。

 

妙な文言は訂正されて、まともな書類が送られてきた。請求額は空白だ。好きなだけ書けるといえば書ける。しかし、そこで5000ドルとか書くと、こっちがやばい人になってしまうので、バッグと調味料の代金をやや下回る額を書き込んだ。Yelp!にも追記した。

 

後日、アメリカの友人に話すと、「ラッキーじゃないか!」と驚いた顔をしていた。なんでと思って聞くと、「大金を請求すればいいんだ!」と言われた。僕らの請求額を聞いて、アホを見るような目で見ていた。