上機嫌に困る!<上>(自閉症児篇)の続きになります。
環境の変化に弱い自閉症児にちょっと過度かもしれないくらいに、ご機嫌伺いをしていたら、長女は、上機嫌と多感のアップダウンが激しくなってしまった。何が正解か分からないまま、手探りで引越準備をしていた。長女は上機嫌なのだけれど、どこか不安定になっていた。この不安定さは、なかなか人には伝わらない。僕もどうしたらいいのか分からないし、一見、機嫌のいい、そして明るい良い子にしか見えないのだから。
困ったことがあった。
上機嫌と多感のアップダウンは引越後もしばらく続いた。
引越してから10日以上経過した今は、妙な上機嫌はなくなり、落ち着いてきたようにも見える。新しい保育園も気に入っているようだ。新しい靴を履いて、新しい靴を着て、新しい保育園の帽子を被って、静かにニコニコとしている。
引越してきて、数日、長女が無理していることが表面化してきた。上機嫌と多感、それに合わせて、長女にも理解できないお漏らしがあった。
理解できないお漏らし、それだけ書くと意味不明だ。
長女は年中さんになってから、日中はパンツで過ごしている。お漏らしもすっかりしなくなり、おしっこもうんちもちゃんと僕や妻に伝えて、おしっこはトイレ、うんちはおまるでやれるようになってきた。保育園ではうんちは我慢しちゃうみたいだけれど、おしっこは1人でできるようになったと担任の先生が教えてくれた。家では、うんちもトイレでやれるように何度も挑戦したけれど、引越前は一度もできなかった。
引越後、トイレでうんちができるようになってきた。これは引越したらトイレでうんちをしようね、と何度も約束していたからなんだけれども、環境の変化に合わせて、いろいろと切り替えることができたのかもしれない。
トイレでうんちもできるようになった。そして、長女にも理解できないお漏らしという話になる。
お風呂に入れようと、長女がパンツを脱ぐと、コロリンと茶色い物体が落下した。
「うんちしちゃったんだね」
「してないよ」
「ほら、これうんちだよ」
「うん」
そして、長女のおしりを拭いて、お風呂に入った。なんだかいつもと雰囲気が違っている。そして次の日もまた、長女がパンツを脱ぐとうんちがあった。
「うんちあるよ」
「うん」
目を合わせてくれない長女。またお尻を拭いてお風呂に入った。
このお漏らしの2回とも、その前に長女はトイレでうんちをしている。うんちを前もってしていたから、コロリンとしたちょっとしたうんちくらいしか出てないわけなんだけれども、なんだか、普通のお漏らしとは違っていた。
思い出してみると、引越前にも不思議なことがあった。お風呂にうんちが浮いていた事件と我が家で言われているものだけれども、このときは、誰がうんちをしたのか分からないままだった。次女と三女は、うんちが大好きなので、自分でうんちをしたときには誇らしく「うんちしたー」というけれど、このときは「してない」と言っていた。しかし、長女が湯船の中でうんちをするなんてことは、乳児の頃を除いて、一度もなかったことなので、次女か三女がしたとばかり思い込んでいた。
きっと、あのときのうんちも、長女がしたものなのだろう。
二日連続のうんちお漏らしの次の日、長女がパンツを脱ぎながら、妻に言ったらしい。
「今日は、茶色いのないね」
長女は、うんちと言うことはできるというか、園児にとって「うんち」という言葉は、もっとも早く覚え、連呼する言葉なのだから、単語も意味も完全に理解できているのは、説明する必要もないことなのだけれども、このときの長女は、「うんち」と、日毎、誰に頼まれもせずに連呼する言葉を、避けていた。
長女にとって、二日続いたうんちのお漏らしは、どうやら「パンツの中に茶色いものがあった」ということになっているらしい。お漏らしではないし、うんちでもないということなのだろう。
そして、不思議なことに、この日から、長女は少し落ち着き、上機嫌すぎることも、多感すぎることもなく、数ヶ月前の長女の平常運転に戻り始めた。