いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

統合保育に困る!(自閉症児篇)<保育園ガチャもあると思う>

「統合保育の理想と現実と嘘と誤魔化し」(長女3歳6ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

長女が入園してから、保育についての面談があった。僕らもいろいろと聞きたいこともあったし、自閉症児である長女の保育で保育士さんも戸惑っていることもあるかもしれないと思っていた。

 

入園前の面接では加配担当の配置等分かっていないことも多かったので、実際に入園してから詳しく話してもらうことになっていた。

 

面談に行くと、すれ違いで園長が出て行った。会議か何かがあるらしく、園長不在で面談をすることになった。面談相手は主任と担任の2人。僕たちも夫婦2人。

 

まず長女の発達と自閉症、軽度知的障害の症状を詳しくお話しすることになった。担任が書き込んでいるシートには、「自閉症の疑い」と書いてあった。

 

自閉症の疑いではなく、自閉症と診断されているので訂正をお願いします」

 

と3回くらい言ったけれども訂正はされなかった。障害児を育てていない人にはなかなか分かりにくいと思うけど、「自閉症の疑い」と書かれることは長女の世間的な体裁としては良いのかと思う人もいる。しかし、この「疑い」はなかなか厄介で、「疑い」とされてしまうと、長女に起きている困ったことが「子供はみんなそう」という一般的な話で済まされてしまうことがある。そういう経験を帰国してから嫌というほど味わった。

 

障害者は障害者として扱われることで、制度や法によって権利が守られていることがいくつかある。「疑い」にしてしまうと、その権利が剥奪されてしまう。

 

アメリカでも日本でも専門医によって<自閉症>と診断され、愛知県からは愛護手帳を交付されています。「自閉症の疑い」ではなく、「自閉症」と訂正してください」

 

そう言っても訂正されなかった。

 

「このくらいの年の子は発達にも個人差があるので、自閉症と決めつけるのは」

 

と、聞き飽きた反論があった。

 

「専門医によって診断されているのですけれども、先生は専門医の診断を否定するだけの根拠があるのでしょうか?」

 

沈黙。そして訂正もない。どうやったらこの人たちと話ができるのだろうかと僕も困ってしまった。

 

面談の時間は限られているし、長女のためにはもっと聞いておかなければならないこともあるということで、「自閉症の疑い」が「自閉症」に訂正されないことに言及するのはやめた。これ以上の同じことで話しても相手が沈黙するだけなのだから。

 

加配制度について聞いてみた。僕らは加配申請もしているし、入園前の面接でも加配申請することは話してある。

 

「加配担当は3時間だけ付きます」

 

「3時間ってどういうことですか?」

 

名古屋市の決まりなんです」

 

「そんな話はじめて聞きましたけど、どういうことなんですか?」

 

名古屋市の決まりで、加配担当は加配児童1人につき1日3時間となっているんです」

 

「朝から夕方までいるのに3時間しか付いていてもらえないんですか?」

 

名古屋市は総合保育なので、加配担当も加配児童についているわけじゃないんです。園全体のフォローをするのが加配担当です」

 

もう意味が分からなかった。このあと加配について何度も質問した。その質問も、「統合保育」という方針を説明するだけだった。加配担当が「園全体のフォロー」というのがさらに意味不明だったのでどういうことか聞いてみた。

 

「統合保育は障害児と健常児を区別せずに、一緒に保育するんです。加配担当も障害児だけの先生というようにはせずに、クラス全体のフォローをするようにしています」

 

園全体のフォローは言い間違いだったようで、クラス全体のフォローと訂正が入った。しれっと訂正していた。

 

「統合保育については分かりましたけれど、1日3時間、それもクラス全体のフォローの加配担当では、障害児に必要なフォローができないと思いますが」

 

名古屋市の決まりなので仕方ないです。大規模園は1人1人の園児にかける時間がどうしても少なくなってしまうんです」

 

「加配担当の方のお名前や紹介はしていただけるのでしょうか?」

 

「名前も教えることはできません」

 

唖然とした。加配が1児童あたり3時間という決まりもびっくりしたけれども、加配担当の名前も教えてもらえず、そして、「統合保育」というそれらしい美名を使うことで、加配担当は誰なのか何をしている人なのかも分からないことになっている。

 

僕はまだこのとき、統合保育についても、名古屋市の加配制度についても詳しくなかったので、保育士、とくに園長に準ずる責任者である主任から何度も言明されてしまうと、それを信じるしかなかった。

 

そして面談は終わった。長女は発語が遅れているため、トイレの意志を伝えることが困難であるため、トイレの促しをして欲しいことと、言葉での指示は理解ができないため、何度も同じことを言葉で指示したり、厳しい言い方をするとパニックを起こしてしまうこと、それに伴い視覚支援を用いて欲しいことなどを話した。視覚支援については全く知らなかったようなので妻が持参した手作りの視覚支援のノートなどを見せた。また、パニックになったときの対処法なども話した。

 

この面談のあと、統合保育と名古屋市の加配制度について僕は調べた。

 

統合保育は理念としては素晴らしいが、実際には多くの困難がある。デメリットとしては、加配児童が放置されてしまうということだった。面談で話を聞いてまっさきに思ったのはこれだった。園全体、クラス全体のフォローを加配担当が行うことで、その間、加配児童が放置されるのは容易に想像がつく。もし、統合保育をキチンとやろうとするなら、加配担当は1人に1人じゃ足りないくらいかもしれない。統合保育の美しい理念の元で、実際には放置される障害児がいる。しかも、障害児と診断を受け、加配申請までしているにもかかわらず。

 

名古屋市の加配担当の加配児童1人につき3時間というのも調べてみた。どこにもそのような説明はなかった。そもそも、名古屋市で加配制度がどのように運営されているのかという情報もない。全国で見てみると、3時間というのはかなり特殊な加配制度の運用になるみたいだった。

 

この後、長女が保育園に行くのを嫌がって泣き出したり、長女を頭ごなしに言葉で叱っている保育士を見かけたり、療育に行くために長女を早く迎えに行ったときに長女が1人で他のクラスにいたり、降園時に泣きながらお漏らしをしていることもあったり、オムツがパンパンなままだったり、連絡帳は1ヶ月に2回程度しか書かれないことだったり、他にも多くの違和感があったので、僕は調べまくって、各所に相談することにした。