打ち合わせに困る!<上>(新築編)の続きになります。
注文住宅を建てると、打ち合わせが大変だ。いろいろ話しても実際に見ているわけでもないから素人には分からない部分もたくさんある。じっくりと話し合う打ち合わせの日々は続く。そんな中、ずっと気になっている間取りがあった。
困ったことがあった。
出来上がった図面は一箇所だけどうしても気になる部分がある。とはいえ、それはもうどうしようもない部分だ。
うちは5人家族で、3人姉妹。それぞれに狭くてもいいから個室を作るというだけでもパンパンだ。トイレは各階に1つだし、洗面台も各階にとなると当然無理も出てくる。僕が不満というか気になっているのは、2階に上がったら目の前に洗面台が来てしまったことだった。この洗面台を可愛らしい瀟洒なものにしてもいいのかもしれないが、三人姉妹と妻の洗面台使用を考えたら、可愛らしいちょこんとしたものよりも実用的な物が必要になる。そして、階段の正面に洗面台があるのは使い勝手が良さそうだから、見栄えはさておき、我が家においてメインで使われる洗面台になるだろう。そうすると、実用性が重んじられる。
1階の洗面台は妻の夢を叶える洗面台で、横に広くて可愛らしいものになった。この洗面台は子供たちの部屋から最も近いため、子供たちもたくさん使うだろう。きっとメイクとかなんとか僕にはよく分からないことをそこでするんじゃないかと思っている。僕が心配したのは姿見の奪い合いだったから、姿見のスペースを2箇所ほど確保することだった。
2階の洗面台の位置は実用性からすれば申し分ない。ただ雰囲気としてどうかと思ったくらい。僕の部屋からも違いから僕だってよく使うことになるだろう。
打ち合わせで困るのは、こういう答えがでないやつだった。
実用としては最適だし、他の部屋とのバランスもいい。なんとなく、階段の正面が変かな? と思った程度で、それに本気の洗面台だから変な気がするだけで、可愛い洗面台にすれば変でもないかもしれない。
洗面台の位置を変更しようか、それとも洗面台を変更しようか、と悩んでいた。
2階の洗面台の位置をずらすとなると、トイレの位置もずらす必要があり、トイレもずらすと僕の部屋をずらすことになる、そうなると、今度はトイレや洗面台が奥になってしまって、それはそれで使いにくい。やはり、2階の洗面台はあの位置しかない。
では洗面台を変えるか? とパンフレットを見てみると、可愛らしいものもあるし、小さいのもある。しかし、そんな小さい洗面台で、僕らの需要が満たせるだろうか。可愛いことよりも、5人家族なら実用性が重視されるのが洗面台なのではないだろうか。
「子供たち3人が出て行ったら、この2階の洗面台は侘びた雰囲気のあるものにしたい」
と妻に言ったら笑っていた。
2階の洗面台の位置も種類も変えずに、もっとも気になりながら、これだけは当初のプラン通りになった。この洗面台以外は、細かい部分も合わせれば全部、何らかの変更が入っているのだから不思議なものだ。
そういえば、唯一だと思うけれど、僕らが変更したいと言って、営業さん、設計士さん、インテリアコーディネーターさんの3人が「え?」となったのは、玄関のシューズクローゼットの扉をなくすという要望だった。この扉は「あった方がいい」というのが御三方の意見だったけれど、僕は一度、家を建てて、住んだ経験がある。その家でもシューズクローゼットに扉をつけていた。この扉が邪魔で仕方なかった。いつも開けっぱなしになっていた。そのときのドアとは違って、引き戸にすればいいという提案もあったけれども、戸袋部分にニッチをつけたいというのもあるし、結果的に、どうせ開けっぱなしになるのだから、扉はいらないということなった。
シューズクローゼットの扉で調べてみると、何人かの施主さんは扉はいらない、と書いていた。僕と同じ理由で、結局、扉の開閉が億劫になって開けっぱなしにするから、という理由だった。目隠しとして必要かもしれないけど、わざわざ人の家のシューズクローゼットを覗こうなんて、ましてや、その乱雑さを気にするような友人は家に上げたくもないものだ。
それに、僕は靴を集めて、磨いている。どちらかというとちょっと見てほしいくらいのところがある。こんな理由はちょっとあれだけど、つまり、僕らには扉はいらない。合理的、実務的な理由と趣味的理由が合致した。
設計士さんと、僕らが変えたい理由やなんやかやを他の部屋でも話していると、「うちも家を建てて、その部分を変えたいと思っていたんですよ。たしかにおっしゃる通りですよね」なんて言われた箇所もあったりする。また、三井さんの設計士さんは他の設計士さんとも相談しているようで、「他の設計士にこのドアノブの部分は開けにくくなるので開く位置を逆にしたらいいと言われました」といって変更もしてくれる。
打ち合わせは大変だ。一人で抱え込んだら、頭がパンクしてしまう。
けれど、三井さんのように、僕らの意見をたくさん知っている営業さん、そして最初に設計に携わった設計士さん、強度や配管などを中心に見てくれる設計士さんとその同僚、そこに頼りになるインテリアコーディネーターさんと頼もしい仲間たちがいる。みんなで家を作っているという感じがとても楽しかった。
僕は資材とかいろいろと調べすぎて、毎日寝不足だった。