「新しい靴を二足も買ってしまった」
困ったことがあった。
最近のことだけれども、新しい靴を二足も買ってしまった。それぞれ買った経緯は別なんだけれども、二足とも2,3年前から欲しかった靴だった。
一つは、ALDEN(オールデン)というアメリカの靴会社の靴だった。その靴は、コードバンという馬の革を使った綺麗な靴で、一足は欲しいと思っていた。990というのは、オールデンの中でも定番というか、はじめてオールデンを買おうかなと思った人が一度は考える靴らしい。
ボストンに住んでいるときに、何度か買おうかと思ったことがあった。ただ、ボストンでは僕のミスでネットバンキングができなくて、お金がおろせなかったし、日本の銀行から引き落とされるクレジットカードも、カードをあまり使わない生活をしていたので、限度額が低く、オールデンの靴は買えなかった。
そして、ボストンの物価の高さもあって、ボストンにいた二年間は緊縮財政だったし、他にも優先的に買うものがあった。マサチューセッツ州の会社でもあるオールデンなのに、僕は後回しにしていた。
こういうのって不思議な物で、ボストンに住んでいるときには、欲しいは欲しいけど、財政を圧迫させてまで欲しいわけでなかったオールデンの靴が、帰国してからは欲しくて欲しくてたまらない気持ちになってしまった。
しかし、日本で買うと12万円くらいしてしまう。ボストンでは750ドルくらいだったことを考えると、なぜボストンで買わなかったのだろうかと、悔やんでも悔やみきれなかった。それにオールデンの専門店が近所にもあったと言うのに。
帰国してからはオールデンを買うのを諦めていた。そして他に欲しい靴がいくつもあったから、ネットバンキングが使用できなくて凍結していた僕の口座から、ちょくちょく欲しい靴を買って満足していた。僕は靴道楽に目覚めていた。
でもやっぱり欲しくなってしまった。
名古屋でオールデンを扱っている店に行っては、僕の探している990がないか聞いてみた。なかなかないようだった。もう他のでもいい気がしてきた。というより、オールデンのことをブログで書いている人たちの記事を読んでいると、990も素敵だけれども、他の靴がもっと魅力的に見えてきてしまった。何足も欲しくなってしまうじゃないか、オールデン。
と、そんな感じで悶々とした日々を過ごしていた。
そして、別の問題が発生した。家を建てる計画に伴い、僕はお小遣い制になってしまった。オールデンを買うためには数ヶ月我慢しなければならなくなった。
買えないとなるとやっぱり欲しくなるもので、名古屋ではなかなか手に入らないとしても、アメリカでなら買える。アメリカの友人に頼めば、直接輸入ができないオールデンでも買える。そんなことを思いながら、アメリカの靴屋さんのHPを何度も見ていた。日本で買うよりは安く買えるとしても、送料や関税もかかる。関税なんて消費税と同じくらいだから、あまり気にする必要もないかもしれない。気になるのは、試着ができないということだ。高い靴で試着ができないのは危険だ。
日本で試着してお店の人と相談しながら買いたい。お小遣いを貯めて、買いたい。そんなことを思って、990は諦めて他のを買おうと思った。気に入ったのがあった。でもサイズがなかった。
ヤフオク!を見てたら、調べに調べ尽くしたオールデン990の多分、僕に合うだろうと思われたサイズが見つかった。試着のみの状態の靴だったので、状態も悪くなさそう。試着のみとはいえ中古なので新品で買うよりも安い、サイズで失敗してしまったとしてもショックは少ない、とはいえ、失敗前提にするには高い。迷ったけれども、買った。
履いてみると、シュッポと空気が抜ける感じで履けた。サイズとしてはぴったりかややタイトかもしれない。
革靴のサイズ感ってほんと難しい。ネットで調べてもタイトなのを選べとか、タイトはやめろとかいろいろだ。でもそれって、毎日のように履く人と、革靴を何足も買っていて1ヶ月に数回しか同じ革靴を履かない人でも変わってくる。僕の場合は、タイトで買うより、ジャストくらいがいい。革がブカブカになるほど頻繁に同じ靴を履かないからだ。
オールデン990は、ちょっとタイトだった。試し履きをしてみると、右の甲が少し痛いような気がした。数時間履いてみると、左の踵が靴擦れした。馴染ませればいい感じになるかもしれないと思って、オールデンブログを見てみると、馴染むまで数ヶ月かかったという話がよく出ている。なかなかの修行だ。でも、僕も馴染ませるために、最初は革靴ルール(履いたら二日開ける)を無視して、ガンガン履いてみようかと思った。
そしてそのタイミングで、別の靴を買ってしまった。こちらはクレジットカードのポイントが溜まったら買おうと思っていて、そして溜まったので買ったというものだった。仕事で山道のある場所に行くことになっていた。山の間にあるような場所に行かなくちゃならないし、アウトドアの靴を履いていくのはやりすぎに思われるような場所。カジュアルな靴でもいいけど、アウトドアバリバリはちょっとダメな雰囲気のメンツだ。そのために、パラブーツという靴屋さんのミカエルというのを買う予定だった。アメリカで買ったダナーのダナーライトよりは本気感がない靴だと思った。
パラブーツは何足も持っている。これも慣れるまでちょっと時間がかかる。オールデンを慣らしたいのに、パラブーツも馴染ませたい。旅先で靴擦れはしたくない。アメリカで買ったダナーライトは日本でも雨の日になると履いていたものだから、革も伸びて、履き心地がいい。ダナーなら靴擦れはしないけれども、脱ぎ履きが多いから靴紐が大変だ。そうなると、比較的脱ぎ履きが楽なミカエルにしておきたい。でも、靴擦れはきつい。
そんなことから、僕の靴擦れの数週間が始まった。このところ、いつもどちらかの踵が痛かったり、甲が痛かったり、小指が痛かったりしている。
旅先のミカエルは三日間履き続けて、小指に少し水脹れができている程度だった。靴好きにとっては靴擦れもまた楽しいものだ。オールデンはまだまだ馴染んでくれない。いつか慣れてくれる日を楽しみにしながら、踵の捲れた自分の皮を撫でています。