いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

宿泊体験に困る!<上>(新築篇)<決心が揺れる宿泊体験>

「宿泊体験の説得力」

 

困ったことがあった。

 

土地がまだ決まる前に、三井ホームさんの宿泊体験に申し込んでいた。同時期に、一条工務店さんの宿泊体験も申し込もうと思っていたけれども、一条さんは大人気ということもあって、宿泊体験は予約でいっぱいだった。

 

いくら大人気の一条工務店とはいえ、宿泊体験の予約が全く取れないのは何か訳があるんじゃないかと思って調べてみると、宿泊すると食事券みたいのがもらえたり、ビールが冷蔵庫にあったりするようだ。素敵すぎる。これじゃあ、家を建てるつもりがなくても僕のように汗ばむ部屋から逃げ出したい人も、ビールが飲みたい人も行きたくなってしまうだろう。

 

一条工務店さんで建てる気まんまんだった僕は、無料のビールに惹かれたというのは心のどこかに隠しながら、宿泊体験ができないことが残念に思っていた。

 

三井ホームの宿泊体験はすぐに予約できた。友人から紹介された営業さんにはじめて会ったときに宿泊体験をしてくださいと言われたというのがある。

 

「いま、第一候補が一条さんと思っているので、三井さんを選ばないかもしれないんですけど、それでも宿泊体験させてもらえるんですか?」

 

「もちろんですよ。一条さんになったとしても、家を建てる参考にしていただくだけでも構いません。お子さんが多いので、タクシーで来ていただければ交通費も負担させていただきます」

 

え、なに、この紳士。営業のSさんの物腰の柔らかさと、新築の住宅を検討しているすべての人のために尽くしたいみたいな対応に、尊敬を通り越して、ちょっと引いた。横綱相撲ってこういうことかもしれない。横綱になったら張り手はしないのか、と横審みたいな気持ちになった。

 

そんなときに、ふと思った。子供の頃、僕は相撲が好きだった。その頃は、千代の富士が大活躍だったけれども、若貴も出てきたり、寺尾が男前だったり、曙とか、舞の海とかいて結構面白かった。そのあともときどき相撲を見ながら、ヒール役だった朝青龍を好きになってみたり、白鵬が苦手だったりした。白鵬が横審に言われたのが、「横綱相撲じゃない」ということだったと思う。ハングリーさとか合理性とか擁護することはできるけれど、相撲、特に横綱という特別な存在は、スポーツのチャンピオンというよりも、儀式の代表者みたいなものなので、ハングリーや合理性よりも、どーんとした雰囲気の方が大事だよなあと漠然と思っていた。

 

三井ホームさんの横綱相撲は好ましいものだった。僕の好きな一条さんは、竣工数日本一だったり、性能でいろいろと話題を集めて、実質的な実力はナンバーワンかもしれない。相撲だったら横綱に選ばれてもおかしくないというか、もうハウスメーカー界の横綱になっているんじゃないかと思っていたから、打ち合わせなどでちょいちょい他社メーカーを張り手みたいにディスるところが、白鵬を思わせた。白鵬が好きな人もいるから、それはそれでいいのかもしれないけれど。

 

見学気分で申し込んだ三井さんの宿泊体験の前に、一条さんとの打ち合わせがあった。打ち合わせをしながらなんか微妙な気持ちになった。性能や明朗会系っぷりは頼もしいんだけれども、間取りなどの話は一向に進まない。どんな家にしたいのか分からなかった僕らも、だんだん明確になってきたというのもあって、性能以外の具体的な話がしたかった。予定してた35坪では収まらないことも分かってきた。40坪から45坪くらいに広げないといけないとか、そのときの間取りはとか、妻の書斎や僕の書斎などもいろいろと話したけれども、反応がイマイチだった。

 

三井さんの営業Sさんに、割と本気のメールをした。一条さんに出した間取りの要望をそのまま三井さんに投げてみた。そして見積もりもお願いした。紳士のSさんからは、宿泊体験のときに大雑把な見積もりと間取りの提案もお持ちしますということだった。一条さんでも二回目の打ち合わせで間取りと見積書はもらっていた。

 

でも、お高いんでしょう? と深夜の通販みたいな気持ちで、三井さんの見積もりのことは考えていた。オプションや諸経費抜きで坪単価100万円とかするのなら、予算オーバーする。

 

宿泊体験当日。生憎の雨、タクシーで乗り付けると、紳士が傘を差しながらやってきた。というか傘を差しながら家の前で待っていた。妻と子供たちを紳士に任せて、僕は荷物を抱えて家を見た。素敵だった。素敵すぎた。

 

宿泊体験の前に、三井さんのパンフレットを見ていた。妻のお気に入りはLucasルーカスという商品だったけれども、2階リビングだけはいやだった僕は、Sonomaソノマがいいんじゃないかと思っていた。宿泊体験はSonomaだった。

 

一条工務店さんの無機質な個性のない外観が僕は好きだった。みんな同じに見えたからって何だというのだろう、外壁の性能を見よ、と思っていた。団地で育った僕には外観が一緒ということに抵抗はない。逆に外観ばかり気にするのもどうかと思うくらいに思っていた。

 

しかし、三井さんの外観を見ると、これはこれで楽しそうだと思ってしまった。僕は、家は、コスパ。という考えから少し離れてしまった。人はコスパのために生きるにあらずとか言い出していた。

 

「宿泊体験に困る!」<下>に続く。