地域に困る！＜中＞（ボストン篇）の続きになります。
ボストンには二年しか住んでいない。だからあまり知らないと言えば知らない。ただ、二年住んだくらいの範囲でなら分かることもあるし、渡米前の僕に伝えるのなら、という感じで相談にも乗ったりしている。
ボストンに住むのならどこがいいのだろうか。車もなかった僕らのボストン生活で思ったことなので、車生活の人はまた別の視点になると思う。
困ったことがあった。
最初に住んだモールデンは、ほどよく田舎な場所だった。日本人はほとんど見なかった。ボストンでできた友人に聞くと、モールデンは子育てしやすい街で有名ということだった。公園も多かったし、大型スーパーも二つあった。図書館の無料英語教室も親切で感じが良かった。悪い雰囲気はなかった。結構、おすすめかもしれないけれども、乳児や幼児までなら住みやすいという感じかもしれない。子供が大きくなったら、どうなるのかは想像がつかなかった。家賃は広めのワンベッドルームで1600ドルくらいだった。当時は円安でもなかったから16万円くらい。
その次に住んだのは、妻の職場からも行きやすい場所ということで、サマービルという場所だった。最寄駅は、レッドラインのハーバードスクエアとセントラルになる。病院が多い地域で、スーパーも多い、公園も充実しているし、レッドラインは便利だった。最寄駅もそれなりに賑わっているので、街に出やすいというのもよかった。あとは、行政サービスもよくて、自閉症児の長女のフォローは無料で行われた。家賃はツーベッドルームで2000ドル、20万円くらいだった。
僕らが住んだのはその二つの地域だった。どちらも日本人が幼児を育てるには悪くない環境だと思った。家賃もボストンにしては抑えめだ。
知り合いの何人かは、エールワイフというレッドラインの終点に住んでいた。ここは住宅地になっていて、綺麗なアパートメントがたくさんある。家賃はそれなりに高くて、聞いたところ、2500ドルから3000ドルだった。多くの人が満足しているようだったけれど、雪のときにどこにもいけないとか、スーパーが遠いとか、車がないと不便とか、レッドラインが途中で止まるとか、そんな話もあるようだった。まあ、日本人で1,2年しか住まない人たちは、ボストンで浮かれている人も多いから、不満を言う人の方が少ない。特に、子供がいない人たちは、ボストン、そしてアメリカを満喫しているから、住んだ地域の不満などはないようだった。
日本人で小学生以上の子供を連れている人の多くは、ブルックラインという地域に住んでいた。僕は詳しく知らないけれど、その理由は、病院や学校に日本語が話せる先生がいるということらしい。日本人なのか、日本語ができる人なのか、日系なのか、そうじゃないのかなどは分からない。評判はまちまちだった。出産がらみでその辺の病院を使った人は、カウンセリングだけで9000ドルかかったとか、誤診があったとか聞いたけれども、英語もままならない人がアメリカの病院に行くのは不安だろうし、日本語で対応してくれるというだけで安心する人もいるだろう。
また、日本人が多く住む地域ということもあるのか、遠い異国の地に身よりもなく来た場合、所属先があって働いている人はそれでいいけれども、主婦あるいは主夫は頼れる人も、話す人もいないというのが結構きつい。自治体の問題がここにある。それに子供のことをどうするのか、というのも大きな問題だ。そんなことから、ブルックラインが日本人家族に人気なのだろう。
僕らも最初は、ブルックラインに住もうと思った。ボストンから電車に乗ってブルックラインを目指すと、なんだか綺麗。ボストンって素敵な街だなあって思う。で、ブルックラインは素敵な街で、こじんまりとしているけれども、綺麗で、お店もおしゃれな感じだった。
「なんか澄ましている気がして感じが悪い」
と妻が言った。僕はちょっとおのぼりさん気分だったので、その澄ました感じにやられていたから、えっ？と思って妻を見てしまった。言われてみれば、東京だったら僕が落ち着かないとか思う街みたいだ。
結局、僕らはブルックラインに住むのはやめた。澄ましていて気に食わないという理由じゃなくて、妻の職場に行きにくいという理由。それに、当時、子供はまだ1歳。僕と家にいることになっているから、モールデンでもブルックラインでも、サマービルでもあまり変わらない。
そんなことで、僕らはサマービルに住んでいた。
小学校くらいのお子さんがいるのなら、ブルックラインがおすすめなんだろうと思う。それに、主婦や主夫のことを考えると、助け合える自治体があるところがいいとも思う。僕の場合は、サマービルのマーケットバスケットというスーパーマーケットが大好きだったから、サマービルでよかったけれども。
