いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

独立自治に困る!(自閉症児篇)<僕が求めた合理的配慮は正当な要求だった>

「指導はできないが踏み込んだ説明はできる」(長女3歳10ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

自閉症で軽度知的障害の長女の合理的配慮をめぐって、保育園の担任、主任、園長と相談したけれども、保育園や名古屋市の規則を理由に合理的配慮はなされず、社会福祉協議会も「園長と話し合いを」という提案のみだった。市役所は事実と状況確認で1ヶ月以上放置、市議は議会と政党を理由に静観、新聞社も共感されないから記事にはしないということになった。

 

僕は市役所からの返事を待つ間に、いろいろと調べていた。保育園に関しては児童福祉法が参考になった。児童福祉法にある育児の相談に乗る義務みたいなものを長女が通う保育園では順守していない。3人の幼児を保育園に通わせていると、保育園の規則がきついこともある。そのとき担任の先生や連絡帳に相談を持ちかけると、「大変ですね」と言われて終わりだ。これが相談ということなのだろうか?

 

長女の場合は、障害者差別解消法というのが該当した。障害者が社会的障壁を感じていることを施設などは合理的配慮によって障壁を除く努力をしなければならないというものだ。保育園はちなみに福祉施設なのだからより一層、そのような努力が求められている場所だろう。もちろん、人材的な負担や経済的な負担が大きくなるような合理的配慮はなかなかできない。そのため、合理的配慮といってもできることとできないことがある。可能な範囲においてなされるのが合理的配慮だ。

 

僕らの要望は、発語ができない長女のために、トイレの有無、昼食の有無のチェックシートを作って欲しいということと、トイレへの促しを普通よりも少し多めにして欲しいこと。それと、普段と違うことをやるときには、言語の認識能力が低いので言葉だけじゃなくて、絵や写真を使って行事などの説明をして欲しいということと、普段と違う保育をした場合は保護者に教えて欲しいということだった。普段と違うことをやると、長女は突然癇癪を起こしてしまったり、夜驚がはじまる。自閉症児が運動会の練習がはじまると夜驚が出ることは、よくあることらしい。突然の癇癪や夜驚も、前もって原因がわかっていれば、僕らの対応も変わる。寝る前に行事の説明など長女にすることで、長女は落ち着くからだ。

 

僕らが求めている合理的配慮はこのくらいのことだった。僕からすれば非常識な要望でもないと思ったけれども、当事者はときに大袈裟だったり、非常識なことを求めてしまうこともある。しかし、これまで相談したところでは、僕が求める合理的配慮が適切かどうかといったようなことも助言や判断はしてくれなかった。

 

相談はどこにすればいいのだろう? 名古屋市役所に問題があると思っていた僕は、愛知県に相談してみた。愛知県では名古屋市について何も言えないそうだ。名古屋市政令指定都市であり、独立自治が認められているため、県から市に指導することができないということだった。

 

総務省の機関に電話してみた。担当の人がいい人で、独立自治についても詳しく教えてくれた。また、役所というのは他部署から言われるのを嫌うので、どうにもならなかったら、名古屋市の他の部署にも相談するとその部署から当該部署にも問い合わせが入るため、役人は動かざるを得なくなり、黙殺はされないだろうとアドバイスをしてもらった。このアドバイスはありがたかった。そして厚生労働省内閣府に連絡してみたらどうかとも言われた。

 

内閣府は、障害者差別解消法をやっているところだ。しかし、電話口の担当者に説明をすると、ぞんざいな対応だった。内閣府に相談されても困るみたいな感じ。関係ないということですね? と聞くと、苛立ったような感じで「関係ないです」と言っていた。部署も名前も控えてある。そのあと調べると、内閣府は関係ある問題だった。内閣府が出した法令のようだ。

 

厚生労働省に電話してみた。ここの担当はとてもいい人で、親身に相談に乗ってくれた。これまでのやり取りで最も相談に乗ってくれて、いろいろと動いてくれたのは、厚生労働省の役人だった。役人にも当たりハズレがあるが、この人はとてもよい方だった。

 

厚生労働省は障害者差別解消法の担当ではない。しかし、保育園や児童福祉に関しては担当だということで、保育園が法令に違反している場合には問題として捉えるということだった。ちなみに、厚生労働省の方に内閣府のことを言うと、「内閣府が関係ないというのはおかしいんですけれど」といって、その後、内閣府にも繋いでくれた。

 

厚生労働省でも、名古屋市政令指定都市なので、直接の注意、指導というのができないということだった。名古屋市は独立国みたいなものだと思った。「指導はできないけれども、踏み込んだ説明をさせていただくことはできる」とおっしゃってくれた。名古屋市厚生労働省から踏み込んだ説明をしていただくことになった。厚生労働省すら上意下達できないのが独立自治というもので、一新聞社が上意下達できるものではない、と厭味たらしく繰り返してみる。

 

紹介された内閣府の別の方と話した。内閣府からも名古屋市に踏み込んだ説明をさせていただきます、ということだった。ちなみに、「関係ない」と他の職員が言ったことはこのとき訂正された。役所にはいろんな人が勤めている。いい人もいればやべえ奴もいる。名古屋にはやべえ奴が多いというか、やべえ奴を仲間としてかばってしまう同胞愛が強いだけなのかもしれないが、組織でそれをやっちゃうとちょっとまずいような気がする。

 

総務省にはじまり、厚生労働省内閣府といった、一市民からすれば遠い存在のような省庁の方が、名古屋市役所よりも親身だった。僕は国と戦うことになるかもしれないと思って覚悟していたのに、彼らは協力的だった。そして、お国の機関も保育園や名古屋市の対応を疑問視しており、僕らが求めている合理的配慮は常識の範囲内ものであり、なぜ、名古屋市がそれを拒絶するのか理由が分からないということだった。

 

僕には不合理な配慮がなされた理由がわかっている。最初に、保育園の主任が僕らに嘘をついたことが原因なんだと思う。彼女は加配制度について名古屋市の取り決めで1人3時間までとか、総合保育だから個別な配慮はできないとか僕らに言い続けていた。それもこれも名古屋市の規則でできない、ということだった。実際には、そんな規則はなかった。ただ、この主任を庇うために、園長から市役所までごまかしと隠蔽が続いてしまったということだった。求められている合理的配慮の具体的なことは、園長も市役所も理解していない、ただ、自分たちの職員が嘘をついたこと、不祥事になりかねないことを、組織的にごまかし、隠蔽しようとしただけだった。

 

保育士も人間だ。正直な人もいれば、自分の都合でごまかしたり、嘘をついてしまう人もいる。公務員なら全ての人が倫理的に優れているというわけでもないだろう。みんながすばらしければ公務員の不祥事なんてないだろう。嘘やごまかしをする人がいたら、それを指導したり、訂正するのが、組織だと思うし、独立自治が認められている市役所であれば、自浄作用が不可欠にも思える。

 

しかし、名古屋市は根っからの隠蔽体質だった。そのため、総務省厚生労働省内閣府からすれば、「なぜ?」という対応をしてしまった。とはいえ、国家の人たちから、僕の要求がおかしくないと言ってもらえたのは精神的に助かった。やっと味方が現れたと思った。

 

厚生労働省内閣府から名古屋市役所の担当部署に踏み込んだ説明をしてもらった。しかし、まだ名古屋市役所からは連絡がなかった。僕は、総務省の人からのアドバイスに従い、今度は、名古屋市のいろんなところに連絡をしてみることにした。市民の声みたいなところにもメールした。