いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

名古屋市に困る!(下)<合理的配慮がなされるようになったこと>

「長い交渉の終わり」(長女3歳11ヶ月)

 

前回の名古屋市に困る!(上)からの続きになります。

 

話し合いの当日。

 

名古屋市から配られた資料は、一週間以上前に僕が送った資料のままだった。何もしていない。この配布資料を見ただけでも、僕は腹が立った。

 

「これ、話し合いの資料の元にするために僕が書いてお送りしたものですよね。そちらで、話し合いのためにまとめる約束じゃありませんでしたか?」

 

そんなことを聞いても、沈黙。

 

僕のことのときの態度に、助っ人としてきた当事者の方が腹を立てたのか、「資料が読みづらい。問題を提起して話し合いをするなら、読みやすい資料にするべきだ」と僕を非難した。

 

いや、だから、という感じだった。この方は名古屋市の助っ人だったのかもしれない。話し合いが終わると名古屋市の役人と仲良く話していた。名古屋は内輪同士の仲が異常に良い気がする。余所者は居心地が悪い。

 

そんな感じの話し合いで始まって、カオスになった。そもそも名古屋市から話し合いの場を設けて欲しいと言ってきたのにこれだった。僕はもう話し合いをするつもりもなくなって席を立とうとした。

 

そんなときに、専門家の話を聞こうという提案が、仲介してくれた方からなされた。

 

専門家の先生は、なぜか、名古屋市のこれまでの取り組みとか、障害者差別解消法にたどり着くまでとか、それまで自分たちがどんな活動をしてきたのか、という話をしだした。

 

これもあるあるだ。年配者の苦労話は状況によっては聞いてられないことがある。こういう苦労話をする年長者はだいたい仕事ができない、と僕は思っていた。

 

「そういう話をするのでしたら、もう今日の話し合いは終わりにしましょう」

 

そんな生意気なことを言うのが僕だ。

 

すると潮目が変わった。

 

専門家の先生が突然、核心に迫った。保育園が行ったことは、障害者差別解消法に違反していると考えられるし、僕が求めている合理的配慮は真っ当なもので、拒絶する理由もない、と言ってくれた。

 

役人が慌てた。そして園長に話を振った。園長も慌てた。担任に話を振った。見事な連携だ。こうやって難しい問題は現場に押し付けられる。ちなみに、一番の問題だった主任はこの場にもいないし、保育園でも見かけなくなっていた。

 

担任の保育士はいつになくつらそうで、責任が押し付けられているのが気の毒だった。彼女は結婚して仕事場では違う苗字になっていたのに、このときには旧姓を名乗ってしまうくらい動揺していた。

 

「障害者差別解消法のことも知りませんでした。そして、自分たちがした判断が、法律違反になるとも思ってもみませんでした。専門家の先生からも教えていただいたので、これからは法律を守り、合理的配慮にも取り組んでいきます」

 

と声を震わせながら言っていた。僕は彼女を擁護したくなった、というか、彼女は彼女で、主任や園長との板挟みにあっていて、保育園での取り決めを変えることはできなかったけれども、一人の保育士としてできることはやってくれていたからだ。

 

「担任の先生は、僕が障害者差別解消法や合理的配慮のお話をしてからは、積極的にできることはしてくれていました。僕がこの保育園に求めているのは、一人の保育士が個人的に合理的配慮をできる限り行うということではなく、保育園全体として、障害者差別解消法を理解し、合理的配慮を行うことなのです」

 

名古屋市役所の役人が今更ながら、僕に質問をしてきた。どんな合理的配慮が必要かということだった。そして、その内容が当初からなされていたものに相違ないか園長に確認した。ちなみに役人にも何度もメールで書いている内容と同じものだ。

 

結果、僕が求めた合理的配慮は全て行われることになった。話し合いは終わった。

 

話し合いに使った教室を片付けていると、役人が話しかけてきた。僕の風貌に威圧されたみたいなことを言っていた。そしてこう言った。

 

「しかし、なんであれだけのこと(合理的配慮)をすぐにやらなかったんですかね?」

 

「だから、そのことが問題なんですよ。客観的に見ても、常識的に考えても、正当な要求と思われる合理的配慮を根拠なく拒絶し、嘘や誤魔化しを繰り返したのか。そして、そのことを園長だけでなく、市役所も一緒になって嘘と誤魔化しに加担していたということなんです。分かりますか?」

 

その役人はメンツが潰されたみたいな感じで出て行ってしまった。名古屋市役所と保育園に対して、文書にて謝罪をするよう要求した紙を彼に渡しておいた。もちろん、メールでも送っている。

 

長女に対する合理的配慮はこのようにして勝ち取ることができた。よかったといえばよかったことだけど、こんなにも、何ヶ月も、そして多くの関係機関や人々に働きかけないといけないことにびっくりした。法律で認められた、そして常識的に見ても妥当だと思われる合理的配慮だったのに、揉めに揉めてやっと実現されることになったというのは、なんだかおかしいように思う。

 

障害者差別解消法の合理的配慮についてお悩みの方がいたら、名古屋市以外では参考にならないけれど、この一連のやりとりを何かの足しにしてくださればと思います。園長も、社会福祉協議会も市議も役所も新聞社もあてになりません。もちろん、周囲の人に話しても多くの人は無関心でしょう。助けてくれる人はほとんどいません。政令指定都市でなければ、都道府県や、行政110番、そして関係省庁に連絡するといいと思います。政令指定都市の場合は、とくに不祥事も多く、自浄作用がない政令指定都市の場合は、とても面倒くさいことになると思います。