「犬の臭いのするスーパーマーケットと大人気のスーパーマーケット」
困ったことがあった。
スーパーマーケットといってもさまざまな特色がある。地域に根ざしたスーパーマーケットもあれば全国チェーンのスーパーマーケットもある。地域に根ざしたスーパーマーケットにもその地域に何店舗か展開しているところもあるのは、たくさんの仕入れた方が安くなるし、近い店舗であれば流通のコストも下がるから、一店舗でやるよりも数店舗を同時に展開した方が効率もいいのだろう。どこを選べばいいのか。
ボストンで暮らし始めてから、スーパーマーケットを見ればとりあえず入ってみた。いくつか通っているとどれが自分のライフスタイルに合っているのかも分かるし、値段やスーパーマーケットまでの距離も生活する上では考えなくてはならない。車もなかったので、なんだかんだと近くのスーパーマーケットを利用することになる。
ボストンで行ったことのあるスーパーマーケットを挙げてみよう。
Stop & Shop(ストップアンドショップ)
Star Market(スターマーケット)
Whole Foods(ホールフーズ)
Trader Joe's(トレーダージョーズ、トレジョ)
Market Basket(マーケットバスケット、マーバス)
H Mart(エイチマート)
Super Market 88(ハチハチ)
僕が何度か通ったのは、この7つのスーパーマーケットだった。横にカタカナで振ったのは、僕が勝手に略していたり、現地の日本人が略して呼んでいる名称。
Hマートは韓国系のスーパーマーケットで、日本人にとっても馴染みのある食材も多い。日本食が作りたいときはHマートを使っていた。他にも韓国系のスーパーマーケットがあったけど、小さいお店で、値段もHマートとあまり変わらない。Hマートを利用するときには、メンバーズカードを作った方がいい。結構、ポイントが貯まって10ドルのクーポンがもらえる。
88は、中華系のスーパーマーケット。とても安いイメージがある。モールデンとボストン大学の方に行った。モールデンの方が郊外店なので大きい。
日本のスーパーマーケットもあるらしいけど、僕は一度も行かなかった。お惣菜がおいしいという噂は聞いたことがある。
Stop & Shop(ストップアンドショップ)、はじめて入ったアメリカのスーパーマーケット。合理的な感じでとても綺麗。ここはメンバーズカードを作るかどうかで値段がかなり変わってくる。ストップアンドショップの近くに住むなら、すぐにカードを作った方がいい。カードを作らないで買い物をしてしまうと、高いスーパーマーケットだと思ってしまう。
Star Market(スターマーケット)、昔はとても人気のあったスーパーマーケットらしい。10年前以上の情報だと、スターマーケットがおすすめになっていたりするけど、近くにあったスターマーケットは閑散としていて、店内に入ると犬の臭いがした。犬は好きだけれど、犬の臭いがするスーパーマーケットはちょっと落ち目なことが多い気がする。東京にいたときにも犬の臭いがするスーパーマーケットがあった。いつ潰れてもおかしくない感じの店だった。
スターマーケットは、フードスタンプや低所得者のための食糧配布なども行政と一緒になってやっているので、社会的意義のあるスーパーマーケットでもある。頑張って欲しいとは思いながら、あまり行かなかった。
Whole Foods(ホールフーズ)は、日本でも知っている人が多いらしい。値段は少々高い。スイーツやお惣菜の品揃えもよくて、だいたいおいしい。値段は高めかもしれないけど、外食するよりは安い。そんなことからランチなどを買う人も多いと思う。また、肉なども賞味期限が近づくと結構な値引きをするので、高いのか安いのか分からない気もする。お店の店員さんも客も感じのいい人が多い。お金持ちだったら、ホールフーズしか行かなかったかもしれない。
Trader Joe's(トレーダージョーズ、トレジョ)、こちらも日本でも有名らしい。トレジョと呼ばれている。店内は清潔で、シンプルな陳列が気持ちいい。品揃えはそうでもないけど、トレジョオリジナルの食品が多いということもあって、一つ一つの商品は思ったより安い。毎日使うような食材が安く手に入ることから、トレジョの近くに住むというのはありだと思う。
Market Basket(マーケットバスケット、マーバス)は、僕のど本命だ。とにかく安い。店内はガチャガチャして混雑していることも多いし、ガサツな客も多いから、カートがぶつかり合うのも日常茶飯事。未会計のポテチを食べて飲み物の蓋も開けてガブガブ飲んでいる人もいる。たまに食べかけで商品棚に戻している人もいるくらいなカオスなところはあるけど、市場のような活気があるともいえる。
マーバスはなんで安いんだろう、と疑問に思っていると、同じような疑問を感じている人がいるらしく、「マーバスはなぜ安いのか」というインタビュー記事があった。詳しくは忘れてしまったけれども、組織の見直しが大きな理由らしい。
マーバスは本社勤務や管理職でもレジ打ちと給料は同じらしい。勤続年数で給料が決まる。実力主義のアメリカというイメージがあると意外な気がする。広報の人が言うには、管理職や役員に法外な報酬を払うことで経営が厳しくなり、商品も高くしなければならなくなる。そして低賃金の労働者を雇うことになり、社会的な問題を作ることになる。そのため、本社勤務も管理職も給料を同じにした。すると、本社勤務や管理職を希望する人も少なくなり、みなが自分の好きな部署を希望するようになったということだった。そして、結果的に、低賃金労働がなくなり、商品も安くすることができて、お店も繁盛した、という話。
マーバスのこういうやり方を聞くと、共産主義みたいとか思う人もいるかもしれない。僕はあんまりそう思わない。一部の人間が富む社会が資本主義というわけでもないだろう。一人一人の資本によって好きな会社を作って、よりより社会にしていきたい、と考えているマーバスの経営は、資本主義の可能性を示しているようにも思えた。ガツガツするだけの資本主義は寂しいってなったのかもしれない。
ちなみに、ホールフーズやマーバスでもフードスタンプなどの取り組みはあった。このことはまた別に書こう。