いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

ゲームアプリに困る!(東京篇)<妊娠や育児をきっかけにスマホでゲームをはじめた人は多い>

「飲みに行けなくなってスマホでゲームをする」(妻、妊娠中)

 

困ったことがあった。

 

いつの頃からか、あまりゲームをしなくなった。昔は、夜から朝になるまでゲームをして、戦国時代の日本や、三国志時代の中国を統一することに情熱を燃やしていた。

 

KOEIというゲーム会社がある。僕が小学生のときに、「信長の野望」というゲームを出して、多くの子供たちが熱中した。最初は、あまり覚えていないけれども、全国と十七カ国とあったような気がする。ゲームをはじめるときにどちらかを選択したのか覚えていない。うちは比較的貧しい家だったこともあり、パソコンなどは買ってもらえなかったし、のちにファミコンで「信長の野望」が出たときは、通常より大きいファミコンカセットで値段も高かい、そもそもファミコンすら買ってもらえなかった。友達の家でやるしかなかった。

 

子供同士の「信長の野望」は争いも多い。最終的には、持ち主の意見が通る。「おれんちだぞ」「おれのものなんだぞ」という言葉を何よりも恐れた。たまに、人間ができた親御さんが「そういうことは言わない」「そんなこと言ったら誰にも遊んでもらえなくなるよ」と言うこともあったが、中には、「〇〇ちゃんのよね」とか言って、スネ夫な環境を作っている家庭も多かった。中流階級はケチくせえと思うようになったのはこの頃からかもしれない。

 

信長の野望」を思いっきりやってみたかった。自転車で20分くらいかけて、東京電力だったかなんかの施設にパソコンが置いてあるところがあった。そこには「信長の野望」があった。そこでなら、「おれのだぞ」とか言う人もいない。ただ、他にやりたい人がいる場合は、順番を守らなければならない。順番でやるに「信長の野望」は適したゲームではない。最速で天下を統一するためには、「暗殺」という面白くもなんともない手段を用いなければならない。

 

僕の世代で戦国時代が好きな子供たちの多くが、長宗我部元親という戦国大名を覚えたのは、この「暗殺」による天下を試みたからかもしれない。長宗我部元親といえば暗殺というイメージができてしまった。

 

その後、28歳くらいになってからだろうか、急に、子供時代を思い出してゲーム機を買ってみた。「信長の野望」は信じられないくらい進化して、臨場感のあるものになっていたし、長宗我部元親の暗殺などは使えるわけでもなく、一日使っても天下統一するのが難しくなっていた。

 

ゲームのクリアに膨大な時間が求められるようになった。

 

ゲームはしんどい。息抜きのゲームのはずが、ゲームがメインとなり、息抜きで仕事をしているような錯覚すらあった。数ヶ月遊んでゲームはやめた。

 

そのあと、友人から誘われてオンラインの三国志をやるようになった。最初は乗り気じゃなかったのに、同盟の盟主にさせられ、毎日、ゲーム内での手紙や告知などをしていた。

 

「僕が行かないとみんな死んじゃう」

 

職場でそんなことを言って、残業を断ったことがある。「天下統一頑張ってね」と笑いながら応援してくれた人たちは、僕に呆れていたんだろう。そのときは本気で応援してくれていると思っていた。

 

疲れ果ててオンラインゲームもやめた。

 

それからまた10年以上経った。妻が妊娠した。当時は副業で夜勤などもしていたこともあり、毎日のように飲みに行くわけじゃななかったけれども、妊娠する妻に申し訳ないからと仕事ない日も飲みに行かなくなった。妊娠中とはいえ四六時中お世話が必要なわけでもなないから、隙間時間のようなものができた。

 

アプリゲームをやってみた。最初は、何も考えずに銃とかを打ちまくれるやつがやりたかった。人を撃つのにためらいがあったので、ゾンビを撃つやつにした。そこそこ爽快だったけれども、老眼がはじまってきたのか、どんどん目が疲れてきて、ゾンビを撃つのにも飽きてきた。僕にとっては銃の照準が一番の敵だった。

 

そして、僕は天下を夢見た。

 

妊娠期間と育児は、アプリゲームとの相性が良かった。出産の時にも、トイレに行くついでにゲームをしたことは妻に内緒だ。乳児の育児のときにもゲームをしていた。夜泣きなどでなかなか睡眠が取れなくても、右手と目は自由だった。僕はゲームの中で地味な作業を担当し、感謝されることに喜びを見出していた。

 

妊娠期間と育児の隙間時間のためにはじめたゲームなのに、熱中しすぎて、ゲームの合間に育児をしているような錯覚に陥ることもあった。

 

子供が産まれてからゲームをはじめたという人が少なくない。理由は僕と同じようなものだった。飲みに行けなくなったけど、まとまった時間も取れない。だからアプリゲームにしたという理由。そんな人たちから育児のアドバイスをもらったりした。これだと、ゲームをしているのか、育児の悩みを相談するためにゲームをしているのか分からない。

 

ゲームと一口にいっても時代とともに使い方が変わるものだ。天下統一までの時間はどんどん長くなっている。育児の愚痴を吐きながら天下統一するなんて思ってもみなかった。