いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

切れ味に困る!(主夫篇)<台所を楽しくするにはまずはいい包丁から>

「包丁にこだわってみたい」

 

困ったことがあった。

 

結婚するまで、僕はあまり自炊をしない生活をしていた。18歳で一人暮らしをしてからも、包丁もなく、キッチンバサミだけで十分だろうとか思っていた。それでも、しばらく1人で暮らしていると、なんだかんだと調理道具も増えて、包丁やフライパンなども使うようになった。安物しか買わず、とくにこだわりもなかった。

 

バイト先で、包丁の研ぎ方を教わったことがある。砥石で包丁を研ぐのが楽しくて、しばらくの間、包丁研ぎは僕の担当だった。

 

「あんまり研ぎすぎると指も切りやすくなるからほどほどにな」

 

そんなことを言われたこともある。包丁は切れ味ばかりじゃないんだなあとか思っていた。他のバイト先で、切れ味の悪くなった包丁が気持ち悪くて、砥石の場所を聞いた。そこでは砥石はあまり使わないみたいで、誰に聞いても砥石の場所が分からなかった。すると、店長がどんぶりの裏の部分に包丁の刃を当てて、擦り付けていた。

 

「これで十分だよ」

 

こんなやり方もあるのか、と思って僕も真似をしていたが、研ぐ楽しみは得られなかった。その店の古い鍋が置いてあるあたりを片付けていたら、汚くなった砥石が出てきたことを思い出だした。

 

包丁の切れ味が気になるのはどんなときだろう。トマトが切りにくいときや、鶏肉の皮が切れないときに、そろそろ切れ味が落ちてきたと僕は思う。たまねぎを切るときに滑るようになってきたら危ない。包丁を使うときに添える手は、「猫の手」と言われるような、指先を丸めた感じにするといい、といろいろなところで言われた。

 

猫の手にしているときに添え手を包丁で切ってしまうことはあまりない。それは、猫の手を意識するくらいに、落ち着いて、注意を払って包丁を使っているからじゃないか、と思うことがある。包丁で指を切ってしまう場合は、だいたい急いでいるときとか、考え事をしているときとか、片手間でやっているときとかだから、猫の手なんて忘れている。

 

包丁の切れ味が悪くて、無駄に力を入れてしまって指を切るなんてこともある。

 

ここは「猫の手」の考え方を応用してみよう。猫の手をするくらい意識しているときには指をなかなか切らないように、普段から、包丁を大事に扱い、切れ味が落ちればきちんと研ぎ、包丁を使う度に包丁の状態を気にするようにしてみたらどうだろう。

 

とはいえ、それだけ気になる包丁ってあまりない。

 

アメリカで包丁を買った。包丁を買う前に少し調べてみると、日本製の包丁の評判が良かった。日本製の包丁のことは帰国してから考えることにして、amazonの安すぎず高すぎずみたいな包丁セットにした。アクリル版の包丁立てがついているので便利だった。ステーキ用ナイフも数本ついているし、パンきり包丁もついている。アメリカらしい包丁セットだった。

 

このセットがカッコ良かった。そこまで良い物というわけではないけれども、持ち手までステンレスになっているので、日本で使っていた包丁の持ち手の汚れが気になっていた僕としては持ち手がステンレスというだけで満足だった。切れ味はいまいちだったけれども。

 

帰国してから、いい包丁を買おうと思って、妻にもプレゼンしていた。いろいろと調べた結果、いくつかの思い出的な関連もあることから、ある包丁を買うことにした。僕が思っていた包丁の値段の何倍もしたけれども、二年間毎日使っていても、なんだか嬉しい包丁。

 

包丁が気になっていろいろ調べていたら、板前さんの包丁とかさまざまな種類の包丁が出てきて、用途を見ているだけでも楽しくなるものだった。包丁さばきには自信がないので、そんな専門の包丁を買っても使えないのは分かっているけど、欲しくなる。

 

高い包丁を買ったとき、知り合いの料理人に僕が買った包丁のことを話した。

 

「良い包丁を買いましたね。砥石は何を買いましたか?」

 

砥石は買っていなかった。どんぶりの裏で研ぐつもりでもなかった。同じブランドが出しているシャープナーを買っていた。

 

「シャープナーはあんまりおすすめできないですね。刃がダメになりやすいんですよね」

 

シャープナーも結構な値段がしたから、僕はシャープナーを使う予定だ。

 

こういうときに、プロとアマチュアの差がある。料理人であれば、1日に使う包丁の回数はご家庭で使う包丁の回数とは大きな差がある。そうなると、包丁を研ぐことも多いだろうし、研ぐことにも慣れている。その場合は、シャープナーよりも丁寧に包丁と向き合える砥石の方が使い勝手もいいのかもしれない。

 

良い包丁を買ってしまった僕が言うのもあれだけれども、僕の使い方であれば、安物の包丁でももちろん十分だし、気分を盛り上げるために良い包丁を買っただけの素人が、砥石で包丁を研いでしまったらシャープナーよりも刃を痛めそうな気もするし、研ぎ加減も分からない。

 

そんなことから、メーカー推奨の使い方を守って、シャープナーを使い続けることにした。数ヶ月に一回くらいしか包丁を研ぐことはない。トマトと鶏肉の皮が僕の目安になっている。