いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

食洗機に困る!(ボストン篇)<こだわりの仕事というのはあるものだ>

「食洗機はアメリカ生活の必需品?」(長女1歳10ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

アメリカではキッチンに食洗機があるのが一般的だ。何かで聞いた話だけれども、女性を家事から解放させるために多くのものが自動化されていく中で、食洗機も重要視されたということだった。

 

食洗機はとても楽だ。

 

僕は飲食店のアルバイトもいくつかやった。ファミリーレストランで働いたときは食洗機を動かすのが好きだったし、牛丼屋で働いたときも食洗機をいかに効率良く回転させるかというのが僕のこだわりでもあった。

 

食洗機オペレーターとしての腕前は、ファミレスでも牛丼屋でもなかなかの評判だった。どのように並べるか、そこに食洗機の効率はかかっている。しかし、食洗機に入れる前に、食洗機では取りにくい汚れをとっておいたり、食洗機に並べやすいように、シンクなりなんなりに置くときにできるだけ同じ種類や同じ大きさに置くことが大事だった。

 

そして、なによりもスピードだ。

 

汚れ物を瞬時に見分けて置いていく。そして最も効率良く洗えるようになった瞬間を見逃さないようにして並べて食洗機を動かす。終了音までに次の準備をし、仕上がった食器を割らないように、かつ迅速に並べる。何かを並べるのは大好きだ。洗い残しや洗剤が残っていたら事前の確認と並べ方が悪かったことになる。

 

いくつかの飲食店でバイトをしていて思ったのだけれども、食洗機オペレーターの地位はお店によってまちまちだった。ある場所では見事なオペレーターは高い評価を得ているかと思えば、別の場所では、そもそも食洗機は使えないやつの担当だったりした。僕はどこにいっても食洗機を見事に動かし続けた。褒められても貶されても関係ない。

 

アメリカで生活では、食洗機が生活の一部になった。僕が仕事で培った経験と技術を発揮するほどの量は一般家庭で出てこないが、それでも、妻が食洗機を動かすと食器の一部に水が溜まっていたり、汚れ物がとれず、逆に乾燥させてしまうものだから、よけいに頑固な汚れになってしまうことがあった。

 

「食洗機の中を見てみると分かると思うんだけど、これは下からお湯が出るけど、上にも回転するノズルがあるから、上からも出るタイプなんだよね。だから、食器を置くときには、上向きにしたり下向きにするのではなく、水が切れるように斜めになるように、水の逃げ道を作らないといけない。あと、汚れ物もなんでも取れるわけじゃないから、特に米とかは一度、スポンジでとってから食洗機に入れてね。まあ、米くらいなら乾いてもすぐ取れるけど」

 

みたいなことを言ったら、面倒くせえって顔をされた。

 

職人的こだわりというのは、いくら身内とはいえ人におしつけるものじゃない。モラハラになるかもしれない。

 

「洗い物は僕が全部やるから置いといてね」

 

こうなった。

 

そんな食洗機が壊れてしまった。いざ壊れてみると、日本では食洗機のない生活が当たり前だったのに、とたんに不便を感じるようになっていた。僕は水遊びの延長で皿洗いするのが好きだったのに、皿洗いを面倒だと思うようになってしまったのだ。こうやって人はいつかきっと寝ることすら面倒になるに違いない。

 

アパートにはメンテナンスガイと呼ばれる管理人がいる。アメリカのアパートでは勝手に直したりすると問題になることがあるらしいので、一応、聞いてみた。

 

「勝手に直してくれてもいいけど、見に行くよ」

 

1週間後くらいに来た。アメリカの管理人さんはなかなかやってこない。うちの管理人さんは自称働き者なので、1週間くらいでくる。

 

何かのコードが外れていたようだった。すぐに使えるようになった。

 

たまたま管理人さんがくる1週間の間に、アメリカの友人が訪ねてきたので、食洗機の話題になった。アメリカの食洗機はよく壊れるらしい。そして、管理人はほとんど来ないらしい。

 

「うちの食洗機も壊れて半年くらいになるけど、管理会社に電話しても修理しに来ないから、ずっと手洗いしているよ」

 

家事から解放するために生まれたと言われる食洗機とはいったいなんだったのだろうか。メンテナンスガイを簡単に手配する仕組みを作った方がいいのかもしれない。あるいは自動や電動のメンテナンスガイが必要になっているのかもしれない。