いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

中古売買に困る!(ボストン篇)<出国前はアメリカ流に>

「ボストン日本人掲示板の活用法」(長女8ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

日本からアメリカに来ると、安く感じるものもあれば高く感じるものもある。とくに来たばかりの頃は、何かにつけていちいち驚いているものだから、日用品の一つ一つに対しても冷静な判断ができなくなる。

 

ボウル・ザルというのか、ボウル型のザルというのか分からないけれど、そんなのが欲しくなった。パスタでもそうめんでもうどんやそばを作るときに使うザル。近所のスーパーマーケットなどを見てもステンレス製の高いものはあるけれども、安いプラスティックのものがあまりない。

 

そもそも、日本の百均のような安いプラスティックをあまり見なかったかもしれない。来たばかりの頃は、1$ショップの存在も知らなかったし、近くにもなかった。

 

ボストンの滞在は二年だし、帰国時に荷物をあまり増やしたくないということから、日用品は知り合った人に譲るか捨てるかするものだけを買おうと思っていたため、安いものが欲しかった。

 

安いなら中古品でもいいんじゃないかと思った。

 

ボストン日本人掲示板というところがある。僕らのようにボストンに来たばかりの人や、これから帰国しようとする人が、物を譲ったり売ったり買ったりする掲示板で、新品じゃなくてもいいと思っている人なら使うことがあるだろう。

 

食器や調理道具をそこで買おうと見ていると、ザルがあった。プラスティックのザル。他にもお皿やコップなども売っていた。メールでやりとりすると、品物の状態は現地で見て決めてくれればいいということだったので、ちょっと距離があったが現地に行った。

 

指定された時間より少し早く着いたということもあり、路上でしばらく待った。約束の時間を過ぎた頃に、すごいバタバタした感じで二階に通じる階段から妙齢のご婦人が現れて、品物を包んだ状態で渡してきた。

 

「中身を確認したいんですけど」

 

「もう包んじゃった。時間もないから別にいいでしょ?」

 

と有無を言わさぬ勢いで、私たちが買う予定でいたお皿とコップとザルなどを渡してきた。よほど状態が悪くなければ買うつもりだったということもあり構わないといえば構わないのだけれども、状態を見てから決めるという約束が、とか思いながらも勢いに押されてしまった。

 

ボストン日本人掲示板に提示されていた値段を現金で渡した。

 

「これも買わない?」

 

といくつか商品を持ってきた。買わないと言うとひっこめた。長女がベビーカーにいるのを見て、「これはお子さんに」とプレゼントしてくれた。紙袋に入っていたから中身は分からなかった。

 

すごいエネルギーに圧倒されて、僕らは家に帰った。

 

商品の包装を開けてみた。お皿は全部ではないけれども少し欠けていたのもあった。コップは欠けてはいなかったが、僕なら売るのは気が引ける状態。ボウル・ザルは、一部破損していた。子供にプレゼントしてくれたものは、近所の中華系スーパーマーケットでお菓子などが入っているちょっと厚手のビニールによく分からないキャラクターがプリントされた袋や、お菓子についているおまけのオモチャみたいなものだった。

 

その後もボストン日本人掲示板を使うことはあった。テレビを譲ってくれた人はとてもいい方で車のない僕たちのためにわざわざ運んでくれた。付属品も揃っていて、状態も綺麗、そしてとても安かった。友人も感じのいい人から綺麗なソファを格安かつわざわざ設置まで手伝ってくれたという話を聞いた。だから、ボストン日本人掲示板を使わない方がいいということではない。

 

たまにやばい感じの人もいる。相手が日本人だと思うとなんだか信頼してしまうのは海外でよくあることだと思う。慣れない海外生活の最初だから文句も言えないし、勢いに飲まれることもある。譲ってもらうときには、相手は帰国間際とかで、切迫した状況に押されて、瑕疵のある家具を引き受けてしまうこともある。面白いことに、そういう人たちは事前告知なしの瑕疵を認めても値段を下げることもなく押し付けようとする。

 

NC・NR(ノークレーム、ノーリターン)と掲げて取引をしている掲示板の「売ります・買います」はなかなか難しい。当たり前のようだけれども、買う側にも売る側にもいい人もいればヤバい人もいる。

 

ボストン日本人掲示板を利用しなくなった。ボストンで会った日本人以外の友人たちは、不要になった家具や食器は、家の前に持ち帰り自由と書いて外に置くか、引越が決まると友人たちを家に招いて、物を譲っていた。スマートなやり方だと思った。

 

僕らも帰国する一ヶ月くらい前から、家具家電食器日用品は友人たちに引き取ってもらった。お礼にお菓子とかビールとか、そして帰国してからもなんだかんだとプレゼントを送ってくれる。

 

貰い手がないものもたくさんあった。長女にいつも優しくしてくれる同じフロアのブラジル人とアパートのゴミ捨て場で会った。引越前の不用品を捨てていると言ったら、子供関係のものは全部引き取りたいと言ってくれた。その方は、ボランティアでブラジルの施設に子供のオモチャや生活用品や衣類を送っているのだという。

 

一部かけたプラスティックのザルは、帰国するまで使った。アパートの下に「FREE!」と書いた箱を作って、そこに置いて帰国した。僕もアメリカ文化にずいぶん馴染んだなあとか思った。