「毎日の結露」
困ったことがあった。
冬になると家事が増える。夏に増える家事もあるかもしれないけど、冬の訪れを教えてくれる家事がある。
結露のこと。
僕は昔、窓のない部屋が好きだった。暗い部屋が好きだった。でもジメジメするのは嫌だから除湿機や除湿剤をたくさん使って、乾燥した暗い部屋にしていた。そのせいなのか分からないけど、一年に四回以上、風邪をひいていた。
妻と住むようになると、窓は仕方ないとしても加湿器なるものが導入された。妻はジメジメしたのが好き。
「きのこみたいな人間なの」
きのこ人間宣言をされてしまったから従うしかない。湿気の多い季節はカビチェックが欠かせない。
きのこ人間との日々。冬場は適度な湿度を保てるから僕も風邪をあまりひかなくなったような気もする。
世の中、良いことばかりじゃない。冬になると湿度がそのまま結露の多さにもつながっているような気がした。他にも理由があるのかもしれないけれども、年がら年中除湿器を回していた僕は湿度が結露の多さにつながると思い込む。
結露は、二重窓にしたり、窓枠をアルミから木製とか合成樹脂に変えると防ぐことができると聞いたことがある。ボストンは二重窓が基本だから窓の結露はなかったけれども、加湿器がフル回転するきのこ人間の寝室だと外に面した壁から水滴が浮かぶ。塗装が何回も上から塗られただけの壁は、塗装の内側に結露が出るのか、ボロボロと塗装が剥がれて年輪のような断面が現れてきた。
結婚してから、日本でも三回引っ越している。三ヶ所とも普通の窓で、窓枠はアルミ。結露しないわけがない。窓枠のレールにも水が溜まり、ひどい場合は窓の上の天井に水滴がある。風呂場みたいな状態だ。
結露用だと思うけれども、水が貯まる柄がついたスクレイパーで毎日、窓から結露をとっている。砂漠だったら貴重な飲み水の作り方になるとか思ってサバイバル気分にもなる。
いま住んでいるところは、在宅仕事のためとか、子供も三人になったからとか、そんな理由から広めの間取り。コロナ禍で家にいる時間が長くなり、広い物件にしておいてよかったと思うことも多いけど、窓の結露との戦いに毎日30、40分かかる。
一番の問題は、台所。結露のことをすっかり忘れて台所の配置を決めたものだから、台所にある窓とその周辺の壁の結露を取るのがやっかいだ。配置はもう変えられない。窓の近くに1500wのコンセントがあるんだから、そこから配置をしなければならなかった。
そこには、炊飯器、電子レンジ、コーヒーメーカー、パン焼き機、湯沸かし器などがある。棚は組み立て式のもので後ろが閉じていないから、どうにか手を伸ばしたり、背伸びしたりして、後ろの窓や壁の結露は拭ける。
台所の結露に気がついたのは、カビが発生したからだった。前に住んでいたところを引っ越すとき、窓側にあった本棚の裏がカビだらけだった。カビ除去の強力なやつでどうにかカビをとった。その残りがまだある。
心配なことがある。毎日結露を取るのは大変だけれども、台所の結露が出る壁にはコンセントがある。コンセントに水が侵入しないように結露は毎日とっているけれども、コンセントの中はどうなっているのだろう。コンセントの内部に結露が出てくるようであれば、今度は、毎日、コンセントのあたりを分解して結露を除去しなければならなくなるのだろうか。
結露との戦いは大変だ。大自然と戦っているような気持ちになる。これはこれでやりがいがある。