いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

再び南京虫に困る!(再東京篇)<南京虫2 最後の晩餐>

「僕の趣味は南京虫狩りです」(長女2歳10ヶ月、双子9ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

ベビーベッドに巣食う南京虫を駆除して二ヶ月が経った。僕は南京虫のことなど忘れ、日々の育児と家事に追われていた。夏の盛りということもあり、虫刺されの跡を見ても蚊に刺されたと思い込んでいた。

 

なかなか蚊に刺された跡が治らない。このときに気づくべきだったのかもしれない。南京虫は蚊より痒く、そしてなかなか治らないことに。

 

長女が痒みを訴えるようになってきた。子供用のムヒを塗ったりしながら、家を出るときには虫除けスプレーをかけ、あまり草むらにはいかないようにしていた。しかし、長女は痒がっているし、妻も虫刺されがあると言い出した。僕もふくらはぎあたりに虫刺されがある。

 

南京虫に刺されると痒くて痒くて仕方ないという情報を手に入れていた。そのため、蚊に刺されたのと同じくらいの痒みであれば南京虫ではないだろうと思っていた。もしかしたらダニかもしれない、と娘のお腹あたりに連続的にある虫刺されがあるのを見てそう思った。ダニに刺されると周辺に二、三ヶ所跡ができて、蚊よりも多少ぐちゅぐちゅする。

 

布団を干したり、シーツを洗ったり、寝具を乾燥機に入れたりした。畳は長女が生まれたときに買ったダニ用の掃除機を使って掃除した。

 

夜中2時くらい。寝相の悪い長女を動かそうとすると、長女の下に黒いモノが動いた。白いシーツだから分かった。つまんでみて、隣の部屋に行って灯りをつけた。

 

南京虫だ。しかも結構、大きい」

 

プチッとつぶすと鮮血が飛び散った。きっと長女の血だろう。

 

次の日から僕の南京虫探しが始まった。畳の縁や暗がりなどを調べてみると、畳の縁に数匹いた。掻き出して潰した。前回のベビーベッドとは違い、寝室全体となると広範囲だ。全てを網羅するのは難しいと判断し、南京虫用の殺虫スプレーを購入した。

 

南京虫用の殺虫スプレーは、高いところに伸ばせるノズルがついている。この仕組みから考えると、南京虫は高いところにいるということだろう。

 

寝室から少し離れた台所付近にゴミ箱が置いてあった。ゴミ箱は壁に隣接している。その壁に黒い点が動いているのが見えた。捕まえた。ゴミ箱の裏に南京虫が10匹くらいいた。この場所はゴミ箱の裏以外に逃げ道がない。

 

血を吸っている南京虫は膨らんでいるので見つけやすいし、潰しやすい。難しいのは平べったくなっている血を吸っていない南京虫だ。しかし、考えてみると、血を吸っている南京虫を駆除するのは自衛のために行っているけれど、血を吸っていない平べったい南京虫はどうなのだろうか。見つけにくいし、潰しにくい、そもそも血を吸っていない。彼らを僕はどう考えればいいのだろう。

 

きっと僕一人だったら、南京虫との共生を考えたろう。増えすぎないようにしながら、適度に間引く感じにして、巣もできるだけ特定できるように住みやすい場所を作ったかもしれない。

 

南京虫よ、僕には家族があるんだ。申し訳ないけれども一匹残らず駆除しなければならない。僕には守るべき家族があるのだ、と自分を盛り上げて南京虫掃討作戦を開始した。

 

南京虫は上にいるという予想を裏切って、ゴミ箱の裏にいた。周囲を丹念に調べても見つからなかった。ノコノコと床を這っているのを見つけた。寝室とダイニングを仕切る引き戸を見ると、引き戸の縁にもいた。そうやって追っていくと、引き戸の上の方にもいる。引き戸を取って鴨居を見ると何匹もいた。ここが巣だった。

 

引き戸の縁を外し、鴨居を隅から隅まで調べる。何匹もいた。押し入れも調べてみると、ここの引き戸は縁だけじゃなく裏にもいた。もちろん鴨居はホットスポットだった。天袋の中にもいたし、引き戸はもちろん鴨居にもいる。

 

見つけては潰し、薬剤を塗布する。

 

こうして2週間くらい戦ったあたりで、南京虫は見かけなくなった。もう壊滅させた。そう思っていた。長女も妻も刺されなくなってきた。

 

僕の足だけやたら刺されるようになった。南京虫の反撃がはじまった。僕が寝ているのは窓側だ。考えられるとすれば、南京虫がよくいる場所として知られるカーテンの裏。しかし、そこはとっくに調べてあるし、カーテンは何度か丸洗いもしている。畳の縁も何度も確認しているし、南京虫用の殺虫剤も使用済みだ。

 

それでも僕の足だけやられている。

 

僕の足は毛深い。夜中にもぞもぞした感じがしたので見てみると、僕のすね毛ジャングルに南京虫が捕まっていた。やはり南京虫はまだいる。しかし、どこに。

 

南京虫が活動するのは深夜になる。僕も深夜は比較的起きている。布団に横になったまま南京虫の餌になってみた。どうやら窓の方から来ているようだ。そこには一つだけ見落としていたものがあった。

 

籐で編んだカゴがそこにはあった。オムツやお尻拭きや長女の着替えを入れてあるところだ。深夜に長女が粗相をしてもいいように、僕の隣に置いてある。そのカゴが巣になっていた。深夜にカゴを動かして南京虫が分散されるのを恐れたため、その日はジッと食われることにした。最後の晩餐だ。

 

翌日、カゴを調べた。20匹以上の南京虫がいた。ほじくって潰していたけれども、目視だと見逃す可能性もある。また熱湯につけて、洗濯機で回して、乾燥もした。南京虫の卵がどのくらい耐えるのか不安だったので、結局、そのカゴは捨てた。そして、寝室はもちろん、部屋中の南京スポットを徹底的に調べた。怪しいところには、南京虫用の殺虫剤を使用した。

 

もういなかった。

 

その後、数ヶ月間、南京虫を見ることはなかった。僕と南京虫の戦いはやっと終わった。

 

南京虫対策はいろいろとあるかもしれない。僕が戦いの中で学んだのは、寝具は白いシーツ、壁紙も白がいいということだ。背景が白ければ南京虫はすぐに見つけることができる。南京虫を見なくなって一年が経ったが、僕は今でも壁の隅や鴨居や縁を見る癖がついている。