双子出産に困る!<1>(ボストン篇)の続きです。
妻の人生計画は順調だった。僕と出会う前にしても周囲の人たちからは、計算高いと思われるくらいに、順調に計画を進めている。もちろん、そばでみていると、その順調さの中には、計算高さというよりも、目的をはっきりもち、そのための準備を入念に行っている、というのが分かるから、ただ単に計算高いというよりも、ちゃんとやっている、ということなんだろう。しかし、結婚出産となると、ちゃんとやる、ということがなかなかできないことでもある。にもかかわらず、妻の出産は計画通りだった。
困ったことがあった。
そんな妻の人生計画には、子供が5人欲しいというのがあったらしい。子供5人となると、育児だけじゃなく、そもそもの妊娠出産だけで大変だ。この人生計画はさすがに無理がある。妻も人生計画を見直した。5人は無理でも3人ならどうだろうか、という計画変更になった。しかし、3人となると、あと2回は妊娠出産をすることになる。妻はつわりが重い方だし、体もそんなに丈夫じゃない。1人目のときだって、妊娠中は大変で起き上がれない日も多かった。その度に、僕が看病をするみたいにマメマメしく立ち働いていたけれども、2人目、3人目となると、今度は育児をしながら妻のケアもしなければならなくなる。そう考えると、3人欲しいという妻の妥協した人生計画も見直しが必要だと思った。
「育児をしながら、妊婦のケアもするのは大変だから、せめて子供は2人だけにしない?」
「わかったよ。でも、日本に帰ってから出産だと仕事との両立が大変だから、ボストンで産んでおきたい」
家族計画のための会議はそんな感じの結論になった。子供は2人。妻も僕も2人兄弟というのもあって、2人兄弟、姉妹のイメージしやすかった。子供は2人ということにした。これなら、僕でもどうにか育児ができそうだ。育児をしていて思うのは、育児家庭への配慮は子供が1人か2人のために設計されているということだ。大人2人に子供2人、これが基準のようになっていて、大人1人に子供2人や、大人2人に子供3人などの環境だといろんなことに困難が生じてくる。移動に関していえば、大人1人に子供2人が限界で、大人1人に子供3人となると、可能なことも不可能になることが多いのは、当事者になってみて痛感することでもあった。
妻はまたしてもタイミングよく妊娠した。妻の希望通りアメリカでの出産だ。アメリカでの出産のメリットはいくつかあるかもしれないけれど、妻の入っている保険の場合は、お金が一切かからないというものだった。それに生まれた子供はアメリカ国籍になる。デメリットといえば、なんとなく不安ということくらいだ。異国の地なら、ちょっとしたことでも不安になるし、僕の場合は、英語があまりできないものだから、何かあったらどうしようというものだった。
海外での出産を不安に思っている僕に妻がとんでもないニュースを持ってきた。
「双子を妊娠したみたい。これで子供3人だ!」
なんということだろう。妻は見直ししたとはいえ、妻の人生計画をまたしても遂行しようとしていた。これは計画的というよりも、タイミングというよりも、運がいいということなのかもしれない。電車に乗っているとドア付近に「強運」みたいな本の宣伝を見かけるけれども、妻みたいな人のことを言うのかもしれない。
僕が子供は2人にした方が、と言ったのは、育児をしながら妊婦のケアをするのが大変だということが大きい。もちろん、子供3人となると労力の問題だけじゃなく、経済的な問題もあるし、車を買うにしても、家具を買うにして、何をするにしても、最大4人家族みたいなノリがあって、5人家族以上になると、イレギュラーな扱いにされる。もちろん、イレギュラーだからこそ、ちょっと得したみたいなこともある。そうそう、先日、ニュースで流れた多子世帯の大学無償化みたいなニュースは、僕らのように、予定外の3人目を授かった人たちからすれば、日頃のイレギュラーによる困難が報われたような気もする。どうなるかは分からないけれど。
話がずれてしまったけれど、双子の妊娠ということで、2人産むのであれば2回の妊娠が必要なのに、1回の妊娠で子供が2人誕生するという事態になった。妻も流石に予想はしていなかったようだ。自らの希望が偶然にも叶っていくことに若干、驚いている感じもあった。そもそも、妊娠しようとしてすぐに妊娠できるというだけでも恵まれている。それに妊娠のタイミングも、妻の希望通り、ギリギリだけれど、出産した後に子供を伴って予定通りに帰国できる予定日だった。
双子出産に困る!<3>(ボストン篇)に続きます。