いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

建材に困る!<下>(新築編)<家を作るにあたって大切なことなのになげやりになる>

建材に困る!<上>(新築編)の続きです。

 

家を建てるときの打ち合わせは大事だ。そんなことはみんな知っているのだろう。でもなんでだろう、たまに、「もういいや」みたいな気持ちになってしまう。決めることが多すぎると疲れてしまう。飼い葉に挟まれたロバは実際には飢え死にしないそうだけれども、例えの気持ちもわからなくはない。これが自由からの逃走というやつかもしれないとか思って、僕は打ち合わせに疲れてしまった。

 

困ったことがあった。

 

僕のそんな退屈そうな姿を察知した紳士な営業Sさんが助けに入ってくれた。

 

「ご覧になったLucasですと、これとこれを使っていました。玄関部分は標準ではないものを使っていたので、似たものを標準の中から探すとこれになります。オプションにすると、金額はこのくらいかかります」

 

とフォローに入ってくれた。助かった。

 

「見たやつと同じようにしてください」

 

僕は営業のSさんにすがるような気持ちでお願いしていた。

 

「実際の光の当たり具合で印象は変わりますから、ご覧になられたLucasと同じものを選んでもちょっと違うということがあるので、素材の系統は同じにして、色味だけ天気のいい日に野外で見て決めた方がいいと思います」

 

設計士さんは嬉しそうに話してくれる。きっとそうなんだろう、とても大事なことなんだろうし、丁寧な提案なんだろう。その提案を感謝する日がきっと来るのは分かるのだけれども、そのときの僕はあくびに取り憑かれてしまって、心のどこかで「もうなんでもいいよ」みたいに思っていた。

 

にもかかわらず、そのあとは屋根だ。屋根なんてもうどうでもいいよ、とか思っていた。標準でかっこいい感じでバーっとやってくれればいいですよ、雨漏りしなければいいですよ、と言いそうになったけれども、ここも頑張って、なんだかちょっと考えている風にしながら、屋根材を決めた。もちろん、設計士さんの丁寧な説明を聞いて、素材は選んだ。色は適当に選んでしまった。

 

もう僕の限界は近かった。

 

それなのに、今度はタイルだ。もうやけだ。どうでもいい。そんな僕の気持ちを察したのか、営業のSさんが誘導してくれた。

 

「こちらのタイルはイタリア製でして、今回はキャンペーン中ということもあって、標準でつけられるものになります」

 

また助かった。これでタイルは絞れた。このイタリア製の中から選べばいいというだけで気が楽になった。そういえば、以前、家を建てたときはタイル選びで難航したことがあった。好みのタイルを輸入しなければならないとかなんとかで、二転三転した。そのときのタイルに似ている感じだった。よく見てみると、ちょっとかっこいい。イタリア製のタイル、かっこいい。無理矢理かどうか分からないけれど、気持ちを盛り上げてタイルを選んだ。その後、どんなタイルを選んだか妻に聞かれたけれど、答えられなかった。気持ちは盛り上がっていたけれど、僕はどこか遠い世界にいたらしい。

 

そしてとどめは床材だ。

 

床材は大まかに言って、二つだ。無垢材か合板になんか貼り付けてるか。こだわる人は無垢材にするだろうし、銘木を使ったりする人もいると思う。床暖房にしないならますます無垢材でいいようにも思える。以前建てた家では無垢材にした。で、無垢材にワックスを塗ったりするのが面倒だった。メンテナンスを怠れば、その分劣化も早くなる。数年は育児に手がかかるし、広さもそこそこある、そうなると無垢材にしてもせっかくの無垢材をダメにしてしまうような気もした。

 

最近のシートフローリングは昔よりも綺麗で強度も増しているらしい。とはいえ、シートフローリングは避けたいと思っていたところ、挽き板と突き板のフローリングがあることを教えてもらった。挽き板は合板に無垢材をつけた物、突き板は挽き板よりも薄い無垢材がついた物らしい。この床材も日々進化しているらしくて、営業さんもおすすめということだった。

 

そのときは、リビングのある2階は挽き板、主に個室しかない1階は突き板にしようということした。これは最終的には全部突き板になる。比べてみても素人目にはどっちがどっちか分からない。

 

それと最近のフローリングは、木の幅を広くするらしい。その方が落ち着いて見えるということだった。でもこれも、一部分だけ見て分かるもんじゃない。言われることをそのまま受けて、そういうものかと頷くしかなかった。

 

フローリングは屋根ほどじゃないけれど、ぼんやりと決めた。きっとぼんやり決めちゃいけないところなんだけれども、床材を撫でたりして何かが分かるわけじゃないのに、疲れてまったのか、ずっと撫でていた。どれを撫でたってツルツルだ。

 

こうして、僕は、何やら大事なことをぼんやりしたまま決めてしまった。