いつも困っている

家事と育児(三人姉妹で二人は双子)に対峙する男の日々

新環境に困る!<上>(自閉症児篇)<また引っ越すこと>

自閉症の長女に何度も引っ越しを体験させてしまっている」(長女5歳4ヶ月)

 

困ったことがあった。

 

新しい環境が好きという人もいれば、新しい環境は苦手な人もいるだろう。とくに自閉症というわけでなくても好き嫌いや苦手かどうかというのもあると思うけれど、好き嫌いや得手不得手のラインを超えてしまうものというのがある。

 

自閉症はそういう意味で、好き嫌いとか苦手とかのラインを超えて、新しい環境というものに対して恐怖というか、拒絶に近いものがある。

 

僕は診断は受けていないけれども、典型的な自閉症らしい。自覚というのはなかなか難しいもので、自分にとっては当たり前のことだから、それが何らかの症状であるということに気がつかないし、自分という視点から世界を見ているものだから、それが特殊なことだと思えないというのもある。

 

例えば、朝食。1日の最初に食べるご飯。これなんかはいつも同じという人が多いと思う。僕も多くの人と同じようにいつも同じだ。いつも同じメニュに同じお皿、同じ食器、同じ順序で食べる。どれか一つでも欠けてしまうと朝食を食べたのかどうかも不確かな気持ちになる。もちろん、朝食のメニュを考え直さないといけないこともある。病気だったり、外国に暮らしたりするときには、メニュ全体を変えることがある。ボストンでの僕の朝食はボストンに住んで3ヶ月目あたりで決まって、あとは引っ越しの前日まで同じメニュだった。たまに何かが足りないこともあるが、そのときは緊急事態だと自分に言い聞かせる。糖尿病になったときにも大きく変わった。朝食が変わるということはそういうことだ。必要なものがないことでパニックにならないように、緊急事態用のグラノーラも用意している。非常食の扱いだ。旅先もまた緊急事態が適用される。もちろん、非常時は調子は悪い。

 

このくらいのことはみんなやっていることだろうと思っている。

 

そして、同じ順序で準備をして同じ道で出掛けて、同じ道で帰ってくる。できるだけ同じ服を着て、できるだけ同じ靴を履いていたけれども、これは服と靴が趣味になってきたので、今では、毎日服と靴を変えるということが僕のルールになっていて、同じ服や同じ靴を履いてしまうとそれはそれで心地悪い。やりなおさなければならない。

 

そんな感じでいつも同じだった。

 

仕事柄、日本国内や海外なども行くことが増えた。僕は旅行というのがどうにもダメだった。子供のころから旅行やお出かけの類に拒絶反応が出てしまうのか、遠足の日には熱が出ることが多かった。修学旅行や林間学校も熱を出して寝ていた。仕事をするようになってからは、そこまでじゃないにしても具合が悪いことが多かった。

 

仕事をするようになってからはお酒に助けられた。旅行前にも深酒し、旅先で深酒すれば、どこでも同じ酔っ払いの光景だから、出張はできるだけ酔っ払っていた。そしてたしなめられることも多々あった。海外の場合は、前日はそう飲んでないにしても、飛行機の中でたくさん飲んで寝ていた。そうやってリセットしている感じだった。あとは読書だ。どこでも本を持っていけばそこは毎日と同じという気持ちになれた。一泊二日みたいな出張なのに三冊も四冊も本を持っていっていた。

 

そういえば、仕事でいろいろなところに行くことになって、僕の頭がおかしくなってしまって、今度は家に帰らなくなったということがあった。潔癖症のくせにそのへんで野宿したり、いろいろな場所を泊まり歩いたという時期もあった。きっと放浪することを日常にしなければならないと思っていたんだろうと思う。

 

こんなことを書いたのは、つまり、このくらいの感じで、いつもと同じじゃないとダメだったということだ。これが僕の嫌いだし、苦手ということの表れ方だったし、このような僕を周囲の人は自閉症と呼ぶようになったということだ。いまでもパンツはあまり履き替えないというのが同じ服ばかり着ていた頃の名残だろう。

 

こういう症状は子供の頃の方が顕著だったと思う。いまでも環境の変化があったときに僕がおかしくなっていたことを思い出す。

 

長くなってしまったので、新環境に困る!<下>(自閉症児篇)に続きます。